刑事弁護 [公開日]2022年2月1日

弁護士なしでの示談はリスク大!弁護士に依頼すべき理由

刑事処分を被疑者(加害者)に有利なものとするには「示談」の成立が重要です。

ただ、示談は弁護士に任せるべきであり、弁護士なしでの示談交渉は被疑者にとってリスクが大きいです。

この記事では、示談を弁護士に依頼するべき理由を説明します。

1.刑事事件で示談をするメリット

刑事事件における示談とは、加害者側と被害者側の話し合いにより、加害者が慰謝料などの損害賠償金を示談金として支払い、代わりに被害者が犯罪行為を許す意思を表明するとの合意をすることです。

刑事事件における示談の成立には、被疑者にとって様々なメリットがあります。

(1) 身体拘束の回避や早期釈放が期待できる

示談のメリットは、逮捕・勾留による身体拘束を避けられる可能性があることです。
また、逮捕・拘留された場合でも、示談の成立により拘束期間を短くすることが期待できます。

逮捕・勾留は、逃亡や証拠隠滅の可能性がある場合に行われます。
被疑者が素直に罪を認めて謝罪・反省し、被害者との示談まで成立させていれば、もはや逃亡や証拠隠滅の可能性が乏しいと判断され易くなります

よって、逮捕・勾留の必要性が消滅・減少したと評価され、逮捕・勾留されなかったり、仮に逮捕・勾留されても早期に釈放されたりする可能性が高くなります。

(2) 起訴、前科、公判請求を回避できる可能性

示談の成立は、検察官による起訴・不起訴の判断にあたって、被疑者に有利な事情として考慮されます。

これにより不起訴処分となったり、仮に起訴されても、犯罪の内容によっては、公開法廷での裁判を受ける正式起訴(公判請求)ではなく、裁判所の書類上の手続きだけで罰金刑を受ける略式起訴で済んだりする可能性があります。

【罰金を支払えば示談しなくても良い?】
罰金刑で済むことが予想される軽い犯罪なら、示談金を支払ってまで示談をする必要はないのでは?という疑問も湧くかもしれません。
しかし、罰金刑であっても有罪判決として前科となり、職業を制限されるなど将来的に様々な不利益を受ける可能性があります。
したがって、たとえ罰金刑が予想される場合でも、示談を成立させて起訴を回避することが得策です。

2.弁護士なしでの示談のリスク

弁護士なしで被疑者やその家族が示談を行うことは、以下のような様々なリスクがあり、お勧めできません。

(1) 被害者と連絡が取れない

例えば、多くの痴漢や盗撮のように、被害者と被疑者に面識がないときは、被害者の連絡先がわかりません。
しかし、捜査機関は、被疑者やその関係者に被害者の連絡先を教えることは絶対にありません。

他方、弁護士が弁護人となれば、警察・検察に対し、被害者の連絡先を知るのは弁護士限りである(被疑者やその家族などには伝えない)ことを条件として、連絡先の開示を要請します。

捜査機関側は、これを被害者側に伝え、その承諾が得られれば連絡先を開示してくれます。

このように、弁護士がつくことによってはじめて被害者と連絡がとれるケースは珍しくなく、弁護士なしでは連絡すら不可能です。

(2) 交渉を拒絶されたり脅迫と曲解されたりする

被害者と面識があり連絡先がわかる場合でも、被疑者本人やその家族などが被害者に接触しようとすると、嫌悪感・恐怖心・警戒心などから、問答無用で拒否されてしまう場合が珍しくありません。

また被疑者側に他意がなくとも、「被害届や刑事告訴の撤回を強要されたり、証言を翻すよう脅迫されたりするのではないか?」と曲解されるかもしれません。

これを捜査機関に報告されてしまうと、反省していないと誤解を受け、かえって不利な事情となって逮捕・勾留や起訴につながってしまう危険があります。

(3) 感情的な対立が事態を悪化させる

被疑者と被害者との直接交渉では、感情的な対立から話がこじれやすく、かえって事態が紛糾するリスクもあります。

他方、弁護士は被疑者の味方でありつつも、法律の専門家として冷静に交渉を進めることができますから、そのような無用な紛争を避けることもできます。

(4) 適切な示談金額がわからない

示談金の金額は法律で決まっているわけではありません。

例えば、盗撮や痴漢の場合、通常、示談金の内容は慰謝料だけですが、慰謝料は「精神的な打撃を慰める」金額なので、客観的な金額の基準はあり得ないのです。

弁護士なしでは、適正な示談金額がわからず、被害者が要求する示談金額が過大なのか否かの判断もつきません。

他方、刑事事件の経験が豊富な弁護士であれば、過去の取扱い事案や裁判例から、示談金の相場金額が分かりますので、事案に応じた金額の提示が可能ですし、被害者が提示した金額の妥当性も判断がつきます。

また、例えば傷害罪の示談金(治療費、通院交通費、休業損害などの実損害と慰謝料)は、裁判所や弁護士団体が公表している賠償基準に準じて金額を算定することが通常です。
ただ、この算定にも法的知識が必要ですから、弁護士なしでは適正額を知ることは事実上困難でしょう。

(5) 法的に的確な示談書を作成できない

法的には、口頭の約束だけでも示談は成立しますが、それでは証拠が残りませんし、示談の成立を検察官・裁判官に示すこともできません。

そこで、示談書を作成して証拠とし、検察官・裁判官に提出することになります。

示談書に盛り込む文章は事案により様々ですが、必ず盛り込むべき内容として「宥恕文言」「清算条項(清算文言)」があります。

「宥恕(ゆうじょ)」とは、寛大な気持ちで許すという意味で、「寛大な処分をお願いします」「刑事処分を望みません」などの文を記載することで、被害者の処罰感情が減少または消滅したことを明らかにします。

示談書に宥恕文言がない場合は、たとえ示談金を支払ったとしても、被害者が当然に請求できる賠償金を受け取ったという事実を示すにとどまり、被害者の処罰感情の変化を示すことはできません。
このため、刑事処分に及ぼす示談の効果は著しく低くなってしまいます。

また清算条項は、「被疑者と被害者の間には、本示談書に記載した事項以外、何らの債権債務もないことを相互に確認する」等の記載であり、この犯罪行為をめぐる損害賠償問題は解決済みで、被疑者はそれ以上の支払義務を負わないと明らかにするものです。

清算条項がない場合、示談が成立し、示談金を全額支払った後でも、被害者側から「それは損害賠償金の一部に過ぎない」などとして、さらに追加の賠償金を請求されてしまうリスクがあります。

(6) 被害者の要望に応えることが困難

被害者は「示談金を受領して示談するのは構わないけれど、被疑者に氏名や住所を知られたくないので、示談書にサインはしたくない」「示談金を受け取るだけでなく、二度と私に近づかないという確証が欲しい」などと、示談金の金額以外の要望を持っている場合があります。

多くの場合、このような被害者の心情は深刻なものであり、要望に応えることができなければ示談を成立させることはできませんが、それは弁護士なしでは事実上困難です。

例えば、「示談書にサインはしたくない」という場合、弁護士が示談を担当すれば、示談書に「住所氏名など被害者に関する情報は弁護士限りとし、弁護士は被疑者及びその家族、友人、知人を含む第三者に情報を漏らさないことを誓約する」「弁護士が本示談書のコピーを被疑者に交付する際には、住所氏名など被害者に関する情報を黒塗りして判読不可能とした上で交付することを誓約する」などの記載を加えることで、示談書にサインをもらえるよう工夫します。

また「二度と近づかない確証が欲しい」という場合、弁護士であれば、被疑者が居住地を引っ越す、通勤経路を変更する、万一接触を試みたときには違約金の支払義務を負うなどを検討し、可能であれば示談書に盛り込むことで、示談を成立させます。

(7) 示談不成立をフォローできない

被疑者やその家族などでは、示談に失敗してしまった場合、そのフォローをすることができず、厳しい刑事処分を覚悟するしかなくなります。

他方、弁護士に示談を依頼すれば、万一示談が成立しない場合でも、そのフォローを素早く行うことができます。

例えば、被害者の要求する示談金額が著しく過大で示談が成立しない場合、弁護士はその交渉経過を報告書にまとめ、検察官・裁判官に提出します。

被疑者側は適正な相場金額を提示し誠実に交渉したこと、被害者の過大不当な要求が示談成立を妨げたもので、被疑者側に非はないことを検察官・裁判官に伝えて示談不成立のマイナスを軽減するように努めるのです。

また、被害者が頑なに示談金の受取りを拒否する場合には、犯罪被害者の遺児に役立てるためなどの贖罪寄付を行って、被疑者の反省の気持ちを明らかにします。

3.示談は弁護士へご相談を

以上の説明からわかるように、弁護士に依頼すると、以下のメリットがあります。

  • 被害者の連絡先がわかり示談交渉をスタートできる
  • 示談交渉を拒否されたり、脅迫と誤解されたりしない
  • 感情問題で紛糾することがない
  • 適切な金額で示談できる
  • 的確な示談書を作成できる
  • 示談金以外の様々な要望に応える工夫をして示談を成立に導ける
  • 示談が不成立に終わってもフォローが可能

刑事事件では早期に示談を成功させることが、早期の身柄解放と有利な処分につながります。
そのためには、できるだけ早い段階で、示談交渉を弁護士に依頼することが大切です。

刑事事件の弁護に力を注いでいる泉総合法律事務所まで、どうぞご相談ください。

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