窃盗罪の初犯と再犯|起訴・不起訴と量刑に与える影響
コンビニなどで万引きすると「窃盗罪」が成立します。
窃盗で警察官に逮捕されると、その後検察官に起訴され、有罪判決になる可能性があります。
窃盗は、再犯が多いと言われる犯罪の1つです。
では、窃盗の初犯と再犯では起訴される可能性に違いはあるのでしょうか?また、2回目以降、刑罰や刑期の違いはあるのでしょうか?
ここでは、窃盗罪における初犯と再犯の違いについて解説します。
1.窃盗罪とは
窃盗罪は「他人の財物を窃取した」場合に成立します(刑法235条)。
「窃取」とは、他人が占有している財物について、その占有を自分などに移転してしまうことです。窃盗既遂だけでなく窃盗未遂も処罰されます。
コンビニやスーパーでの万引き、電車内でのスリ、空き巣などが典型的な窃盗罪のケースです。
窃盗罪を犯した者は10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。
[参考記事]
万引きで逮捕されるとどうなる?弁護士に依頼するメリット
2.窃盗罪の初犯or再犯で処分はどうなる?
「再犯」という言葉は様々な意味合いで使われますが、ここでは、「以前に罪を犯して有罪判決(罰金を含む)を受けた経験がある者が、また刑事犯罪を犯した場合」という意味で使います。
つまり、ここでいう「再犯」という言葉は、「前科」がある者が罪を犯した場合という意味になります。
初犯と再犯では、勾留される可能性・拘留期間のほか、起訴される可能性、量刑の重さが異なります。
(1) 起訴・不起訴の判断に影響する
起訴するか否かの判断は検察官に委ねられています。
刑事訴訟法247条
公訴は、検察官がこれを行う。
公訴とは起訴を意味します。起訴されて初めて、刑事裁判にかけられることとなります。
検察官は、事件があれば必ず起訴しなければならないというわけではありません。
すなわち、検察官は具体的事情を考慮し、起訴すると有罪判決が見込める場合でも、起訴しないことが可能です。
刑事訴訟法248条
犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる。
再犯にあたる場合や前歴(以前、逮捕されるなど捜査対象となった経歴)がある場合、被疑者が改心していないと思われてしまい、起訴される可能性が高まります(もっとも、この場合でも不起訴となることもあり得ます)。
(2) 裁判において量刑(刑期など)が変わる
裁判官は、被告人の量刑を考慮するうえで、犯行内容以外にも様々な事情を考慮します。そして、法律上許された範囲内で、罰金刑なら~円、懲役刑なら~年(または無期)の刑罰を被告人に科します。
その際に考慮される諸事情(量刑事情)は、例えば犯行が計画的だったか否か、奪った物が高額か否か、被告人に反省の意思があるか、被害者との示談が成立しているか否か等です。
そして、再犯である場合、この量刑判断が重くなります。なぜなら、被告人が以前犯した犯罪について反省をしていないことは明らかで、前の有罪判決の内容では、被告人に反省を促すには不足していたことになるからです。
特に前科が同種の犯罪である場合は、軽い刑では犯行の反復を抑止できないと判断され、重い刑が選択されてしまいます。
ここでの同種の犯罪とは、同じ窃盗はもちろん、恐喝、詐欺、横領、強盗など、他人の財産を侵害する犯罪を指します。自己の経済的利益のために他人の財産を奪うことを厭わない性格と評価され、厳格な処罰を施して矯正する必要があると判断されるわけです。
この場合は、前の場合よりも高額な罰金刑となったり、罰金刑ではなく懲役刑が科されたり、また執行猶予もつかない実刑判決となる可能性が高まります。執行猶予がつかない実刑判決が下されると、確定すれば、被告人はすぐに刑務所に入ることになります。
3.窃盗罪で不起訴処分を得る・量刑を軽くするには
(1) 被害者との示談交渉
被害者先述のように、検察官の起訴判断や、裁判官の量刑判断には様々な事情が考慮されます。
その中でも、被害者との示談が成立しているか否かは非常に重要です。
被害者に被害弁償を支払い、被害者が犯罪事実について許している場合、被疑者を処罰する必要は(示談が成立していない場合と比べて)低いものと言えます。
また、仮に起訴しても重い刑罰を科す必要も相対的に下がります。
よって、起訴処分を回避・量刑を軽くするには、初犯の場合はもちろん、2回目など再犯の窃盗を犯してしまった場合にも、被害者との示談が有益と言えるでしょう。
(2) 示談交渉は弁護士に依頼
被疑者が逮捕・勾留されている場合は、自ら示談交渉に出向くことができないため、弁護士に示談交渉を依頼することになります。
また、逮捕・勾留されていない場合でも、示談交渉を迅速かつ適切な方法で行うために、弁護士に依頼するのが無難です。
被疑者本人やその家族など関係者が示談交渉のために被害者側に連絡をしたり、接触をしたりすることは、余計に被害者の感情を害したり、証人威迫と疑われたりして、示談がまとまらないだけにとどまらず、かえって被疑者に不利な状況を招きかねないからです。
示談においては、示談が成立したことを明らかにする示談書を作成し、これを検察官や裁判官に提出することで処分が軽くなることを期待します。
なお、お店によっては、そもそも万引きの示談交渉に応じず、厳罰を望むスタンスのお店もあります。
その場合は、贖罪寄付(窃盗の被害額などを寄付して犯罪被害者等のために役立てること)を行うのもひとつの方法ですが、これも弁護士が手続きを行ってくれます。
[参考記事]
贖罪寄付・供託により本当に情状が考慮されるのか?
4.窃盗の再犯・初犯に関するよくある質問
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「再犯」の法的な定義は?
「再犯」には、世間一般的の認識とされている意味や、法律で定義される意味がありますが、ここでは「刑法上の再犯」(累犯ともいう)について説明します。
「刑法上の再犯」については、刑法で次のとおり定められています。
刑法第56条「懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。 」
刑法第57条「再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とする。」つまり「刑法上の再犯」とは、一定の条件のもとで犯罪を繰り返した者について、法定刑の上限を長くする制度なのです。この規定により、刑法上の再犯に該当する者は、刑期の上限が2倍まで長くなります(窃盗罪なら最高で懲役20年)。
もっとも、懲役刑を科す場合にしかこの規定は適用されません。また、法定刑の上限が長くなるだけで、必ず長い懲役刑を課さなければいけないというわけでもありません。
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「再犯」と「余罪あり」の違いは?
「余罪」とは、いまだ捜査の対象となっていない、又は起訴されていない犯罪事実を言います。
ある犯罪行為を行い逮捕された場合、被疑者の自白や警察の捜査により、その者に余罪があることが判明することがあります。余罪は、後に前科がつき再犯となる可能性を秘めてはいますが、再犯とは異なる概念なのです。
一方で「再犯」は、先述の通り一定の条件のもとで犯罪を繰り返した者について、法定刑の上限を長くする制度です。
余罪と再犯は異なるのものではありますが、共に、これがあることで刑事事件の被疑者が不利益に取り扱われることがあります。
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2回目の窃盗の処分はどうなる?
再犯の場合は、軽い刑では犯行の反復を抑止できないと判断され、重い刑が選択されてしまう可能性があります(高額な罰金刑となる、懲役刑が科される、執行猶予がつかない実刑判決となる等)。
刑法235条により、窃盗罪を犯した者は10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。
刑法上の再犯に該当する者は、刑期の上限が2倍まで長くなりますので、窃盗罪なら最高で懲役20年の刑罰を科すことができるのです。しかし、これは「科すことができる」だけで、絶対に2倍の刑期になるわけではありません。
犯行の内容や、示談の状況、被疑者の反省具合などにより、刑期が少なくて済む場合、罰金刑に留まる場合もあり得ます。
5.窃盗は泉総合法律事務所の弁護士へご相談ください
「たかが万引き」「安いものだから」などと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、窃盗罪は最高で10年の懲役になる可能性のある重い犯罪です。
また、繰り返していると常習累犯窃盗罪という、3年以上の有期懲役というより重い犯罪になります。
そのため、窃盗をしても大事にはならないだろう、などと安易に考えてはいけません。
特に、前科や余罪がある場合は、初犯の場合と比べて起訴される確率は高くなり、また懲役刑が選択される場合は執行猶予付きでなく実刑判決となる可能性も高くなります。
窃盗を犯してしまった等、刑事事件を犯してしまった方やそのご家族の方は、泉総合法律事務所の弁護士へと早急にご相談ください。