財産事件 [公開日]2022年3月14日

学校と盗難|物がなくなった場合、警察は介入するか

学校においても、稀に盗難事件が発生します。
盗難事件が発覚すると、学校は生徒を集めて確認したり、保護者に連絡したりしますが、その際に警察は介入するのでしょうか。また、学校における盗難で逮捕されることはあるのでしょうか。

この記事では、盗難の罪責等について解説します。

1.学校で盗難があった場合の罪責

(1) 窃盗罪

学校で起きた盗難は、窃盗罪に該当します。窃盗罪は、他人の「財物」を「窃取」した場合に成立します。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する

「窃取」とは、他人の「占有」する「財物」を自己または第三者のもとに移転する行為、「占有」とは事実上所持することです。
そして、友人が持ってきた教科書や筆箱、学校の図書館にある本なども「財物」にあたります。

したがって、友人が学校に持ってきたものを盗んだり、学校の備品を盗んだりした場合にも窃盗罪が成立します。

(2) 建造物侵入罪

その学校の生徒であるか否かにかかわらず、例えば夜間に無断で学校に侵入した場合や窃盗目的で学校に立ち入った場合には、建造物侵入罪が成立する可能性があります。

建造物侵入罪は、建物の管理権を保護するものであり、これらの行為は、管理権者の意思に反する立ち入りだからです。

刑法130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

[参考記事]

住居侵入罪・不法侵入で逮捕される?間違えて入ったらどうなる?

2.学校の盗難に警察は介入する?

生徒の個人の物を盗んだ場合、被害者や保護者が教員に知らせることで、事件が発覚するでしょう。
また、学校の備品が盗難にあった場合には、教員がその事実を知ったことで事件が発覚します。

学校における盗難事件の場合、内部で問題にされるだけのこともありますが、警察が介入する場合もあります。
それは、被害者や学校が被害届を出した場合です。

警察に被害届を出した場合には、捜査機関に事件の存在が明らかになります。捜査機関は、関係者に事情聴取するなどして、事件の全貌を明らかにすることになります。

盗難に遭った被害者としては、学校が対応してくれない場合などには、警察に被害届を出すべきでしょう。

ただ、学校内での盗難事件では、一般事件と同様に警察がすんなりと被害届を受け取ってくれるとは限りません。

まず大学の場合、自治権がありますから、うかつに介入して無用な軋轢を生じることを恐れるからです。

次に小・中・高校の場合、教職員の捜査協力が得られず、かえって隠蔽工作など捜査を妨害される恐れも高いこと、そもそも少年事件には教育的配慮が必要で、少年の健全な育成という目的のためには、警察も学校との役割分担を意識することが求められていることが指摘できます(少年警察活動規則5条)。

もしも、被害届や告訴状の受理を警察が渋る場合は、これらの手続を弁護士に依頼し、確実に受理させることをお勧めします。

3.逮捕された場合の流れ

学校において盗難事件を起こしてしまった場合、後に警察に逮捕されるケースがあります。これは、犯人が内部の学生である場合でも、部外者の成人である場合でも変わりありません。
もっとも、その後の流れは成年と未成年で異なります。

(1) 成年の場合

生徒であれ部外者であれ、逮捕された場合には警察署に連行され取調べを受けます。
その後、検察官のもとへ身柄送致されます。逮捕は最大で3日間ですが、その後に勾留された場合には続けて最大20日間身体拘束されます。

その後、検察官は被疑者を起訴処分とするか否か決定します。学校内の盗難事件だからといって必ず不起訴処分となるわけではありません。起訴となった場合には裁判となります。

[参考記事]

窃盗で捕まったら弁護士に相談すべき理由と弁護士費用相場

(2) 未成年の場合

①14歳以上20歳未満の場合

この場合、逮捕・勾留される可能性がある点は成人と同じ手続きです。
少年法では、少年はやむを得ない場合以外は勾留できないとされていますが、捜査の必要を理由として勾留が認められるケースも珍しくありません(少年法43条3項、48条1項)。

検察官は勾留の請求に代えて家庭裁判所に対して観護措置を請求することも可能です(少年法43条1項、17条1項2号)。
勾留の場合も、勾留に変わる観護措置の場合も、少年鑑別所で身柄拘束されることになります(少年法48条2項)。

勾留期間や観護措置の期間が満了すると、検察官は少年を家庭裁判所に送致することになります。そこで家庭裁判所が、少年審判手続が相当と判断すれば、少年審判が行われます(少年法21条)。

[参考記事]

未成年犯罪と成人犯罪との違い。手続、裁判、審判

②14歳未満の場合

14歳未満の者が窃盗等の法に触れる行為をしても、刑事責任年齢に達していないので犯罪は成立しません(刑法41条)。そのため、これまでのケースと異なり、逮捕・勾留されることはありません

しかし、そのまま放置すれば最終的に犯罪者となる恐れがありますから、少年法では、これを「触法少年」として保護の対象としています(少年法3条1項2号)。

触法少年は犯罪者ではないので、警察の捜査対象ではありませんが、代わりに警察による「少年調査」の対象となります(少年法6条の2)。

この場合、少年や関係者の取調べは任意ですが(少年法6条の4第1項、第2項)、押収・捜索などは強制的に行うことが可能で(少年法6条の5第1項)、実質的には捜査と変わりません。

このような少年調査で事件を把握した警察は、児童相談所等に通告を行います。
そして、例えば児童相談所は、各種の調査をしたうえで、触法少年の指導、訓戒を行ったり(児童福祉法26条1項)、少年審判が相当と判断して家庭裁判所に送致したりします(児童福祉法第27条1項4号)。

家庭裁判所では、触法少年の非行事実の有無・内容や、成育環境、生活環境、性格、などの調査を行います。必要があれば少年鑑別所で身柄を拘束して調査や指導を行います。

そのうえで少年審判を行うことが相当と判断すれば、同手続で、最終的に少年院送致、保護観察などの保護処分が下されます。

[参考記事]

14歳未満の者が事件を起こしたらどのような手続きになるか

4.学校における盗難で逮捕されたら弁護士に相談を

窃盗で成人が逮捕された場合には、その後起訴される可能性があります。起訴を回避しないと、刑罰が科されてしまいます。

未成年でも、学生の場合、少年審判で厳しい処分(少年院送致など)が出されると、退学処分になる可能性が高まります。

これらを回避するために、弁護士は検察官、裁判所に意見書を提出するなどします。
また、被害者の保護者との示談交渉も重要です。早い段階で示談が成立すれば、警察が最初から逮捕しないことも十分ありえます。

窃盗をしたのが中学生等の14歳未満であっても同様です。この場合は逮捕・勾留されたり起訴されたりすることはないですが、保護処分は少年の今後の人生に重大な影響を与えます。
そこで弁護士は、少年の付添人として、有利な処分を獲得できるように活動します。

学校で盗難事件を起こしてしまった場合、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

刑事事件コラム一覧に戻る