少年事件 [公開日]2017年9月22日[更新日]2021年10月29日

未成年犯罪と成人犯罪との違い。手続、裁判、審判

犯罪をした者が14歳以上20歳未満の場合、原則は保護処分の要否を決める家裁の少年審判手続の対象となりますが、重大犯罪など一定のケースでは、成人と同様に、刑事罰を与えるか否かを決める刑事裁判手続にかけられる場合があります。

他方、犯罪をした者が20歳以上の場合、家裁の少年審判手続の対象とはなりません(民法改正により成人年齢が18歳となりますが、少年法の適用対象が20歳未満という制度は維持されています)。

ここでは、少年事件と成年事件の違いについて、手続きや裁判の観点から解説していきます。

なお、少年事件の流れなどについての詳細は、以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

少年事件とは?息子が逮捕されたら弁護士にご相談を

1.手続の違い

(1) 成年事件

成年の刑事事件では、刑事訴訟法が適用されます。警察など捜査機関が、犯罪があったと思料すると捜査を開始します。

被疑者が逮捕された場合、48時間以内に身柄を検察官に送られます。検察官は身柄を受け取ってから24時間以内かつ逮捕から72時間以内に、裁判所に対し勾留を請求します。勾留が認められた場合、逮捕から最大23日間身柄が拘束されます。

検察官は、この期間内に起訴するか、それとも釈放するか決めなくてはなりません。

(2) 犯罪少年事件

14歳未満の者が刑罰法規に触れる行為を行っても、刑事責任年齢に達していないので、「犯罪」は成立せず、刑事手続の対象外であり、少年審判手続の対象となる可能性しかありません。これを「触法少年」と呼びます。

他方、14歳以上の者が刑罰法規に触れる行為を行えば「犯罪」が成立します。犯罪を犯した14歳以上20歳未満の者は「犯罪少年」と呼びます。

犯罪である以上は刑事訴訟法が適用されることが原則ですが、刑訴法の特別法として少年法が定められているので、少年法に定めがある部分は、そちらが優先して適用されます(少年法第40条)。

ア.家裁送致

犯罪少年については、警察が捜査をして罰金以下の刑にあたる犯罪の嫌疑があると判断したときは、警察は、検察ではなく家庭裁判所に事件を送致しなくてはなりません(同法41条前段)。

また、警察が禁錮刑以上の刑にあたる犯罪の嫌疑があると判断して、事件を検察官に送致した場合、検察官も犯罪の嫌疑があると判断したときは、検察官は家庭裁判所に事件を送致しなくてはなりません(同法42条1項)。

後者の場合で少年が逮捕されている身柄事件は、成人の場合と同じく逮捕から48時間以内に身柄も検察官に送致されます。

しかし、その後の手続は、捜査の必要性の強度に応じて、次の3つのケースにわかれます。

①検察官が24時間以内に少年を家庭裁判所に送致するケース(42条)
②検察官が裁判所に勾留に代わる観護措置を求め、少年鑑別所での最大10日間の身柄拘束が行われるケース(43条1項、17条1項2号)
③成人の事件と同様に検察官が裁判官に勾留請求を行い、最大23日間の身柄拘束が行われるケース(43条3項)但し、③はやむを得ない場合の例外とされています。

成人の刑事事件では、刑事裁判にかけるか否かは検察官が決めますが、これに対し、犯罪少年の事件は、上に述べた捜査機関での各ルートを経て家庭裁判所に送致され、家庭裁判所が少年審判にかけるかどうかを決めます。これを「全件送致」と呼びます。

イ.逆送

送致を受けた家庭裁判所では、犯罪の有無、事件の悪質性や少年の要保護性(内容は後述します)を調査して、少年審判にかけるか否かを判断しますが、一定の場合には、成人と同様の刑事裁判手続にかけるために、事件を家裁から検察官に送致する場合があります。これを「逆送」と呼びます。

逆送は、次の場合に行われます。

①死刑・懲役又は禁錮に当たる罪の事件で、調査の結果、罪質・情状に照らして刑事処分を相当と認めるとき(20条1項)
②犯行時に16歳以上の少年が、故意の犯罪行為で被害者を死亡させた罪の事件(20条2項)

なお、2021年5月の少年法の改正により、18歳以上の少年(特定少年と呼びます)については、上記①の「死刑・懲役又は禁錮に当たる罪の事件」という制限がなくなり、どのような犯罪でも家裁が刑事処分を相当と認めるときは逆送となります

また、③18歳、19歳のときに犯した死刑、無期又は短期1年以上の懲役・禁錮に当たる罪の事件も逆送対象に加わります(2022年4月1日施行)。

[参考記事]

14歳未満の者が事件を起こしたらどのような手続きになるか

2.審判対象の違い

審判対象とは、刑事裁判の裁判官、少年審判事件の裁判官(審判官)の判断対象です。

成年の事件は、被告人に対し犯罪に対する制裁としての刑罰を科すことを目的としています。
そこで裁判では検察官が犯罪事実を主張し、裁判所は、その検察官の主張が認められて有罪となるか否かを審査します。つまり審判の対象は「検察官の主張する犯罪事実」の存否です。これを公訴事実と呼びます。

また多くの刑罰法令では、有罪の場合に科される刑の重さ、即ち量刑は一定の幅をもって裁判官の裁量に委ねられているので、量刑を左右する事実の有無も事実上は審判の対象であると言えます。

これに対し、少年の事件は必ずしも処罰を目的としておりません。少年法は、基本的には、少年の健全な育成、性格の矯正、少年の環境調整を行うことを目的としております。

これは、少年が成人とは違い、可塑性(人格の再形成が可能であること)を根拠としているといわれています。
つまり、平たく言えば、少年審判の目的は、「再教育による再非行の防止」です。

そこで少年審判においては、犯罪事実(非行事実)の存否に加え、少年の要保護性の有無及び内容が審理の対象となります。

要保護性とは、少年が将来的に再非行に至る可能性をいいます。具体的には、犯罪的危険性(少年が将来非行を行う危険があるか)、矯正可能性(少年の性格を矯正して将来の非行可能性を除去できるか)、保護相当性(保護処分を行うことが問題解決のために有効適切であるか)の要素からなります。

つまり、「再教育による再非行の防止」の必要性・可能性・相当性というわけです。

家庭裁判所が少年の要保護性を十分に調査する必要があると判断すると、観護措置をとり、少年鑑別所に2週間、さらに延長すると2週間合計4週間収容して家庭裁判所調査官や鑑別所職員が少年の要保護性の調査をすることになります。

その調査結果は少年審判の有力な判断材料となります。観護措置が取られない場合は家庭裁判所が少年や保護者の両親を呼んで調査官が調査を行い、その調査結果を踏まえて少年審判の判断が決まることになります。

[参考記事]

家庭裁判所に少年が呼び出される理由とその後の流れ

3.裁判と審判

(1) 成年の刑事裁判と少年審判の手続きの違い

成年の刑事事件は、刑事裁判となり、不公正な密室裁判による人権侵害を防止するため、原則として公開の法廷で裁判が行われます(例外として書類上の裁判だけで済む略式手続があります)。出席者は、裁判官、書記官、検察官、弁護人、被告人です。

これに対し、少年審判は非公開で行われます(22条2項)。これは、①少年、保護者など関係者のプライバシー保護、②人格的に未成熟な少年の情操保護、③審判過程の公開により生じる将来的不利益の回避を理由とします。

また「審判は、懇切を旨として、和やかに行うとともに、非行のある少年に対し自己の非行について内省を促すものとしなければならない。」(22条1項)とされており、対決的な刑事裁判とは異なって、教育的・福祉的な配慮を重視する場であることが求められています。

出席者は、裁判官、家庭裁判所調査官(主に要保護性を調査する専門職)、書記官、付添人(弁護士)、少年、保護者等です。

少年事件では、原則として検察官は出席しません。例外として、死刑、無期、長期3年を超える懲役・禁錮に当たる犯罪で、否認事件のように、非行事実を認定する審判手続に検察官関与が必要と裁判官が認めるときは、検察官を出席させることができます(22条の2第1項)。

(2) 少年審判の内容

少年審判による処分には以下のものがあります。

保護処分

  • 保護観察:少年を施設に収容せずに、社会内で保護司や保護観察官の監督・指導を受けながら更生を図る処分(少年法24条1項1号)
  • 少年院送致:少年院において矯正教育を受けさせること(少年法24条1項3号)
  • 児童自立支援施設または児童養護施設への送致:児童福祉法上の支援を行うことを目的として設けられた開放的で家庭的な施設に少年を入所若しくは通所させること(少年法24条1項2号)
  • 都道府県知事または児童相談所への送致:少年を児童福祉機関で指導するのが相当と考えられる場合に行われます(少年法18条1項)。

試験観察(中間処分)

直ちに処分を決めることができない場合に、処分を一時留保し、少年を一定期間、調査官が観察すること(少年法25条)。この場合、試験観察期間経過後、改めて審判が行われます。

不処分

犯罪事実が存在しないと認められた場合や、保護処分が不必要と認められた場合です(少年法23条2項)。

[参考記事]

少年審判を分かりやすく解説|その意味と当日の流れ

【少年事件と環境調整】
少年事件では、少年の周囲の環境を整える環境調整が重要です。これは、家庭環境や交友関係、職場環境に問題点が伏在している場合が多く見られるためです。
少年事件では、家族や少年の職場、学校の方に、なぜ今回の犯罪が起こったのか、犯罪を起こす兆候はなかったのか、自分たちにもできることがあったのではないか等を考えてもらいます。そのうえで、再犯防止のために、具体的に何ができるのかを考え、実行してもらいます。
このような環境調整は、家庭裁判所調査官と付添人の仕事であり、処分結果を大きく左右するので、審判の期日前までに進めておく必要があります。

4.泉総合は付添人活動経験も豊富

少年のために真に有意義な保護処分を得るには、付添人活動の経験が十分ある弁護士に依頼することをお勧めします。

[参考記事]

少年事件における付添人の役割

泉総合法律事務所は少年事件を多数取り組んでおりますので、未成年者であるお子さんが少年事件を起こしてしまった場合には、是非とも相談の上泉総合法律事務所にご依頼ください。

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