少年事件 [公開日]2021年7月2日

少年事件における付添人の役割

お子様が少年事件を起こしてしまった場合、親御さんは、今後お子様がどうなるのかと非常に心配になると思います。また、お子様のためにできる限りのことをしたいとお思いでしょう。

親御さんがお子様のためにできる最大のことは、お子様に有能な付添人を付けることと言えます。

以下、付添人とは何なのか、少年事件においてなぜ付添人が必要なのか等をご説明します。

1.付添人について

(1) 付添人とは?

付添人(少年付添人)は、少年事件における弁護人のような役割を果たします。

とはいえ、少年事件における少年審判は、成人の刑事裁判とは異なり、少年を罰することが目的でなく、少年の健全な育成のために非行のある少年の性格の矯正と環境を整えることが目的です。
付添人は、これを少年や保護者の側に立って支える役割を担っています。

なお、正確に言うと、警察などによる捜査が行われている段階では、少年にも成人と同じように「弁護人」が付きますが、捜査の結果、家庭裁判所に事件が送致された後は「付添人」が少年のために活動します。

捜査段階から弁護人が付いている場合には、それまで少年に付いていた弁護人が付添人となることが多いですが、必ずしも同じ人を付添人に選任する必要はありません。

(2) 付添人になれる人

実は、付添人になるために特別な資格は必要なく、親戚や学校の先生、保護者も付添人になることができます。少年や少年の家庭環境などをよく知る人であれば、少年に寄り添い、少年の将来を考えた更生に向けた活動ができることから、資格制限などなく認められているのです。

ただし、弁護士以外の人が付添人になるためには、家庭裁判所の許可が必要です。

また、弁護士でなく親権者でもない人が付添人になった場合、少年の代理人として被害者と示談交渉をすることは難しいでしょう。
さらに、少年が事実関係を争っている場合の弁護活動、捜査や少年審判手続きの法的な問題点への対応を弁護士以外の人が行うことにはどうしても限界があります。

そのため、ほとんどのケースで弁護士が付添人に選任されており、弁護士以外の方が付添人に選任されている場合も、合わせて弁護士も付添人に選任するといった場合が多いのです(ちなみに、付添人は複数の人を選任することが可能です)。

なお、付添人を選任できるのは、少年本人か、少年の保護者です。
保護者は、少年が反対しても付添人を選任することができ、保護者の選任した付添人を少年が解任することはできません。

付添人の選任は、「付添人選任届」に、少年本人か保護者が、付添人となる者と連名で署名捺印(指印)し、これを家庭裁判所に提出して行います。

付添人選任届は、弁護士に付添人を依頼するのであれば弁護士が用意しますので、保護者の方で準備する必要はありません。

2.付添人の役割

(1) 審判期日の確認・調整

弁護士が付添人に選任された場合、まず付添人は必ず少年審判の期日に出席しますので、家庭裁判所との間で期日の調整をします。

少年審判は大半の事件が1回の期日しか開かれず、この期日に決定が言い渡されますので、この日を目指して付添人はあらゆる準備を進めます。

(2) 少年との面会

既に観護措置を取られている場合、その上で付添人は、選任後可能な限り早く、少年鑑別所に収容された少年に面会に行きます。

親元から離され不安な少年の心に寄り添い、また、事件についての少年の認識を確認します。

非行事実が間違いない場合には、少年に反省を深めてもらい、再犯の可能性を減少させる必要がありますので、付添人からの働きかけに対して少年が心を開いてくれるように、可能な限り何回も面会を行うことになります。

なお、少年鑑別所へ行くことが決まる前に付添人が選任された場合には、観護措置を取らないよう家庭裁判所へ働きかけるという活動もなされます。

(3) 記録の閲覧謄写

また、少年審判にあたって、裁判所がどのような情報によって判断をするのか知る必要がありますので、付添人は家庭裁判所に行き、捜査機関から送付された記録(法律記録)と家庭裁判所の調査官の調査結果(社会記録)を閲覧しに行きます。

なお、法律記録は謄写ができますが、社会記録は極めて慎重な取扱いをすべき情報であるため一般に謄写が認められていません。

社会記録は少年事件に特徴的なものであり、調査官が学校照会、保護者照会、被害者照会などを行った結果や、少年鑑別所での鑑別結果、そして裁判官の判断に大きな影響力を持つ調査官意見が綴られます。

付添人は、このような裁判所の記録を閲覧して、少年が抱える問題を把握し、少年にとって何か一番望ましい処分となるのかを検討し、付添人としての活動を行います。

(4) 裁判所等との連絡・交渉

付添人は、必要に応じて少年との面会を繰り返し、また保護者や関係者とも連携をとりながら、事実関係の調査、そして今後の少年の生活状況の調整を行っていきます。

また、少年事件は審判期日の前に裁判官がすべての記録を読んだ上で行われますので、審判期日の前に勝負がほとんど決まっているとも言われています。

特に調査官は、教育や心理の専門家として、少年の処遇に関して情報を収集し、処遇意見を述べます。裁判官は、少年の処遇決定に際して、この調査官意見を重視するのが通常です。

そのため付添人は、できるだけ早い段階で調査官と連絡を取り、少年や事件に対する調査官の見方を知るとともに、付添人が収集した情報や付添人自身の意見を伝えて、意見交換を行います。そして調査官の認識に誤りがあれば早期のうちにそれを修正するよう働きかけ、少年にとって最もよい処遇を探っていきます。

また、非行事実を争う場合には証人尋問を実施しますが、複数回の期日の指定が必要な場合があり、審判の進行方法について裁判官と協議する必要があります。

処遇に関する意見を裁判官に直接伝える必要がある場合もあるため、付添人は必要に応じて裁判官とも面談します。

(4) 軽い処遇実現のための活動

さらに、少年の非行の背景にある問題点を把握し、就学先や就職先を確保して、少年の更生を支えてくれる人や場所を見つけることで、少年の再非行の可能性を小さくすることができます。これは、少年院といった社会から隔離された施設での矯正教育の必要性がないことを裁判官にアピールする大きな材料になります。

このような少年の更生に向けた現実的な対応は、裁判所には難しく、付添人の活動に負うところが大きいのです。

また、被害者のある事件の場合は、保護者と連携をとりながら、少年の心からの謝罪の気持ちを伝えて示談交渉を行い、少年を許す旨、そして少年の将来のため、できれば軽い処遇で済むようにと裁判所に意見を述べてもらう内容の書面にサインを頂けるよう、活動します。

(6) 付添人意見書の提出

付添人は、以上のような活動の結果を踏まえて、付添人が行った少年や家族に対する働きかけによる変化、環境調整の成果などを、意見書という形にまとめて家庭裁判所に提出します。

また、少年の反省の状況や事件に対する付添人としての見方、処遇に対する意見も意見書に盛り込みます。

(7) 審判期日への立会い

そして少年審判の期日当日は、付添人が少年や保護者に対して適切な質問をして、少年の反省の気持ちや更生の意欲を引き出すようにします。

また非行事実に争いがある場合は、証人尋問によって、少年に有利な事実を立証します。

そして、すでに提出している付添人意見書も踏まえながら、最終的な付添人としての処遇意見を述べます。

(8) 試験観察期間における少年へのフォロー

なお、審判の結果、最終的な少年に対する処分が決定される前に、調査官の下で試験観察を行う旨の決定がなされることがあります。

試験観察の期間には定めがなく、1か月から半年とされることが多いのですが、この期間、付添人は少年と定期的に連絡をとり、面会をするなどして少年の状況を把握し、最終的な処分に向けて少年を支援し、監督・指導します。

3.付添人の報酬

(1) 報酬の相場

弁護士の報酬は、現在は自由化され、個別の事件ごとに弁護士と依頼者が協議して決めることになっています。

ただし、現在も従来の弁護士会が定めていた報酬規程に準じて自身の報酬規程を定めている弁護士も多く、一応これが相場と言えます。

この従来の基準によると、着手金(弁護士の活動開始に際して支払う弁護士費用。活動結果に関わらず支払うものです)が20万円〜50万円、そして成功報酬(弁護士の活動により達成できた成果に応じて支払う弁護士費用)も同額の20万円〜50万円です。

これはあくまで従来の基準であり、実際に依頼する弁護士が独自に報酬規程を定めている場合があります。

また、非行事実を厳しく争うような難しい事件の場合には、弁護士がその事件に注力する必要があるため、どうしても標準的な事件よりも高額になります。

成功報酬は、達成目標をあらかじめ決めて、その達成度に応じて支払うものです。

何を達成目標とするかは事件によって異なり、また弁護士によっても考え方に違いがありますから、事件を依頼する際に、どのような場合にいくらの成功報酬になるのかをあらかじめ弁護士に確認しておきましょう。

なお、これ以外にも、弁護士が活動に使った交通費などの実費、弁護士が遠方まで出張した場合の弁護士日当などの費用は、着手金と成功報酬とは別に支払う必要があるのが通常です。

これらについても、依頼の際にどの程度の金額が必要になりそうかを確認しておくと、後から意外な請求を受けてびっくりするということが避けられます。

(2) 報酬が払えない場合はどうすればいい?

まず、一定の重い刑罰が定められた犯罪(死刑又は無期若しくは長期3年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪)が非行事実であって、家庭裁判所により検察官関与決定がなされた場合は、必ず弁護士による付添人が選任されていることに法律上なっています。

そのため、このような事件で少年又は保護者が私選で弁護士の付添人を選任しない場合は、必ず国選付添人が選任されます。

また、家庭裁判所が被害者等による少年審判の傍聴を許そうとする場合も、同様に国選付添人が選任されます。

国選付添人は国の費用で報酬が支払われますので、少年本人や保護者の金銭的な負担はありません。

さらに、少年が上記と同様の重罪を犯したという非行事実の場合で、一定の条件の下、家庭裁判所が、事案の内容、保護者の有無、その他の事情を考慮して、審判手続に弁護士の付添人の関与が必要と判断した場合にも、国選付添人が国費で付けられます。

国選付添人は、法テラスを通じて弁護士が選任されますが、少年や保護者の側で、法テラスに申込み等をする必要はありません。
また、誰を国選付添人にするかを少年や保護者の方で選ぶことも原則としてできません。

なお、国選付添人が付けられない場合には、日弁連の法律援助制度を利用することができます。
これは、対象となる事件に制限なく、資力などの要件を満たしていれば、法テラスの審査によって援助が決定され、弁護士費用が付添人に支払われるものです。

依頼したい弁護士が法テラスの利用に対応していれば、費用の心配なく、付添人の依頼ができます。

4.まとめ

お子様が少年事件を起こして逮捕されてしまったとき、親御さんの心配はいかばかりか察するに余りあります。どう対応してよいか分からず、途方に暮れる思いをなさる親御さんも多いことと思います。

少年事件がどのように進んでいくものなのか、そしてうちの子はどのような処分を受ける可能性があるのか、知りたいことはたくさんあるでしょう。

このような事態に直面してしまったとき、親御さんのご心配を解消する一番の近道は、弁護士に相談することです。

少年審判期日までの時間は限られており、少年事件は時間との勝負という面がありますので、一刻も早く、泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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