傷害の少年事件実録〜示談成立後の少年鑑別所、少年審判、保護観察処分

刑事事件簿

傷害の少年事件実録〜示談成立後の少年鑑別所、少年審判、保護観察処分

少年法は少年の更生を目的としているため、少年事件では刑事罰を受けることはなく、従って前科はつきません。しかし、だからといって甘く考えると、少年鑑別所や少年院への送致など、想定外の重大な展開になってしまう場合があります。

ここでは、泉総合法律事務所へ実際に依頼があった少年事件弁護を紹介します。少年事件の流れがどのようなもので、どのようなことが起こりうるのか、この記事を読むことで曖昧だったところが解消されるでしょう。少年事件の被疑者の家族の方も、是非ともご一読ください。

1.刑事弁護依頼

少年は、経済的に余裕のある家で育ち、部活動をしながら大学進学を目指していましたが、大学受験が思うようにいかず浪人となってしまいました。その頃、新しい友人と付き合うようになり、その友人がトラブルに巻き込まれたことから、トラブルの相手方に傷害を負わせてしまい、警察に逮捕されてしまいました。

裁判所から少年の親に勾留決定の連絡が入ってから泉総合法律事務所に刑事相談があり、刑事弁護(家裁送致後は付添人活動といいます)を依頼されました。依頼は日曜日で、少年には火曜日からどうしても参加しなければならない今後の将来にとり重要なことがあり、親としては火曜日からの重要事に参加できるよう月曜日には釈放してほしいとの要望でした。

依頼が日曜日の昼過ぎだったため、その日か月曜日に釈放を実現するには、準抗告と言って別の裁判官が下した勾留決定の取り消しをしてもらう手続きしか方法はありませんでした。そこで、直ちに準抗告の準備を行うことにしました。

準抗告容認

通常は被疑者の少年に接見して事情を聞いてから準抗告の準備に入るのですが、本件は時間がなく、少年が逮捕されている警察署が遠方ということもあり、少年の親が警察署の刑事から詳しく事情を聴いていましたので、それをもとにして準抗告の準備を行いました。

親の身元引受書と上申書をその場で作成し、準抗告申立書を作成し、親の弁護人選任届(通常は本人の弁護人選任届なのですが、親兄弟でも弁護人選任届を作成できます)とともに事務局スタッフに裁判所へと日曜日の午後6時頃に持参してもらい、申し立てを行いました。

もっとも、被害者の傷害結果が重いものだったことや、犯行態様が悪質と評価されてもおかしくないことから準抗告は難しいと考えて、勾留継続を前提として、少年が逮捕勾留されている警察署に接見に行きました。しかし、接見からの帰り道を歩いている途中(午後9時頃)に裁判所から準抗告認容、勾留決定の取り消し、検察官の勾留請求を却下の決定連絡、つまり、少年を日曜日に釈放するとの連絡を受けたのです。

これにより少年は、将来にとり重要な火曜日からの行事にも参加できることになりました。

2.釈放後の示談交渉

さて、準抗告認容の結果、釈放されて火曜日からの重要行事に予定通り参加することができましたが、それだけでは少年と両親の希望の半分しか達成されたことになりません。当所では、少年の犯行結果や犯行態様の悪質性を懸念し、少年院送致がないよう、被害者に赦しを乞い、その損害を回復することで少年の重大な犯行による悪い結果を和らげられるように被害者との示談交渉を続けました。

その結果、被害者の方に謝罪文と示談金を受け取ってもらい、さらに赦しの意思の表示された書面(示談書)を取り付けることができました。

少年と両親はお喜びになり、少年院送致などはないものと受け止めました。

成人の刑事事件では、被疑者が個人の場合に示談が成立すれば通常は不起訴となり前科がつかないため、示談は非常に重要です。一方少年事件では、被疑者は成人ではないので刑罰の対象とはならず前科もつきませんが、家庭裁判所は示談の有無をかなり気にし、示談の有無で処分が左右されることもあるため、示談は成人の刑事事件同様に重要なものと当所では考えています。

3.少年鑑別所送致(観護措置)

しかし、被疑者が少年であったことから、この事件は示談で終了することはありませんでした。

成人が起こした刑事事件であれば、示談が成立した場合、被害者の方が許しているにもかかわらず処罰する必要があると捜査機関が考え、起訴して被疑者に刑事罰を科すに至ることは、前科前歴などがある場合以外はあまりありません。

家庭裁判所の判断

しかし、未成年が起こした非行事件については、どのような処分をするか決めるのは家庭裁判所となっています。そのため、警察が作成した捜査資料は、示談書を含めて家庭裁判所に送られました。

家庭裁判所は、少年の犯行態様の悪質さや傷害の結果の重大性を重視して、少年と親を調査のために呼び出し、その調査の場で少年鑑別所に送ること(観護措置)を告げました。少年はそのまま最寄りの鑑別所に収容されることになりました。

なお、捜査段階では勾留されませんでしたが、勾留と観護措置とでは目的が異なるため、勾留されなかったからと言って観護措置が不当ということにはなりません。

家庭裁判所は、事後的に示談が成立して被害が回復されたとか、被害者から赦しを得られたという事実よりも、それまで部活動に励み非行に手を染めていなかった好青年が、なぜか突然暴力沙汰を起こしてしまったという点に着目し、その原因を突き止めなければ再び同様のことが繰り返されるおそれが否定できないと判断し、鑑別所で少年の心中を探ることが少年のためになるとの結論を家庭裁判所は下したものと考えています。

4.付添人としての弁護活動

逮捕されて一旦裁判官の勾留決定が下された後に準抗告が認容されて勾留決定が取り消されたこともあり、少年や両親にとって、観護措置、少年鑑別所への収容はたいへん衝撃的な出来事でした。また、被害者と示談が成立して安心していたところが、家庭裁判所が少年鑑別所送致(観護措置)を決めたこともありますが、刑務所や少年院などのほかの施設と比べて報道や紹介の対象にされることが少なく、実態のよくわからない鑑別所という施設そのものに対する不安も大きかったと思われます。

少年鑑別所は、収容された未成年者が自由に出入りすることを許されないという点では、刑務所などと同じですが、その役目は家庭裁判所が未成年者に対する処分を決めるために必要な情報を集めること、及び処分を決めるまでの間に未成年者が他者や自分自身を傷つけることのないよう保護することにあります。

ですから、鑑別所において、収容者には、多くの作文課題をこなすことや、様々な分野の訓練を受けた職員のカウンセリングを受けることが求められます。

少年は鑑別所で4週間を過ごすことになりました。少年の親や、当事務所の付添人弁護士が何度も面会に通いましたが、最初は将来に対する不安で押しつぶされそうな気分になったといいます。

少年の中に起きた変化

しかし、日を重ねるにつれ、自分の起こしてしまった暴力や、それに至るまでの自身の心の動き、さらには将来の生活について、自分自身を客観的に評価し考えることのできる態度が身についていき、面会の際に見せる表情も落ち着いたものに変わっていきました。

そして、4週間が経過する頃には、型通りの反省の態度を捨て去り、非行に至った本当の理由や、今後それが再発するのを防ぐために取りうる対策、さらには人生設計についても自ら表明することができるようになっていました。

この間、当初は驚き嘆くばかりであった両親も、少年と対話を続けるうちにその変化に気付き、これを受け入れられるように心情を改めていかれました。

付添人弁護士としては、面会の機会に少年の質問に答え、心配事に傾聴し、これからの展望について示唆を与えることに努めましたが、それが少年のいい方向での変化に影響を及ぼせていたとすれば喜ばしい限りです。

5.少年審判・保護観察処分

少年は、最初に家庭裁判所に呼ばれてから4週間後に再び家庭裁判所に戻り、そこで初めて自分に処分を下す権限を持つ裁判官に会いました。

裁判官は、警察から送られてきた資料をめくりながら少年に自身のした暴力行為の危険さを思い出させるとともに、鑑別所から送られてきた資料を見て、少年が家庭の助けを受ければ同じような行為の再発を防ぐことができると述べ、臨席した少年の親に少年の更生を支える決意のあることを確認し、少年に保護観察処分(非行をした未成年者を社会に戻し、時々保護観察所という監督役のところに出向いて生活状況を報告させることにより、反省の気持ちと更生のための努力が本物であるか一定期間観察する処分)とすることを告げました。

6.少年事件でも甘く考えず弁護士へ相談を

少年は、思いがけず少年鑑別所に行くことになり、そこで4週間を過ごすことになりました。両親もその間、少年院送致も念頭において命を削られるような思いをなさったことと思います。

犯行の重大性や犯行態様の悪質性を考えると少年院送致もあってもおかしくはない事案だと受け止めていますが、少年が少年鑑別所において親や当所弁護士(付添人)の助言を真摯に受け止め考えることで、家庭裁判所は少年院送致しなくとも更生できると判断しました。少年の場合には成人ではないので、刑事罰を受けることはなく、従って前科はつきませんが、だからと言って甘く考えるのではなく、少年事件に精通した弁護士に弁護を依頼することをお勧めします。

泉総合法律事務所は、成人の刑事事件だけでなく、今回のような少年事件にも精通しております。少年事件についても、是非とも泉総合法律事務所にご依頼ください。

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