本吉 政尋 弁護士
–出身学校はどちらですか?
出身大学は、中央大学法学部です。大学院は上智大学法科大学院になります。
–弁護士会などで活動されている団体、役職などはありますか?
まず、弁護士会関連で申し上げますと、日弁連交通事故相談センター千葉支部と、千葉県弁護士会リーガル・アクセス・センター運営委員会に所属し、積極的に活動しております。
次に、地域のボランティア団体として、日本青年会議所関東地区協議会防災安全保障確立委員会と、かずさ青年会議所ひかり輝くかずさの未来開発委員会に所属し、こちらも積極的に活動しています。来年は、委員長に就任いたします。
–本吉先生にとっての刑事弁護の意義とは?
■更生の手助け
(1)通院
窃盗ならクレプトマニア、盗撮・痴漢・強制わいせつ・強姦なら性依存症、薬物犯罪なら薬物依存症、といった具合に、何らかの病気や嗜癖(しへき)を持っている場合があります。
そして、本人がそれに気づいてないこともあります。
また、これらの病気や嗜癖に対処する嗜癖クリニックなどの医療機関の存在を知らない方もいらっしゃいます。
さらに、本人は、「やめたいけど、やめられない。」と悩んでいる場合もあります。
弁護人として、刑事処分が軽くなるように、嗜癖クリニックなどの医療機関への通院を勧めることもありますが、それ以上に、被疑者や被告人が長い人生を歩む中で、ご自身がどういった人間であるか気づきを得るきっかけになればと思い、また、更生の機会を得られればと思い、これら医療機関へ通院することを勧めています。
(2)犯罪のメリットとデメリット
犯罪により得るもの(極めて個人的な一時的なものにすぎない満足など)と失うもの(家族などからの信頼、定職、収入など)を伝え、犯罪が割に合わないことに気づいてもらえればと思っています。
■示談を通じての被害回復
被疑者や被告人本人、それとそのご家族は、警察や検察から被害者の連絡先を教えてもらえません。したがって、謝罪や償いを被害者にしたくても、できないことが通常です。
しかし、弁護士であれば、被害者の連絡先を知り得ます。そこで、刑事弁護の意義には、被害回復を図ることにもあると考えています。
–事件解決のため、心がけている・気をつけていることはありますか?
■初動を早くする
刑事事件には、身柄(みがら)事件と在宅(ざいたく)事件があります。
身柄事件とは、逮捕・勾留(こうりゅう)される事件のことを言います。
在宅事件とは、普段どおりの生活をしながら、警察、検察、裁判所などから呼ばれたときだけ出頭する事件をいいます。
身柄事件の場合、20日以内に示談を成立させないと、起訴され、前科がつく可能性があります。しかし、示談には、ケースバイケースですが、2週間程度かかることが通常です。そこで、身柄事件の場合、早期の示談成立に向け、最初の動きを早くしようと心がけています。
■接見に頻繁に行く
警察署は、駅から離れた場所にあることが多いです。
また、千葉県は、都市部は別として、電車が1時間に1本など、交通の便が悪く、その上、東京神奈川埼玉と異なり、極めて広大です。
しかし、私は、車を持っています。
そこで、たとえば、1日のうちに、館山警察署→習志野警察署→佐倉警察署といった具合に接見したことがありました。
また、他の弁護士からは、接見しすぎではないかと言われることがあります。
しかし、被疑者などに有利な情報をわずか2、3回の接見で漏れなく被疑者などがしゃべってくれるとは、私には思えません。それゆえに、私の場合、接見回数が多いのです。
–刑事事件に対するスタンス・ポリシーを教えてください。
よりよい社会をつくる一助になればと思い、弁護活動しています。
すなわち、身元引受人を付けたり、嗜癖クリニックへの通院を勧めたりして、被疑者などの更生を図ります。また、示談を通じて被害者への被害回復を図ります。
これらによって、刑事事件が少しでも減り、また、被害感情が少しでも弱まればと思っています。
裁判のときは、検察官側からのみならず、弁護人側からも被告人や証拠に光を当てることによってはじめて、裁判官から見て、事件の姿が正確に浮き上がると考えています。
検察官側からの光が強力な場合、検察官側の立てたストーリーに従った事件の姿が浮かび上がってしまい、公正公平な裁判ではなくなると思っています。
–これまでにどのような刑事事件を取り扱ってきたのですか?
これまでに私が取り扱ってきた刑事事件は、
- 出入国管理及び難民認定法違反(外国人)
- 大麻共同所持
- 銃刀法違反、傷害
- 強姦、監禁
- 器物損壊
- 建造物侵入、窃盗
- 盗撮
- 業務上横領
- 道路交通法違反
- 強制わいせつ(少年)
- 公務執行妨害
- 窃盗(耳が聞こえない口がきけない被告人)
- 器物損壊、建造物侵入、窃盗(否認)
- 傷害(共犯)
- 痴漢
- 詐欺(共犯)、覚せい剤所持
- 道交法違反(少年)
- 建造物侵入、窃盗(否認)
- 傷害
- 建造物侵入、窃盗未遂(窃盗未遂は否認)
- 窃盗(共犯)
- 傷害(一部否認)
- 痴漢(少年)
など、多岐にわたります。
–最後に、弁護士へ相談しようか迷っている方にメッセージをお願いします。
■国選弁護人がつくから私選弁護人は不要と思っている方へ
国選の場合、被疑者や被告人は、弁護人を選べません。
身柄拘束されている警察署などから遥か遠い法律事務所の弁護士が国選弁護人として選任されているかもしれません。
その場合、多くの弁護人は、頻繁に接見に来てくれないでしょう。
また、国選弁護人があまり刑事事件をやっていない弁護士かもしれません。
最近も、被疑者が、「性犯罪なので、恥ずかしいから、女性の弁護士は避けたい。」と思っていたのに、女性の国選弁護人が選任されたケースがありました。
逆に、国選弁護人も、被疑者や被告人を選べません。
そこで、相性(あいしょう)が合わないということもあります。
■初犯だから軽い処分が見込まれるので、弁護士は不要と思っている方へ
刑事処分は、同じ犯罪を繰り返していても、前回の処分と同じにはならず、段々と重くなっていくことが通常です。
たとえば、同じ犯罪を繰り返した場合、最初は不起訴でも、2回目は、略式罰金、3回目は正式裁判(裁判所での裁判です。裁判が終わるまで勾留が続く可能性があります。マスコミはもちろん、誰でも傍聴できます。)となり、執行猶予付き懲役、4回目は、実刑(判決後、直ちに、刑務所行きです。)などといった具合に、刑事処分は段々重くなっていきます。
そこで、1回目に、「弁護士をつけなくても、略式罰金で済みそうだから、弁護士は不要だ。」と考えても、2回目に、正式裁判となってしまい、そのときになって、「1回目から弁護士をつけて示談を成立させて不起訴になっていれば、今回は正式裁判にならずに略式罰金で済んだのに。」などと後悔する可能性があります。