用語解説 [公開日]2021年4月30日

東京地検特捜部とはどんな組織?

ニュースやテレビドラマなどでも取り上げられることが多い「東京地検特捜部」ですが、具体的にどんなことをしている組織なのかをご存知の方は少ないでしょう。

今回は、「東京地検特捜部」について、どんな事件を担当しているのか、警察や検察との違いなどについて解説します。

1.東京地検特捜部の担当・役割

特捜部は「特別捜査部」の略称です。検察庁の中の1つの部署ですが、全国で東京、大阪、名古屋の3つの地方検察庁にしか設置されていません。
東京地検特捜部は、この3つの中の1つということになります。

東京地検は霞が関の法務省の隣にありますが、東京地検特捜部は霞が関ではななく、千代田区九段の合同庁舎内にあります。

1947年に、戦時中の供出物資や軍需物資を政治家が隠匿した事件を捜査する隠退蔵事件捜査部として結成された歴史があります。現在は、部長・40人程度の検事・副検事・検察事務官で構成されています。

東京地検特捜部は、汚職事件、脱税事件・経済事件などを担当します。
公正取引委員会・証券取引等監視委員会・国税局などが法令に基づき告発をした事件に関しても独自の捜査を行います。

具体的には、贈収賄事件、企業の粉飾決算事件や大型詐欺、業務上横領、不正競争防止法違反、インサイダー取引、独占禁止法違反、投資詐欺などの被害が甚大で世間に大きな影響を与える事件を担当しています。

また、これには政治家や官僚、大企業の役員、悪徳弁護士などが絡む事件が多く、立件に失敗したり、公判を維持したりできなければ、検察といえども政治的な反撃を受けます。背景の事実関係が複雑で、クリアーすることが必要な法的問題点も多いので、集中的に綿密な捜査をした上で慎重に捜査を進めています。

これまでに特捜部が捜査した、政財界を中心とした大きな汚職や脱税事件としては、田中角栄元首相が逮捕されたロッキード事件、多数の政治家・官僚らが関与した贈収賄事件であるリクルート事件、粉飾決算等が問題となったライブドア事件などが挙げられます。

2.警察・その他の検察との違い

東京地検特捜部がやっていることは「警察やその他の検察と一緒では?」と疑問に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、少し異なります。

そもそも警察は、第一次的な犯罪捜査機関であり、犯罪の証拠を集めます。

これに対し、検察は、第二次的な捜査機関であり、警察が収集した証拠に基づき起訴するか・不起訴にするかを決める機関です。日本の場合は起訴権限が検察にのみ与えられており、警察には起訴・不起訴の権限はありません。

もちろん、上の第一次的な捜査機関、第二次的な捜査機関というのは、通常、一般の事件捜査について、そのような体制がとられているということであって、

検察が自ら積極的な捜査をしてはならないわけはありませんし、実際、検察が独自に捜査をするケースもあります。

ただ、特捜部では、警察の捜査を介することなく、最初から最後まで、特捜部だけで捜査を行うことに特化している点が、他の検察部署と異なっています。

一切警察の手を借りることはありませんから、特捜部に逮捕されると、警察の留置場を経験することはなく、身柄はただちに拘置所に置かれることになります。取調べも拘置所に設置された取調べ室で行われます。

警察や一般の検察のように、他の事件と掛け持ちで捜査をするということがありませんし、特捜部の検事や事務官の事務処理能力は高いので、捜査の進度は速く、被疑者が事実を争わないのであれば、特捜部が担当してくれれば余計な時間をかけずに早く起訴してもらえるという意外なメリットがあります。

ただ、反面、特捜部の捜査・公判活動は、かなり「強引」と評する意見もあります。証拠関係から読み取って描いた事件の構図にこだわり、そのストーリーを無理矢理押しつけようとする傾向が著しいと批判されることもあります。

実際、大阪地検特捜部が厚生労働省の幹部を虚偽公文書作成罪等で起訴した事件では、主任検事が、被告人に有利な証拠を書きかえてしまうという、あってはならない不祥事を起こしており、組織の体質的なものだとの批判も受けています。

特捜部の捜査を受けるならば、このような強権的で不当な捜査手法を許さないよう、弁護士が徹底抗戦をすることが必要と言えます。

もっとも、このような負の歴史もありますが、それが特捜部の全てではないことも確かです。数多くの大きな不正事件を摘発してきた功績があります。

3.脱税、背任、横領などの刑事事件は弁護士にご相談を

特捜部が担当するかどうかはともかく、脱税や、横領事件などで逮捕されそうな場合には、できるだけ早く弁護士に依頼してください。

特に、これらの犯罪では、証拠資料は段ボール箱数十箱にのぼることは通常であり、これら資料を捜査機関に押収されてしまうと、細かい事実関係を把握することが難しくなるだけでなく、被疑者に有利な証拠も敵方に秘蔵されてしまい、著しく不利な立場となってしまいます。

資料を押さえられる前であれば、来るであろう捜査や逮捕に備えて、有効な対応策を講じることもできます。

泉総合法律事務所では、検察官として複雑な企業経済事件などを数多く担当してきた実績のある弁護士も擁しており、その経験と知識は所員全員で共有しています。

是非、特捜部事件の弁護経験のある泉総合法律事務所にご相談ください。

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