強要・恐喝事件

人に義務のないことを強いる犯罪で、反社会的勢力の資金調達から最近ネット上でも話題になった土下座の強要まで、社会の隅々で発生しているものです。要求する内容が法律的には正当であっても要求の仕方が許される限度を超えると犯罪となるという議論が古くからなされています。

平成17年5月25日大阪地方裁判所判決

会社を解雇された元従業員とその支援者三人が社長室に押しかけ、解雇予告手当の支払等を要求した事案。「会社がどうなってもええんか」といった発言はあったものの、過大な要求がなく、本来は関係のない支援者を迎え入れたのも会社が自発的にしたこととの事実を評価し、許される限度を超えたものではないと裁判所は判断した。

平成15年6月19日神戸地方裁判所判決

暴力団員が某会社から総額1億円分の小切手振り出しを強いた事案について、弁護人はその会社から依頼された手形の回収に対する報酬であり正当な権利行使であると主張したものの、そもそも会社の依頼した手形の回収自体が反社会的で社会通念上許容されないとして、報酬請求権そのものを認めず、恐喝の成立を免れなかった事案。

昭和38年7月15日東京地方裁判所判決

手形の回収にあたり、テレビやラジオに出して町にいられなくしてやるとか、銀座を猿股一枚で歩かせるなどといった脅し文句を並べ、灰皿でテーブルを叩くこともしたものの、被告人側にも手形を回収しなければ民事刑事の責任に問われるとの事情があったことから、権利行使として許される限度を越えてはいなかったと判断された事案。