横領・背任事件

横領と背任はともに人の信頼を裏切って損害を与える犯罪です。横領の方が法定刑の上限が重くなっているのは、預かった他人の財産を我が物のように扱うことで、信頼を裏切る度合いが大きく、より悪質とみなされるためとされています。いずれの罪も、被告人が誰からどのような信頼を与えられており、どのような行為でこれに反したかは事案によってまちまちで、判決文も長くなる傾向があります。

平成26年12月25日盛岡地方裁判所判決

公立病院内の薬局の責任者が、管理を任されていた薬品(判明しただけで1300万円分)を15年間にわたり少しずつ売り払って代金を借金返済などに充てた事案。被害金額のうち1000万円余りが弁償されたものの、その悪質さから実刑を免れなかった。業務上横領罪として懲役2年10月が科された。

平成21年3月26日最高裁決定

譲渡後移転登記が未了であった不動産について、登記上所有名義が残ったままであった元の持ち主が、真の権利者から原状回復解決金と称して金員を巻き上げるために、所有名義を悪用して架空の抵当権設定仮登記をつけた事案。

元の持ち主は、真の権利者に所有名義が移転するまでは真の権利者のために不動産を預かっている立場にあり、その信頼を裏切って所有者にしかできない抵当権設定仮登記をつけたことが横領にあたるとされた。

平成15年8月21日東京高等裁判所判決

会社の経理部の要職にあった被告人が、自社の乗っ取りを企図した集団の株式買い占めに対抗して第三者に自社株を取得させようとし、裏工作資金として十億円を超える会社資金を支出したことで業務上横領罪に問われたが、自らの利益を図る目的が認められないとして無罪となった事案。