商標法・著作権法違反事件

現代社会において知的財産はますます重要性を増しています。情報の複製や流布が誰にでも容易になったため、不法に利用された場合には本来の権利者の損害は計り知れないものになります。

そのため、軽い気持ちで犯罪に手を染めることがないよう、先例を知っておくことが市民には求められているといえます。

平成28年3月1日京都地方裁判所判決

流通業に従事する被告人が、積み荷である漫画雑誌を正式の発売日前に横流しし、これを受け取った者が雑誌をスキャンしたうえ中国語に翻訳までしてネット上に公開した事案。

こうした早売り雑誌を違法に公開しているサイトでは、競合サイトより少しでも早く公開することが広告収入につながることもあって重要なので、被告人本人の行為は雑誌一冊を渡したに過ぎないが犯罪全体の中では重要な位置を占めていたと判断された。懲役10月執行猶予3年の判決が下された。

平成27年12月14日仙台地方裁判所判決

テレビ局に無許可で録画したテレビ番組を編集してDVDに記録し、これをネットオークションで売りさばいた事案。違法出品をとがめられてオークションの利用制限をかけられるたびに新しいIDを取得して犯行を繰り返しており、悪質な犯行とみなされた。

弁償金の支払い等の事情を考慮されて実刑は免れたが、懲役1年6月執行猶予3年の他に罰金60万円の刑を受けた。

平成26年7月16日札幌地方裁判所判決

動画共有サイトにアップロードされた動画から音声データを抜き出して自分のサイトで無断公開した事案。ダウンロードされた回数は5年余にわたり総計420万回、被告人の得た広告収入は1億円以上とされ、非常に悪質と評価された。懲役3年執行猶予4年の他、罰金500万円の刑を受けた。

平成25年9月9日長崎地方裁判所判決

いわゆる自炊代行業を営み、著作権者に無断で書籍の電子データ化を行った事案。職業的犯行であり、著作権の侵害回数や被害額が多いことから、懲役2年執行猶予3年の刑に加えて罰金50万円を科された。

平成16年11月30日京都地方裁判所判決

ファイル共有ソフト「Winny」の利用者が、映画のデータを誰でもダウンロードできる状態にしたとして摘発された事案。懲役1年執行猶予3年の判決が下された。

なお、「Winny」の作者も後日著作権法違反で起訴されたが、開発の主目的が技術の検証にあり、著作権侵害行為をしないよう警告していたという事情が認められ、最高裁で無罪とされた(平成23年12月19日決定)。