商標法違反
商標法違反とは
商標権とは、知的財産権の一種であり、指定の商品または指定の役務について、登録を受けた商標を独占的に使用できる排他的な権利のことを指します。
そして、商標法とは、商標を使用する者に対して、その商標を独占的に使用することを認め、業務上の信用が維持されること、および需要者(消費者)の利益を保護することを目的としています。
簡単に言えば、商標権という権利によって保護することで、ブランド品を扱うメーカーの信用を保護し、さらにはそれを信用してブランド品を購入した消費者の利益も保護することを目的としているのです。
したがって、偽ブランドの装飾品や衣類を販売したり、または販売目的で所持していたり、さらにはそれらの商品を輸出・輸入した場合には、商標法違反で処罰される可能性があります。
ちなみに、商標権侵害は故意がなければ、成立しません。
つまり、その商品が本物だと信じていた場合には罪に問われません。ただ、「もしかしたら、偽物かもしれない?」と思っていた場合は、商標法違反で処罰される可能性があります。
商標法違反が発覚するきっかけとなるのは、主に、ブランド会社や税関、さらには偽ブランド品を受け取った消費者からの通報などです(他にもサイバーパトロール経由での発覚もあり)。
したがって、ブランド会社からの警告文や、偽ブランド商品を受け取った消費者からの問合せ(クレーム)があった場合は、安易に放置せず、まずは弁護士に相談することをおすすめします。放置してしまった結果、警察へ被害届が出され、警察の捜査が開始されてしまうためです。
捜査機関としては、「商標法違反を犯したらこんなにも重く処罰されるのだ」ということを世間に周知したいという思惑もあり、近年では厳罰化の傾向にあります。
したがって、「きっと自分は大丈夫。バレたりはしない」という安易な気持ちは捨てて、慎重に行動すべきです。
これらの行為が“商標法違反”にあたります
◇偽ブランドのバックをネットオークションで販売するために所持した
◇偽ブランドの洋服を海外から輸入した
◇有名メーカーの装飾品を偽造して、インターネットで販売した
つまり、偽ブランド商品・コピー商品を販売する、もしくは販売目的で所持したり、それらの商品を輸入・輸出した場合に商標法違反で処罰されるのです。
商標法違反の刑罰
(1)商標権を侵害した場合:
10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が併科されます。典型的な例は、偽ブランド商品を販売した場合です。
(2)商標権侵害とみなされる行為をした場合:
5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金またはその両方が併科されます。典型的な例は、偽ブランド商品の販売を計画していた者が偽物の商品を所持していた場合、つまり商標権侵害の準備行為をしていた場合です。
一般的に、商標法違反の量刑を行う場合、次の項目を基準として総合的に判断します。
- 商標侵害行為によって得た利益の額
- 侵害行為の回数の多少
- 商標法違反の内容(入念な計画に基づくものかなど)
- 頻度
- 商標法違反を遂行する際の手段の危険性
- 余罪の有無
- 示談ないし被害弁償の有無やその金額
- 反省状況
- 商標法違反の目的・動機
- 前科の有無
など
商標法違反に関する量刑相場について、これまでの泉総合での刑事弁護実績を踏まえてご説明します。
まず、初犯の場合、示談や被害弁償が済んでいれば、起訴されたとしても執行猶予となるのが通例です。ただし、海外の一流ブランドなど、示談や被害弁償について非常に厳しい対応をとるブランドも多いです。
なお同種の前科がある場合は、略式手続による罰金ではなく、公判請求されて刑事裁判となる可能性もあります。
商標法違反の弁護方針
◇罪を認めている場合
(1)警察沙汰になる前に、話し合いをする
警察が介入する前に、弁護士が弁護人として被害者側と話し合います。もし、この話し合いで解決できれば、前科がつくことはもちろん、逮捕される心配もありません。まずは、これが一番効果的な対応策です。
商標法違反の場合、まずはブランド会社や税関、またはコピー商品を受け取った商品購入者から警告文や問い合わせがあります。ですので、それを放置せず、そのタイミングでまずは話し合うことが重要です。
そして、誠意ある謝罪、十分な被害弁償を行うことで、被害者の処罰感情を和らげましょう。もし、当人同士での話し合いが不安であれば、迷わず弁護士に相談することをおすすめします。
(2)示談成立を目指す
もし、被害届提出や告訴がなされ、警察が介入してきた段階であれば、不起訴処分を勝ち取るための示談成立を目指して、被害者との交渉に全力を尽くします。
と言うのも、被疑者を起訴するかどうか判断するにあたり、検察官は示談の成否をとても重要視するからです。示談成立をアピールすることは、不起訴処分となる可能性を高めるための最も効果的な手段であると言えます。なお、商標法違反において示談を成立させるためには、被害弁償額、つまり示談金額がとても重要です。
ただ、示談交渉の際、お互い冷静な話し合いができず、さらなるトラブルに発展してしまう可能性もあります。また、被害弁償額があまりにも高額であれば、分割払いの交渉もなるので、スムーズに交渉を進めるためにも、示談交渉の経験豊富な弁護士に任せるべきです。
海外の一流ブランドなどは、日本の支社や、その商標を管理している会社と交渉することになりますが、非常に厳しい対応をしてくることが多いです。
(3)反省文・謝罪文を書く
商標法違反行為に及んでしまったという事の重大さを被疑者の方に理解してもらい、深く反省してもらいます。そして、被害者が許してくれるかどうか、という点はとても重要ですので、被害者に対して十分に謝罪します。
また、被疑者の方に謝罪文や反省文を作成してもらい、被害者、そして検察官や裁判官にその書面を提出することで、きちんと反省している姿勢をアピールしていきます。
(4)早期釈放を目指します
在宅事件ではなく、被疑者が身柄を拘束されている場合には、早期の身柄解放を目指して、以下の弁護活動を全力で行います。
・勾留請求をしないでもらえるよう、検察官に対して要求する。
↓
(それでも勾留請求されてしまった場合には)
・勾留決定しないよう、裁判官に要求する。
↓
(それでも勾留決定が下されてしまった場合には)
・勾留決定を取り消してもらうよう、裁判官に対して要求する。
いわゆる、“準抗告”を行う。
泉総合ではこれまでに、商標法違反における多くの勾留阻止、身柄解放の実績がありますので、どうぞご安心ください。
◇否認している場合(無罪主張)
(1)成立要件を検証する
商標法違反に限った話ではありませんが、罪を成立させるには、いくつかの要件が必要となります。したがって、それらの成立要件がきちんと揃っているかをじっくり検証します。
もし、成立要件を満たさないとの判断に至れば、その点を検察官や裁判官に強く主張して、無罪を勝ち取ります。
特に、被疑者自身が、本物と信じていた場合には、商標権侵害の故意がありませんので、商標法違反は成立しません。そこで、被疑者がそう信じる合理的な理由があることを、裁判官や検察官にしっかり伝えて説得をしていきます。
(2)被害者側の主張を検証する
被害者側の主張に不可解な点がないか、きちんと検証します。もし、不可解な点があれば、その点を検察官や裁判官へ強く主張することで、無罪を証明していきます。