身近な法律の疑問 [公開日]2020年5月11日

軽犯罪法と刃物|凶器携帯の罪について

他人の物を奪う、又は、他人に暴力をふるうと刑法で処罰されます。その他の犯罪行為を規制する場合に適用される法律も、刑法によるものがほとんどです。

もっとも、刑法以外の法律で、一定の行為が規制されている場合があります。

例えば、刑法に凶器携帯の罪は存在しませんが、軽犯罪法には凶器携帯の罪が存在します。そのため、ある行為が罰せられるか否かを確かめるためには、刑法を確認するだけでは足りません。

ここでは、軽犯罪法で規制される行為の中でも、特に皆さんの身近で発生しうる凶器携帯の罪について説明します。

1.軽犯罪法とは

軽犯罪法は、比較的軽微な犯罪を規制する法律です。そのため、殺人や強盗等の悪質な犯罪については規定されていません。

軽犯罪法が規制している行為は全部で33個あります(条文は34号までありますが、現在、21号の罪は削除されています)。

皆さんに身近なものとして、今回説明する凶器携帯の罪以外だと以下の行為があります。

  • 映画館や飲食店で乱暴な言動をして迷惑をかけること(5号)
  • 獰猛な猛獣を解き放つこと(12号)
  • バスや電車を待つ列に無理やり割り込むこと(13号)
  • 公務員(警察官等)が止めたにもかかわらず、スピーカー等で大音量を出し、他人に迷惑をかけること(14号)
  • 公園などの公共の場所で、たんつばを吐く、又は、立小便すること(26号)
  • 他人が迷惑するようなごみを、公園に捨てること(27号)
  • 「関係者以外立ち入り禁止」の掲示がある場所に立ち入ること(32号)

このように、街中でみなさんが見かけたことがあったり、魔が差してやってしまったりしそうな行為も軽犯罪法で規制されています。

軽犯罪法に違反した者は、拘留又は科料に処されます(軽犯罪法1条柱書)。なお、犯罪者の情状によっては刑が免除されたり、拘留と科料が併科されたりする場合があります(軽犯罪法2条)。

2.軽犯罪法の凶器携帯の罪

凶器携帯の罪は軽犯罪法1条2号で規制されています。

凶器携帯の罪は、「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた」場合に成立します。

(1) 規制される凶器

凶器携帯の罪で規制している凶器は、主に、刃物や鉄パイプ等です。刃物とされているのみで、刃渡り何センチ以内等の制限はありません。そのため、小さいナイフも本罪が規制する刃物に該当します。

また、「人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」とは、バット、木刀、メリケンサック、ヌンチャクや強力な催涙スプレーなどがこれにあたる可能性があります。

このように、人に害を与える可能性のある物は全て凶器にあたると解されます。

(2) 隠して携帯の意義

凶器携帯の罪は、(1)に該当する凶器を隠し持っていた場合に成立します。そのため、ナイフやバットを堂々と持ち歩いていた場合には凶器携帯の罪は成立しません。

また、凶器を携帯した者に、凶器を隠しているという認識が必要です(※)。例えば、見ず知らずの内に誰かが鞄の中にナイフを入れ、その鞄を持ち歩いていた場合には凶器携帯の罪は成立ません。

※もっとも、裁判例の中には、隠している認識だけでは足りず、隠すことについて積極的意図が必要としたものがあります(広島高判平成29年3月8日)。

(3) 正当な理由

(1)(2)に該当する場合でも、凶器携帯に正当な理由がある場合は罰せられません。

正当な理由」とは、「器具を隠匿携帯することが、職務上又は日常生活上の必要性から、社会通念上、相当と認められる場合」を言い、これに該当するか否かは、「当該器具の用途や形状・性能、隠匿携帯した者の職業や日常生活との関係、隠匿携帯の日時・場所、態様及び周囲の状況等の客観的要素と、隠匿携帯の動機、目的、認識等の主観的要素とを総合的に勘案して判断すべき」とされています(最判平成21年3月26日)。

例えば、主婦が刃物店で包丁を買ってから家に持ち帰ること、野球をするために自宅から野球場までバットを持ち歩くことは、正当な理由があるとされます。

包丁やバットのように、それ自体、そもそも人の生命身体を攻撃することを目的とする道具ではない場合は、日常の社会生活を送るうえで不相当ではない目的の持ち歩きであれば、通常は正当と評価されやすいのです。

これに対し、もともと攻撃や防御を目的とする道具の場合は、正当な理由の判断は厳しくなり、上記のような諸事情が細かく問われることになります。

裁判例では、護身用に小型の催涙スプレーを持ち歩くこと(上記、最判)、武術の練習のためにヌンチャクを持ち歩くこと(上記、広島高判)には、正当な理由があるとされていますが、これらは、その事案における具体的な諸事情のうえで正当と判断されたものであって一般化できるものではありません。

例えば、上記最判の裁判官補足意見では、「本判決は、飽くまで事案に即した判断を行ったものであり、催涙スプレーの隠匿携帯が一般的に本号の罪を構成しないと判断したものではない」、「これといった必要性もないのに、人の多数集まる場所などで催涙スプレーを隠匿携帯する行為は、一般的には『正当な理由』がないと判断されることが多い」とされています。

従来から、ナイフなどを「護身のために」携帯することは正当な理由にあたらないと理解されてきましたが、上の最高裁や広島高裁の判断も、この理解を変更するものではないのです。

3.刃物を携帯した場合に成立するその他の犯罪

刃物を携帯した場合に成立する可能性があるのは、軽犯罪法の凶器携帯の罪だけではありません。

例えば、人を殺すため、又は、強盗をするために刃物を持ち歩いた場合、殺人予備罪(刑法201条)や、強盗予備罪(刑法237条)が成立する可能性があります。また、2人以上で、他人の生命や財産等を害する目的で、刃物を準備して集合した場合は、凶器準備集合罪(刑法208条の2)が成立しえます。

刃物を持ち歩いた場合、刑法以外の法律で罰せられる場合があります。例えば、刃体の長さ6センチメートル以上の刃物を正当な理由なく持ち歩くと、銃刀法違反が成立する可能性があります(銃砲刀剣類所持等取締法22条 )。

[参考記事]

銃刀法違反の逮捕基準|刃渡りと関係あるか

4.まとめ

軽犯罪法違反で起訴・有罪となった場合、拘留や科料という軽い刑罰であっても、前科がついてしまいます。「たかが軽犯罪法違反」と高を括るのはいけません。

軽犯罪法で警察から呼び出しを受けた場合や、身内が逮捕されてしまった場合は、すぐに泉総合法律事務所の弁護士へご相談ください。

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