児童福祉法の定義・目的は?刑罰と示談の重要性等まで徹底解説

法律

児童福祉法の定義・目的は?刑罰と示談の重要性等まで徹底解説

成人男性が女子高校生に淫行をさせたとして、児童福祉法違反で逮捕された旨の報道がされたりします。
では、この場合、児童福祉法(以下、単に「法」ともいいます。)のどの規定に違反するのでしょうか。

「淫行」については、都道府県の青少年育成条例(以下「淫行条例」といいます。)違反の罪に問われたりもしますが、児童福祉法違反とはどのような関係になるのでしょうか。

以下においては、まず、児童福祉法の目的等を確認し、次いで、実務でよく問題となる同法違反のケース、そしてその成立する罪や罰則などについて、さらに、逮捕・勾留、起訴・不起訴、裁判結果などにも触れながら、刑事弁護の観点から、解説することとします。

1.児童福祉法の目的等

児童福祉法の目的は、児童の福祉を保障することにあります。

児童の福祉の内容としては、児童が適切な養育を受け、生活を保障されて愛護されること、心身の健やかな成長・発達や自立が図られること等を保障される権利を有することが挙げられています(法1条)。

そして、児童福祉法は、児童の福祉の保障のため、保護者、国・地方公共団体は、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負うものとし、また、国民もそれに努めなければならないとしています(法2条)。

2.児童福祉法違反のケースと罰則

(1) 児童福祉法違反の罰則

児童福祉法は、児童の福祉の保障を実現するため、児童が持つべき権利や児童に対する支援が阻害されたような場合に、処罰できるものとして罰則を設けています(第8章。法60条~62条の7)。この罰則に違反しますと、児童福祉法違反の罪に問われます。

児童福祉法に違反した場合、保育士が職務上知り得た秘密を漏洩した罪(法61条の2第1項、18条の22)のみが親告罪(法61条の2第2項)で、その他の罪は親告罪ではありません。その結果、上記の秘密漏洩罪以外の罪については、告訴がなくても起訴できるものとされています。

(2) 検挙されるケース

児童福祉法違反で検挙されるのは、性風俗に関するケースが多く、その中でも、児童に淫行をさせたケースが大半を占めています(警察庁の送致人員に関する統計では、平成25年・332人、平成26年・319人)。

その他では、満15歳に満たない児童をして酒席での接待を業務としてさせたケースが問題となっています。

(3) 罰則内容

児童福祉法は、「児童に淫行をさせる行為」(法34条1項6号)を禁止し、違反した場合(以下「児童淫行罪」といいます。)の罰則(10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は懲役と罰金の併科)を定めています(法60条1項)。

また、同法は、「満15歳に満たない児童に酒席に待する行為を業務としてさせる行為」(法34条1項5号)を禁止し、違反した場合の罰則(3年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又は懲役と罰金の併科)を定めています(法60条2項)。

以下では、児童淫行罪を中心に、解説することとします。

3.児童淫行罪の内容等

(1) 児童淫行罪の内容

児童とは、18歳に満たない者をいいます(法4条1項)。

児童福祉法34条1項6号にいう「淫行」とは、「同法の趣旨(同法1条)に照らし、児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為をいうと解するのが相当であり、児童を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような者を相手とする性交又は性交類似行為は、同号にいう『淫行』に含まれる。」と解されています(最決平28.6.21刑集70巻53号69頁)。

そして、性交又は性交類似行為には、姦淫(膣内性交)のみならず、肛門性交、口腔性交(口淫)も含まれること(刑法177条参照)は明らかです

さらに、最決平10.11.2(刑集52巻8号505頁)によれば、「中学校の教師が、その立場を利用して、児童である女子生徒に対し、性具の電動バイブレーターを示して自慰行為をするよう勧め、あるいは、これを手渡し、一緒に入っているこたつ又は布団の中でこれを使用して自慰行為をするに至らせた各行為は、いずれも児童福祉法34条1項6号にいう『児童に淫行をさせる行為』に当たる。」としていますから、性交類似行為には手淫やこれに類する行為(例えば、いわゆる須股)も含まれるものと解されます。

(2) 「児童に淫行をさせる行為」とは

「児童に淫行をさせる行為」とは、どういう意味なのでしょうか。

この点、前掲最決平28.6.21は、

「同号(注・児童福祉法34条1項6号)にいう『させる行為』とは、直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をいうが、そのような行為に当たるか否かは、行為者と児童の関係、助長・促進行為の内容及び児童の意思決定に対する影響の程度、淫行の内容及び淫行に至る動機・経緯、児童の年齢、その他当該児童の置かれていた具体的状況を総合考慮して判断するのが相当である。」とした上、「本件各性交は、児童(当時16歳)を自己の性欲を満足させる対象と扱っているとしか認められないような者を相手とする性交であり、講師たる被告人は校内で性的接触を開始しほどなく性交に及んでいる。このような事実関係の下では、被告人は単に児童の淫行相手となったにとどまらず、児童に対し事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する行為をしたと認められる。したがって、被告人の行為は、同号にいう『児童に淫行をさせる行為』に当たる。」

としています。

ところで、刑法177条の性交、肛門性交又は口腔性交には、行為者が、被害者の膣内、肛門内又は口腔内に自己又は第三者の陰茎を入れることに加え、自己又は第三者の膣内、肛門内又は口腔内に被害者の陰茎を入れる行為も含まれると解されています。

したがって、児童福祉法34条1項6号(児童淫行罪)との関係では、上記の「被害者」を「児童」に置き換えて、理解することになります。

以上からも明らかなように、「児童に淫行をさせる行為」とは、行為者が児童をして第三者と淫行させる行為のみならず、行為者が児童をして行為者自身と淫行させる行為をも含むことになります。

なお、上記最決平10.11.2など、淫行相手に児童淫行罪の成立が認められた裁判例をみますと、行為者と被害児童との間には、いずれも、親子ないしこれに準ずる関係、あるいは教師と生徒ないしこれに準ずる関係があり、これが背景となっているため、児童に心理的に作用して、児童が性交又は性交類似行為(以下「性行為等」といいます。)をさせられる状況の存在が認められます。

すなわち、これらのケースでは、単に性行為等に向けた働きかけがなされたのみならず、そもそも両者が対等ではなく、家庭や学校などといった場面において、行為者が児童に対し相当程度支配的立場にあり、しかも児童が行為者に依存せざるを得ない不均衡な関係がその基礎にあることから、性行為等への働きかけがこの関係に基づく影響力を用いてなされるために、児童は受忍して性行為等をさせられる、という状況が認められるのです。

(3) 年齢の認識

たとえ「淫行をさせる行為」があったとしても、相手が18歳未満の児童であることを知らなければ、処罰されることはありません。知らないことに過失があっても、同様となります。

相手が18歳未満の児童であることを確定的あるいは未必的に知っている場合の故意犯だけが処罰されるわけです。

ただし、児童を使用する者が、児童淫行罪を犯した場合は、過失のないときを除き、児童の年齢を知らないことを理由として、処罰を免れることができないとされています(法60条4項)。

未必的に知っている場合とは、もしかしたら18歳未満かも知れない、との認識がある場合を指します。また、相手の服装などから、通常ならば18歳未満と認識するであろうとの事情(例えば、高校生の制服など)があれば、本人が18歳未満と信じていたとしても、裁判所、検察官は18歳未満の認識があったものと判断することになります。

その意味では、相手と「淫行」する前に、18歳未満と疑われる事情があれば、その行為を中止すべきといえます。

(4) 淫行条例違反の罪との関係

児童淫行罪が、同時に淫行条例違反の罪にも該当する場合、両罪の関係はどうなるのでしょうか。

両罪は、いわゆる法条競合のうちの特別関係に当たり、児童淫行罪が成立する場合には、淫行条例違反の罪は成立しないことになります。

4.児童福祉法違反事件の処理状況

児童福祉法違反事件の処理状況

(1) 事件件数

犯罪白書によれば、検察庁終局処理人員は下記のようになっています。

①平成25年度・・・総数472人(公判請求・253人、略式請求・57人、不起訴・116人、家裁送致・46人)

②平成26年度・・・総数502人(公判請求・270人、略式請求・60人、不起訴・114人、家裁送致・58人)

③平成27年度・・・総数496人(公判請求・259人、略式請求・81人、不起訴・112人、家裁送致・44人)

上記の処理状況からみましても、逮捕や検挙の早い段階で、児童福祉法違反事件に精通している弁護士が関与すれば、被疑者に有利となる結果が導かれると考えられます。

(2) 逮捕・勾留~裁判結果(平成25年度)

①逮捕・勾留

統計資料によれば、警察及び検察で逮捕されたのが325人で、警察で逮捕された324人のうち、322人が身柄付きで送検、勾留請求がなされ、その全員が勾留となっています。

②裁判結果

司法統計資料によれば、第1審での有罪率は100%で、実刑率・43%、執行猶予率・57%となっています。

5.逮捕後の流れ

児童福祉法違反の罪で逮捕されますと、上記5の⑶の①からも明らかなように、一般的には、逮捕に続き、勾留の手続がとられるものといえます。

そうしますと、最大72時間の逮捕に加え、10日間の勾留、更に10日以内の延長が認められることも考えられます。さらに、起訴された場合には、釈放され、又は保釈が認められない限り、身体の拘束が続くことになります。

児童淫行罪の場合、不起訴で終わるケースがあるとはいえ、公判請求されますと、実刑となる可能性も高いといえましょう。

6.弁護活動

一般の刑事事件であれば、被疑者・被告人の処分結果に最も影響を与えるのが、被害者との示談といえるでしょう。

確かに、児童淫行罪の場合も、被害児童との示談は、法律的には可能といえます。

しかし、実際の示談となりますと、当事者が親子ないしこれに準ずる関係の場合であれば、生活基盤を共通にしているため、かなりの困難を伴うでしょうし、当事者が教師と生徒ないしこれに準ずる関係の場合も、被害児童は18歳未満ですから、示談交渉の相手としては、必然その保護者である両親ということになりますので、示談の成立は極めて難しいと考えられます。

また、示談ということになれば、被害児童の心情にも最大限配慮しなければなりませんので、かなり高度な交渉ごとになります。そうしますと、被害児童側との折衝、そして示談交渉などは、刑事弁護、示談に精通している弁護士に委ねるのが望ましいことになります。

そして、児童淫行罪でも、実務上示談が成立すれば、検察官において、悪質でない限り、不起訴処分にすることも考えられます。

7.おわりに

児童福祉法違反、とりわけ児童淫行では、つい魔が差したり、軽い気持ちで行為に及んだりしたため、検挙されてしまうケースもあります。

逮捕され、仮に罰金で終わったとしても、前科がつくことになりますので、弁護士に早期に相談してください。弁護活動により不起訴となり、前科がつかないで済む可能性があります。

泉総合法律事務所は刑事事件の弁護経験が豊富で、児童福祉法違反の事例もかなりの弁護経験がございます。逮捕されてしまった場合は、是非ともお早めに泉総合法律事務所へご相談、ご依頼ください。

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