万引きの被害品らしき商品を所持していたとして逮捕、本人は否認
[事例 52] 財産事件 窃盗
性別 | 男性 | 相談に至った 経緯 |
・家族が逮捕された ・冤罪を証明したい ・前科をつけたくない・不起訴にしてほしい |
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年齢 | 30代 | |||
職業 | 無職 | |||
罪名 | 窃盗・万引き | |||
弁護活動の結果 | 不起訴 |
背景
Aさんのご両親が相談に来られ、依頼を受けました。2日前の夕方、Aさんが、警察官に連れられて帰ってきたのです。警察官が言うには、挙動不審だったAさんに職務質問をしたところ、万引きしたと思われる商品が出てきたとのことでした。ご両親は、その場でAさんに確認しましたが、Aさんは絶対にやっていないと言いました。Aさんはそのまま警察官に連れていかれ、しばらくした後、逮捕したという連絡をご両親が受けました。
やっていないと言っているのにAさんが連れていかれたこと、どうしてこんなことになったのかが分からないと、ご両親はとても不安そうでした。
弁護士対応 - 取調べにおける黙秘のアドバイス、精神鑑定への協力。
接見においてAさんは、「職務質問を受ける直前にその店に立ち寄ったのは事実だが、万引きなどやっていない」と話していました。私たちは、Aさんのその主張を信じ、不起訴を狙うことにしました。
そこでまずは、Aさんの供述がこれ以上、供述調書(警察官の作る書面)に残されては不利であると考え、取調べには黙秘するよう、アドバイスしました。
並行して、検察官と連絡を取り、逮捕状況についての聞き取りを行いました。その結果、(1)万引きをしたのはAさんで間違いない、(2)ただ一方では、取調べにおけるAさんの不自然な言動から精神鑑定が必要である、と検察官は考えているということが分かりました。
そこで、不起訴処分の可能性を高めるには、精神鑑定を行った方が有利であると考え、これに協力することにしました。
結果 - 釈放、不起訴処分に。
最終的に鑑定の結果は、責任能力には問題はない、との判断でした。しかし、Aさんのご両親がしっかりと今後の監督に協力するという前提で、釈放してもらい、最終的に不起訴となりました。
一見して不自然な供述であっても、それが嘘かどうかは弁護士には判断できません。起訴されるまでは、弁護士であっても、捜査機関が集めている証拠に触れることができないからです。捜査段階では、本人の主張をしっかりと聞き、それをむやみに否定しないことが重要です。そうでなければ、弁護士の態度が冤罪を生みかねません。今回も本人の主張を前提に、取調べに対しては黙秘をするよう、アドバイスをしました。
しかし、一方でそれ以外の不起訴理由を作るため、検察官と頻繁に連絡をし、鑑定を行うよう働きかけました。鑑定結果は、責任能力を否定するものではありませんでしたが、それには至らない程度の精神疾患の可能性が示されたことで、検察官の不起訴という結論を導くことができました。