刑事弁護 [公開日]2018年4月11日[更新日]2024年6月20日

身元引受人(身柄引受人)がいないとどうなる?役割と拒否方法


身内(家族・親戚)が刑事事件の被疑者になってしまった場合、警察から連絡があり、身元引受人(身柄引受人)を頼まれることがあります。
しかし、様々な理由で身元引受人を拒否・辞退したいと思うことがあるでしょう。

果たして、身元引受人の拒否や辞退は可能なのでしょうか。また、そのためにはどのような手続を踏めばよいのでしょうか。

以下においては、刑事事件における身元引受人の役割・意味、身元引受人を拒否・辞退したい場合どうすれば良いかなどを解説します。

1.刑事事件における身元引受人とは?

刑事事件における身元引受人とは、逮捕によって身柄を拘束された被疑者(被告人)が解放された後に、被疑者の監督を行う人のことをいいます。

逮捕された被疑者や被告人が釈放・保釈された場合には、身元引受人が留置所などの刑事施設に被疑者を迎えに行き、身柄解放後にその者を監督することになります。

身元引受人が被疑者の監督を行う場合、捜査機関からの要請に応じて出頭を促したり、生活を共にすることで再犯を防止し更生の手助けをしたりする役割が考えられます。
しかし、監督の在り方の具体的な内容が決められているわけではありません。また、いずれの役割についても、法的な責任を負うものではありません

身元引受人になれる人や条件には、法律的な制約はありません。とはいえ、実務上の一般的な例としては、家族、親族、雇用先の社長・上司が身元引受人になることが多いです。場合によっては弁護士や友人も身元引受人になる例があります。
なお、監督者として暴力団関係者などは不適切であり、身元引受人として認められないとされています。

2.身元引受人がいることによるメリット

上記の通り、身元引受人は被疑者と生活を共にすることで再犯を防止し更生の手助けをしたり、捜査機関からの要請に応じて出頭を促したりする役割を担うことになあります。
このような身元引受人がいることで、被疑者には以下のようなメリットがあります。

(1) 早期の釈放や身体拘束の阻止が期待できる

軽微な事件、あるいはいわゆる微罪事件の場合、信頼できる身元引受人がいれば、逃亡のおそれがないとして逮捕後早期に釈放される可能性があります。
被疑者の捜査機関への出頭を確実に確保してくれることが期待できれば、以降は在宅事件として扱われるのが通常で、被疑者は自宅で生活しながら事件処理を受けることができます。

また、検察官が逮捕に続く勾留請求をしたとしても、裁判官は、逃亡のおそれの有無の判断に当たり、「信頼できる身元引受人がいれば、勾留の必要性はない」として勾留請求を却下することも考えられます。
つまり、確実な身元引受人の存在により、逮捕後に引き続き身柄拘束されるリスクを減らせるのです。

なお、勾留請求を却下するような場合、身元引受人は裁判官に対し「被疑者の身柄を引き受け、捜査機関からの出頭要請には必ず出頭させます」などとする身元引受書を提出するのが一般的です。

(2) 起訴後の保釈を許されるケースが増える

起訴された被疑者は引き続き被告人として勾留されますが、被告人は保釈制度を利用することで身体拘束から解放されます。

弁護人からの保釈請求に対し、信頼できる身元引受人が「被告人の身柄を引き受け、公判期日への出頭確保及び日常生活の監督を誓約していること」が確認できれば、裁判官は刑事訴訟法90条の「逃亡するおそれの程度」は低いとして、裁量により保釈を許す可能性が高くなります。

(3) 執行猶予付き判決の可能性が高くなる

裁判官は、判決の量刑を判断するに当たり、犯罪後の事情として、社会に復帰した場合の社会的境遇や家庭環境、家庭の愛情、保護能力、保護環境などについても考慮します。

その場合に、居住の安定度、土地に対する定着度、家庭の有無と結び付きの強弱、定職の有無のほか、弁護人が情状立証で訴える「確実なる身元引受人の有無・存在」が重きをなせば、事案によっては執行猶予付き判決の可能性が高くなります。

(4) 刑務所入りした後の仮釈放の要件になる

罪を犯して刑務所に入れられても、仮釈放が認められる場合があります。

仮釈放とは、受刑者の更生が見られた場合に、受刑者を刑務所から釈放する制度です(刑法28条)。
仮釈放の審査の場合、身元引受人の下に「帰住地」があることが前提となりますので、身元引受人の存在は仮釈放の条件になります。つまり、適切な身元引受人がいなければ、仮釈放は認められません。

なお、仮釈放後に身元引受人を辞退することは認められていません。

3.身元引受人を拒否・辞退したい場合

刑事手続の場合、身元引受人に誰を立てるかは、一般的には弁護士の判断によることになります。

もちろん、弁護士は事前に身元引受人になる予定の者に趣旨を説明して、その承諾を得ます。
よって、この打診の段階で、その申入れを拒否することは可能でしょう。

また、いったん、身元引受人になることを承諾したとしても、その後に、その承諾を撤回して辞退することも、もちろん可能なことです。

弁護士に身元引受人を拒否・辞退する旨を申し入れれば、あとは適切に対応してくれるでしょう。

なお、引き取りを拒否した場合、上記のようなメリットを受けられないことになり、被疑者の不利益は大きくなります。
よって、弁護士は別の人を身元引受人に立てて対処することになります。

4.身元引受人に関する悩みも泉総合法律事務所へ

被疑者(被告人)の将来のためにも、身元引受人がいかに重要かをご理解頂けたと思います。
身元引受人の存在が、今後の被疑者の人生を左右すると言っても過言ではありません。

とはいえ、被疑者の方は「家族は身元引受人になってくれるだろうか」「そもそも独り身なので身元引受人がいない」とお悩みになるケースがあるかもしれません。
また、ご家族や親戚の方も、身元引受人となるべきなのか、身元引受人になることで自分や家族に不利益はないか等、不安なことがあるかと思います。

身元引受人に関する悩みも、一人で悩まず、お早めに泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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