身近な法律の疑問 [公開日]2021年4月30日

刑務所と仮釈放について

罪を犯した場合、刑務所に入る可能性があるはご存知だと思います。

しかし、刑務所にはどのような種類があり、犯罪者はどのように分類されて刑務所に入るか等をご存知の方は少ないと思います。また、刑務所に入ると仮釈放される可能性がありますが、仮釈放の要件や仮釈放までの流れについても気になるでしょう。

この記事では、刑務所についてと、刑務所からの仮釈放について説明します。

1.刑務所とは

(1) 刑務所に行く可能性がある犯罪

刑務所とは、有罪判決(懲役刑、禁錮刑)が確定した犯罪者が収容される施設のことを言います。

例えば、窃盗罪(刑法235条)、傷害罪(刑法204条)、強制わいせつ罪(刑法177条)などには法定刑に懲役刑がありますので、同罪を犯した場合には、刑務所に収監されてしまう可能性があります。

一方で、過失傷害罪(刑法209条)等の一部の罪は、法定刑が罰金のみですので刑務所行きになることはありません。

(2) 刑務所の種類

刑務所に送られるといっても、罪を犯した全ての者が送られるというわけではありません。

被疑者が起訴された後、懲役刑や禁錮刑が確定した(刑の全部の執行猶予付き判決を除く)被告人だけが刑務所に送られることになります。実際には被害者との示談などにより不起訴となったり、起訴されても刑の全部に執行猶予が付いたりする場合が多いです。

受刑者については、政令(※「受刑者の集団編成に関する訓令」平成18年5月23日・法務省矯成訓第3314号)によって以下のように処遇指標が定められており、これに従って適当な刑務所に収監されることになります(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律86条1項)。

A 犯罪傾向の進んでいない者
B 犯罪傾向の進んでいる者
W(女子刑務所) 女子
F 日本人と異なる処遇を必要とする者
I< 禁錮受刑者
J(少年刑務所) 少年院への収容を必要としない少年
L 執行すべき刑期が10年以上である者
Y 可塑性に期待した矯正処遇を重点的に行うことが相当と認められる26歳未満の成人
M 精神上の疾病又は障害を有するため医療を主として行う刑事施設に収容する必要があると認められる者
P 身体上の疾病又は障害を有するため医療を主として行う刑事施設等に収容する必要があると認められる者

参考:刑事施設一覧

例えば、東京拘置所(※)はW、Aに分類されていますので、女子と犯罪傾向の進んでいない者が収監される可能性があります。

※拘置所は、本来、有罪判決の確定していない未決拘禁者を拘束するための施設ですが、それ以外にも死刑囚や懲役刑受刑者も入所しています。拘置所で懲役刑受刑者が服役するのは、死刑囚や未決拘禁者のための炊事、洗濯、清掃などの作業を担当させるためです。これを「本所(当所)執行受刑者」と呼びます。

(3) 刑務所の生活

受刑者の刑務所での生活は、各施設によって微妙に異なりますが、平日作業日のスケジュールは、およそ以下のようなものとなっています。

06:45 起床
部屋の掃除、洗面、人員点検

07:05 部屋での朝食(15分)
朝食後、部屋を出て整列し、大声で掛け声をかけながら行進して、作業場に向かいます。
更衣室で作業着に着替える際に、身体検査を行います。これは許可されていない物品を作業工場へ持ち込むことを阻止するためです。

08:00 刑務作業開始(10時ころ10分程度の喫茶休憩があります)

12:00 昼食時間(30~40分)

なお、作業中時間の途中に運動時間が必ずあり、着替えてグラウンドや体育館に向かう時間も含めると、50分程度を費やします。同様に作業時間中に、個別の面会や診察が行われることがあります。

16:40 刑務作業終了
着替えの際に身体検査が行われます。作業工場内からの物品持ち出しを阻止するためです。その後、また大声で掛け声をかけながら行進して、各自の部屋に帰ります。

入浴は冬期週2回、夏期週3回程度(但し、暑い時期には、別途週2回程度シャワーを浴びることができます)。入浴時間は工場毎にシフトが組まれており、早いシフトの場合、15時ころに作業を終了して入浴となります。

17:00 夕食

17:00〜21:00 自由時間
夕食後は自由時間となり、布団に寝転ぶなど好きな体勢でテレビや漫画を見たり、読書、手紙を書くなどができます。希望すればクラブ活動にも参加できます。

21:00 就寝

刑務所の生活についての詳しい説明は以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

刑務所の中の生活。家族・友人はどんな暮らしをしているの?

2.仮釈放とは?

罪を犯して刑務所に入れられても、仮釈放が認められる場合があります。

仮釈放とは、受刑者の更生が見られた場合に、受刑者を刑務所から釈放する制度です(刑法28条)。仮釈放された場合、必ず保護観察に付されます(更生保護法40条。以下、同法を「法」と略記)。

刑法28条
懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。

「行政官庁の処分」とは地方更生保護員会による決定であり(法39条1項)、その仮釈放の決定基準は「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則」という政令の第28条に具体化されています。(以下、同規則を「規則」と略記)に定められています。

規則28条
仮釈放を許す処分は、懲役又は禁錮の刑の執行のため刑事施設又は少年院に収容されている者について、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために相当であると認めるときにするものとする。ただし、社会の感情がこれを是認すると認められないときは、この限りでない。

仮釈放は刑期満了までとなります。

無期懲役刑の場合、刑期満了が無いため、一生保護観察に付されることになります。

3.仮釈放までの流れ

刑務所に収容されると、すぐに仮釈放の判断のために必要な情報が調査されて、刑務所から地方更生保護委員会と帰住地の保護観察所へ通知されます(規則7条1項柱書)。

本人を特定するための氏名・生年月日・本籍、仮釈放の要件や期間を算定するための刑の宣告日・確定日・執行の始期・終了日、仮釈放の適否を判断するための犯行内容・共犯者や被害者の状況・生活歴・心身の健康状況・帰住予定地・引受人・釈放後生活の計画などが通知される情報です(規則7条1項各号)。

その後、仮釈放を許可するために必要な期間が経過すると、受刑者等のいる刑事施設の長が、上記規則に該当し、仮釈放の要件を充足するか否かを判断します。要件を充足すると判断した場合、仮釈放の権限を有する地方更生保護委員会に対し申出を行います(法34条1項)。

申出を受けた地方更生保護委員会が仮釈放を許すか否かを判断します。その際には、受刑者と委員の面接を実施することが必要です(これを通称「本面接」と呼びます。

実務では、これに先立ち、通称「仮面接」と呼ばれる保護観察官との面接が実施されて、仮釈放を受ける意思の確認など、予備的な調査が行われます。仮面接の実施時期は受刑者や刑期によって様々です)。

また犯罪被害者等の意見を聞く場合があります(法37条1項、38条1項)。決定により仮釈放を認めた場合、仮釈放の日にちや帰住先を決定します(法39条1項、2項、3項)。

4.まとめ

上記のように、刑務所での生活は厳格なルール下の集団生活ですが、規則正しく、自由時間もあるため思ったよりも辛くなさそうだと思うかもしれません。また、満期前に仮釈放をされる可能性はあります。

しかし、刑務所に入ると出勤も通学もできませんから、ほとんどの場合で解雇・退学となり、その後の生活への影響は非常に大きいです。

まずは刑務所に入らないようにするためにも、罪を犯してしまった方はすぐに泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。刑事事件の解決実績豊富な弁護士が不起訴や執行猶予付きの判決獲得を目指し、全力でサポートいたします。

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