保釈金の金額はどうやって決める?
保釈とは、起訴されて身柄を拘束されている被告人に対し、被告人が一定の要件を充足しているときに、裁判所が、住居限定や保証金の納付を条件として、被告人の身柄の拘束を解く制度のことです。
そして、保釈金とは、保証金のことで、被告人の保釈中に、被告人が逃亡したり、証拠隠滅を図ったりすることを防ぐために、担保として裁判所に一旦預ける金銭のことです。
仮に被告人が逃亡したり、証拠隠滅やその他保釈条件に違反したりした場合には保釈金は没収されることになります。
被告人としては、当然保釈を望むことと思いますが、この場合、いくらの保釈金を預けることになるのか気になるでしょう。
保釈金の額はどう決めるのでしょうか?計算方法や基準・相場はあるのでしょうか?
今回は、保釈金の仕組みや金額の決め方について解説します。
1.保釈の種類と条件
保釈は起訴された場合の制度ですので、起訴される前には適用がありません。
また、保釈には、「権利保釈」と「裁量保釈」があります。
(1) 権利保釈
権利保釈とは、法定の除外事由のすべてに該当しない場合において、「当然の権利として認められる保釈」のことをいいます。
「法定の除外事由」とは、刑事訴訟法89条に定められています。具体的には、以下のとおりです。
- 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
- 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
- 被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
- 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
- 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
- 被告人の氏名又は住居が分からないとき。
つまり、保釈が認められるためには、通常これらのすべての条件に該当していない必要があります。
(2) 裁量保釈
裁量保釈とは、法定の除外事由のいずれかに該当する場合でも、さまざまな事情を考慮して保釈が相当であると裁判所が判断した場合に認められる保釈のことです。
実務では、被告人が権利保釈の上記1~3に当たる場合であっても、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことや、被告人が被害者に接触するおそれがないこと、を主張して、保釈を裁判所に申請することが多いといえます。
否認している場合でも保釈されることがありますが、その場合には保釈金はかなりの高額になると予想されます。
[参考記事]
裁量保釈とは?裁判官の裁量により保釈を許される可能性
なお、当然ですが権利保釈、裁量保釈のいずれでも保釈金は必要です。
また、どちらの保釈であっても保釈金の額に有為な差はないと思われます。
2.保釈金額はいくら?
保証金の額は、犯罪の性質及び情状、証拠の証明力並びに被告人の性格及び資産を考慮して、被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならないとされています(刑事訴訟法93条2項)。
これだけでは抽象的で、何のことか分かりにくいですが、実務的には決め方と相場があります。
(1) 保釈金の決め方の基準
例えば、被告事件が重大犯罪であり、犯情がよくなければ、保釈金は大きくなります。
さらに、被告人が、被告事件について、「自分はやっていない」等と事件を争っている場合、逃亡のおそれを疑われる可能性があります。そうすると、逃げないことの担保のために、保釈金は高額になりがちです。
また、被告人の年収が高かったり、手持ちの資産が多くあったりすれば、保釈金は高額になる傾向があります。
ちなみに、保釈決定を裁判官が出すにあたって、刑事弁護を担当している弁護士(弁護人)にどのくらいであれば保釈金を用意できるかを聞くことが通常ですが、これはあくまで参考として聞いているに過ぎません。
(2) 保釈金の相場
具体的には、覚せい剤使用や窃盗といった事件で、初犯で、共犯関係がなく、資産もあまりなければ、保釈金の相場は150万~300万くらいが考えられます。
詳しくは弁護士にお尋ねすることをお勧めします。
(3) お金が足りないときは立替が可能
保釈金が足りないというときは、日本保釈支援協会という団体から、お金を立て替えてもらえる可能性があります。
ただし、この場合でも、保釈金を立て替えてもらう手数料が協会に対し発生します。
また、全額立て替えてもらえるわけではなく、たとえば保釈金額が200万円の場合、協会から自己負担金として10万円ほどを指定されるということがあります。
日本保釈支援協会の立て替えを利用する場合には、刑事弁護を担当している弁護士(弁護人)に相談すれば、手続きを取ってもらえます。
ここでご説明した保釈金の立て替えという方法以外にも保釈保証書を利用した手続きもあります。どのような手続きをとるのが最も適切かについても、弁護士(弁護人)にご相談いただければと思います。
3.保釈金の払い方
保釈金を、自分や家族の財産から準備できたり、日本保釈支援協会から立て替えたりしてもらったりした場合は、弁護士が裁判所に保釈金の納付に行きます。
基本的には現金納付となっており、裁判所が発行する納付書に従って納付手続きをすることになります。
なお、事前に裁判所から保釈決定が出ていることが前提です。
4.保釈金の返金(返還・還付)
保釈金は、判決などで裁判が終わった場合、全額戻ってきます。
無罪はもちろん、実刑判決や執行猶予付き判決であっても同じです。
判決が出てから1週間以内に納付書に記載の口座(通常は刑事弁護を担当している弁護士(弁護人)の口座)に返還されます。
ただし、当然のことながら、被告人が裁判の途中で逃げてしまった場合や、保釈の際に定められた条件を守らなかった場合、保釈金は裁判所に没収されてしまい、返金されません。
保釈後の生活には十分ご注意ください。
[参考記事]
保釈許可決定後の生活の注意点〜保釈許可が水の泡にならないために〜
保釈中に条件に違反して保釈金を没取(ぼっしゅ)されてしまった場合、その保釈金は国庫に入ります。つまり、歳入として国のお金となるのです。
被害者に支払われるということはありません。
5.保釈してもらいたい時は弁護士に相談を
保釈されずに長期勾留されると、職場を解雇されたり、退学させられたり、家計にも大きな負担がかかってしまいます。
何より、家庭に戻ることで精神的にも大きな安心を得ることができます。
保釈金は裁判が終われば全額返還されるため、保釈金を支払うことにデメリットはありません。
もし、逮捕・起訴されてしまったが、保釈の手続きをしたいという方は、お早めに泉総合法律事務所にご相談ください。
なお、もし保釈請求を却下されてしまった場合でも、弁護士の協力の元の不服申し立てにより、再度の保釈請求が認められる可能性もあります。
[参考記事]
保釈請求を却下された!準抗告・抗告で不服申し立て
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