身元引受人(身柄引受人)がいないとどうなる?役割と拒否方法

刑事事件弁護

身元引受人(身柄引受人)がいないとどうなる?役割と拒否方法

【この記事を読んでわかる事】

  • 刑事事件における身元引受人の意味と役割
  • 身元引受人が存在することで被疑者が受けられるメリット
  • 身元引受人を拒否、辞退したい場合どうすればいいか

 

身内が刑事事件の被疑者になってしまい、ある日突然身元引受人を頼まれる、ということがあるかもしれません。

しかし、様々な理由で拒否、辞退したいことがあるでしょう。それは可能なのでしょうか。また、どのような手続を踏めばよいのでしょうか。

以下においては、刑事事件における身元引受人の意味、身元引受人の役割、身元引受人を拒否・辞退したい場合どうすればいいかなどを解説することとします。

なお、以下では、刑事訴訟法を「法」と略記します。

1.刑事事件における身元引受人とは

刑事事件における身元引受人とは、逮捕によって身柄を拘束された被疑者(被告人)が解放された後に、被疑者(被告人)の監督を行う人のことをいいます。

逮捕された被疑者や被告人は、刑事手続が進んでいく中で、身元引受人がいることによって、早期の釈放や保釈に繋がってくることもあります。

その場合には、身元引受人が、警察署などの刑事施設に被疑者(被告人)を迎えに行き、身柄解放後にその者を監督することになります。

身元引受人が被疑者(被告人)の監督を行う場合、生活を共にすることで再犯を防止し、更生の手助けをすることなどが一応考えられますが、監督の在り方の具体的な内容が決められているわけではありません。

身元引受人になれる人には、法律的な制約はありませんが、身柄解放後の被疑者(被告人)に対する監督者として、暴力団関係者などは不適切であり、身元引受人としては認められないとされています。

実務上の一般的な例としては、親族、雇用先の社長や上司が身元引受人になることが多いと思われ、場合によっては弁護士や友人も身元引受人になる例があります。

身元引受人になる予定の者が、「身元引受書」を提出しても、捜査機関や裁判所は、その者が身元引受人として適切か否かを判断するだけで、その申請を許可したり、不許可にしたりするものではありません(ただし、刑事手続ではありませんが、仮釈放後の身元引受人については、仮釈放の条件になっていますので、後記のとおり、許可・不許可の問題があります。)。

なお、刑事手続において、勾留請求却下、保釈許可、執行猶予付き判決の裁判結果などは、身元引受人がいなければ得られないわけではありません。

しかし、上記手続において、身元引受人の有無・存在は、絶対的な要件でないとしても、身元引受人がいなければ、被疑者(被告人)が身柄拘束から解放されない可能性があることも事実ですので、どのような人を身元引受人に立てるかも含め、刑事弁護に造詣の深い弁護士にお願いするのが望ましいといえます。

2.身元引受人がいることでどのような意味があるのか

(1) 逮捕時の場合

軽微な事件、あるいはいわゆる微罪事件の場合、信頼できる身元引受人がいれば、逮捕後早期に釈放される可能性があります。

(2) 勾留時の場合

検察官が勾留請求したとしても、裁判官は、信頼できる身元引受人がいれば、逃亡のおそれの有無の判断に当たり、生活不安定による所在不明の可能性が低いとして(勾留の必要性がないとして)勾留請求を却下することも考えられます。

つまり、確実な身元引受人の存在により、引き続きの身柄拘束を阻止できる可能性があります。

なお、勾留請求を却下するような場合、裁判官は、身元引受人から「被疑者の身柄を引き受け、捜査機関からの出頭要請には必ず出頭させます」などとする身元引受書を出させるのが一般的になっています。

(3) 起訴時の場合

弁護人からの保釈請求に対し、検察官が「保釈不相当」の意見を述べたとしても、裁判官は、信頼できる身元引受人が「被告人の身柄を引き受け、公判期日への出頭確保及び日常生活の監督を誓約していること」が確認できれば、法90条の「逃亡するおそれの程度」は低いとして、あるいは法90条の「その他の事情」に含まれるとして、裁量により保釈を許す可能性が高くなります。

(4) 判決時の場合

裁判官は、判決の量刑を判断するに当たり、犯罪後の事情として、社会に復帰した場合の社会的境遇や家庭環境、家庭の愛情、保護能力、保護環境などについても考慮しますが、その場合に、居住の安定度、土地に対する定着度、家庭の有無と結び付きの強弱、定職の有無のほか、弁護人が情状立証で訴える「確実なる身元引受人の有無・存在」が重きをなせば、実刑か否か微妙な事案では、執行猶予付き判決の可能性が高くなります。

(5) 在宅事件の場合

捜査機関としては、取調べに確実に応じてもらえれば、被疑者を逮捕するまでの必要のない事案もあると考えられますから、信頼できる身元引受人によって、被疑者の捜査機関への出頭を確実に確保してくれることが期待できれば、在宅事件になる可能性が高まるといえます。

(6) 仮釈放時の場合

仮釈放の審査の場合、身元引受人の下に「帰住地」があることが前提となりますので、身元引受人の存在は、仮釈放の条件になります。

適切な身元引受人がいなければ、仮釈放は認められません。

3.身元引受人の役割

(1) 逮捕後釈放、あるいは勾留請求却下後の場合

身元引受人は、釈放後の被疑者を監督し、捜査機関からの出頭要請に応じて、被疑者を捜査機関に出頭させる役割を担いますが、法的な責任を負うものではありません。

しかし、被疑者が出頭要請に応じない場合に、「罪証隠滅・逃亡のおそれ」などといった新事情が生じ、被疑者を身柄拘束した上で捜査を行う必要性が高まったと判断されれば、再逮捕の可能性が出てくる場合もあります。

(2) 保釈後の場合

身元引受人は、被告人を公判期日に出頭させる役割を担いますが、被告人が、正当な理由がなく公判期日に出頭しなかったり、逃走したり、制限住居の定めに従わなかったり、旅行制限に違反したりしたとしても、法的な責任を負うものではありません。

なお、被告人が、保釈条件に違反した場合には、保釈取消しの可能性が出てきます。

(3) 執行猶予付き判決後の場合

身元引受人は、被告人が社会内で更生できるように監督・支援する役割を担いますが、仮に、被告人が再犯したりして更生できなかったとしても、法的な責任を負うものではありません。

(4) 在宅の場合

身元引受人は、被疑者を監督し、捜査機関からの出頭要請に応じて、被疑者を捜査機関に出頭させる役割を担いますが、法的な責任を負うものではありません。

しかし、被疑者が出頭要請に応じない場合に、「罪証隠滅・逃亡のおそれ」などといった事情が生じ、被疑者を身柄拘束した上で捜査を行う必要性が高まったと判断されれば、逮捕の可能性が出てくる場合もあります。

(5) 仮釈放の場合

仮釈放になった人は、刑期の満期まで間、保護観察所の監視下におかれますが、身元引受人は、その間、仮釈放になった人の生活の面倒を見るという役割を担います。

しかし、仮釈放になった人が、遵守事項に違反するなどして、仮釈放が取り消されたとしても、身元引受人が法的な責任を負うものではありません

4.身元引受人を拒否、辞退したい

刑事手続の場合、身元引受人に誰を立てるかは、一般的には、弁護士の判断によることになります。

弁護士は、捜査機関や裁判所に対し、身元引受人の「身元引受書」を提出する場合、事前に、身元引受人になる予定の者に趣旨を説明して、その承諾を得ていると考えられますから、打診の段階でその申入れを拒否することは可能といえます。

また、いったん、身元引受人になることを承諾したとしても、その後に、その承諾を撤回して辞退することも、もちろん可能なことです。

上記の場合、弁護士は、別な人を身元引受人に立てて、対処することになります。

なお、何らかの事情で、捜査機関からの要請などで、既に身元引受人になっている場合には、早めに被疑者本人や弁護士にその旨を伝えることが大事なことになります。

ただ、仮釈放の場合には、身元引受人が誰であるかは、仮釈放の条件になっています。

したがって、身元引受人になることを拒否なり辞退すれば、身元引受人として不許可になりますので、新たな身元引受人が許可されない限り、仮釈放が認められないことになります。

しかし、仮釈放後に身元引受人を辞退することは、認められていませんので、具体的な理由・内容については、保護観察所に相談することになります。

5.身元引受人に関する悩みも泉総合法律事務所へ

被疑者(被告人)の将来のためにも、身元引受人がいかに重要かをご理解頂けたと思います。

身元引受人の存在が被疑者の人生を左右すると言っても過言ではありません。身元引受人に関する悩みも、一人で悩まずお早めに泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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