刑事事件弁護 [公開日]

裁量保釈とは?裁判官の裁量により保釈を許される可能性

裁量保釈とは?裁判官の裁量により保釈を許される可能性

【この記事を読んでわかる事】

  • 当初保釈が認められなくても「裁量保釈」が認められれば保釈される
  • 起訴されてしまった場合、裁量保釈を認めてもらう方法について
  • 過去に最高裁が裁量保釈を認めた事例

 

刑事事件で逮捕された場合には、逮捕に続き勾留されることが多いわけですが、中には、身柄拘束のまま起訴される事件もあります。

身柄拘束のまま起訴された場合、被告人を解放する手続として「保釈制度」があります。保釈には、権利保釈(必要的保釈)、裁量保釈(職権保釈、任意的保釈)、義務的保釈があります。

裁判所は、保釈請求があった場合、まず権利保釈に当たるかどうかを判断し、当たらないと認められる場合には、進んで裁量により保釈を許すことができるかどうか、その当否についても判断するというのが実務上の取扱いとなっています。

しかも、権利保釈には該当しないが裁量保釈に当たるとして保釈される事例は、実務上も多数に上っているのが現状となっています。

そこで、以下においては、裁量保釈の趣旨、裁量保釈の必要性があることを主張する方法、裁量保釈の具体的検討、最高裁が裁量保釈が認められると判断した事例などに触れながら、裁量保釈について解説することとします。

なお、以下では、刑事訴訟法は「法」と略記します。

1.裁量保釈の趣旨

法90条は、「裁判所は、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。」と規定し、裁量保釈の判断に当たっての考慮事情を明記しています。

したがって、裁判所は、保釈の請求があった場合において、法89条1号から6号までのいずれかの事由に該当して権利保釈が認められないときも、「適当と認めるとき」には法90条によって裁量で保釈を許可することができます。

例えば、形式上は法89条1号に該当する場合であっても、当該犯罪の罪質、犯情、被告人の経歴、身分、家族関係等から保釈保証金によって出頭確保が期待でき、身柄拘束による不利益が大きい場合には、裁量保釈が認められることもあり得ます。

また、法89条3号に該当する場合でも、その常習性の程度が弱く、被告人の経歴、家族関係、前科の程度から保釈保証金によって逃亡の防止が可能と見込まれる場合には、裁量保釈が認められることも少なくないのです。

そして、法90条は、裁判所が裁量保釈を許可し得る場合について、上記のように、「適当認めるとき」の考慮事情を具体的に明示して、保釈の許否の判断の具体的指標を示しているのです。

2.裁量保釈の必要性があることを主張する方法

(1) 面談の申出

裁判官(第1回公判期日後は「裁判所」となります)が保釈の許否を決する前に、面談を求めることが考えられます。

裁判官が、弁護士から事情を聴くのは、事実の取調べに当たります(法43条3項)。

弁護士は、裁判官との面接を求め、その面接を通じて、保証金額の希望を伝えたり、望ましい制限住居、適切な身柄引受人の存在などを訴えたり、また、裁判官からの事情聴取に応じるなどして、裁量保釈の必要性に関する判断材料を提供するのが望ましいといえます。

(2) 準抗告等の申立て

保釈の裁判を争う方法は、準抗告(法429条1項2号)又は抗告(法419条、420条2項)です。

権利保釈除外事由があるとして、保釈請求が却下された場合でも、裁量保釈が許されるとして、準抗告審又は抗告審(場合によっては特別抗告審)で取り消されている例もあるわけですから、弁護士としては、積極的に、保釈請求却下の裁判の取消しを求めて、準抗告又は抗告(棄却された場合は特別抗告[法433条])の申立てをすべきです。

3.法から見る裁量保釈の具体的検討・要件

法から見る裁量保釈の具体的検討・要件

以下、法90条に明記されている考慮事情に即して検討してみましょう。

ご興味のある方は、参考までにご一読ください。

「保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度」と「身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情」との関係

前者と後者は、「のほか、」との文言で接続されています。

これは、裁量保釈の判断に当たって、まず、判断の基礎となる事情として、勾留の法目的に直接関連する前者の事情を考慮し、その上で、後者の事情について、個々の事案における具体的状況に応じて考慮する趣旨と解されています。

「保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度」の意味

この明示部分は、身体拘束処分の法目的に直接関係するものであり、保釈を許可されて身体拘束が解かれた場合に、被告人が逃亡し又は罪証を隠滅する具体的・現実的可能性の程度を意味し、その程度が大きいほど保釈を不許可とする方向に作用することになります。

もとより、単なる抽象的可能性では、「おそれ」があるとさえいえないと解されています。

「逃亡するおそれの程度」については、所在不明となる具体的・現実的な可能性があるのかという観点から検討されることになります。

問題は、「罪証を隠滅するおそれの程度」です。

裁判員裁判の施行に伴い、裁判所関係者から、

「法89条4号の『罪証隠滅のおそれ』について、第1に、従来の判断基準が類型化抽象化していた可能性があり、より具体的、実質的な判断をすべきである、第2に、罪証隠滅の対象は、犯罪の成否に関わる事実だけでなく、量刑上重要な事実にまで拡大されてきたが、重要な事実として真に罪証隠滅の対象に該当するかどうかをより慎重に判断する必要があり、それに該当するとしても、犯罪の成否に関わる場合とは重要度が異なるから、主観的可能性(意図)、客観的可能性(余地)の判断をより具体的、実質的かつ厳密に行うべきである」

「否認事件であっても、予想される罪証隠滅行為の態様を考え、被告人がそのような行為に出る現実的具体的可能性があるか、そのような罪証隠滅行為に出たとして実効性があるのかどうかを、具体的に検討すべきであって、否認又は黙秘の態度から直ちに罪証隠滅のおそれを肯定するようなことをしてはならない

旨提言されており、法90条の「罪証を隠滅するおそれの程度」の判断においても、この提言の趣旨が推し進められるのが望ましいとされています。

そうしますと、法89条4号の「罪証隠滅のおそれ」については、罪証隠滅の対象となる事実は何か、予想される行為が罪証隠滅行為と評価できるか、罪証隠滅行為と評価される行動が客観的に可能な状況にあり、実効性もあるか、罪証隠滅行為の意図がどの程度認められるか、などの点を具体的、実質的に判断することになると考えられます。

そして、例えば、罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由があるとはいえ、その程度が低く、保釈保証金の没取や条件違反を理由とする保釈取消しの威嚇によって罪証隠滅を防止し得る場合は、裁量保釈を許す方向で考慮されるといえましょう。

「身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度」の意味

この明示部分は、保釈が許可されずに身体拘束が継続された場合に、被告人がそれにより受ける不利益の程度を意味し、その程度が大きいほど保釈を許可する方向に作用することになります。

「健康上・・の不利益」の意味

例えば、被告人が疾病に罹患しており、身体拘束の継続によりそれが重篤化するおそれがある場合、あるいは、被告人の医療の必要性など勾留執行停止が認められるような場合に勾留執行停止に代えて保釈を許可するような場合などが、考慮される上記不利益に当たると思われます。

「経済上・・の不利益」の意味

例えば、被告人が自営業者で事業の資金繰りが極めて悪化しており、経営破綻を回避するため、被告人自らが関係先との交渉等に従事することが不可欠である場合などが、考慮される上記不利益に当たると思われます。

「社会生活上・・の不利益」の意味

例えば、被告人が大学入学を目指して受験勉強中であり、その入学試験の期日が目前に迫っている場合などが、考慮される上記不利益に当たると思われます。

「防御の準備上の不利益」の意味

例えば、関係者が多数で証拠も膨大であり、争点が多岐にわたるなど複雑困難な裁判員裁判の否認事件において、被告人本人が弁護人との打合せを十分な時間をかけて綿密かつ機動的に行わなければ、連日開廷の審理に備えることができない場合などが、考慮される上記不利益に当たると思われます。

「その他の事情」の意味

例えば、被告人が、被害者等の事件関係者を逆恨みするような事情もなく、したがってお礼参りに及ぶおそれがあるとは考えられない場合、あるいは、被告人に介護又は養育すべき親族がおり、被告人自身がこれを行わなければ、その親族が生活できなくなるような影響が生じる場合などが、考慮される上記事情に当たると思われます。

もとより、上記の不利益があるからといって、直ちに裁量保釈が認められるわけではないとされています。「保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度」のほか、上記のような不利益の程度等を考慮勘案して、裁量保釈を認めるのが適当であるか判断されることになります。

結局、当該事件の軽重、事案の性質、内容、情状、被告人の経歴、行状、性格、前科、前歴、家族関係、健康状態、公判審理の状況、勾留期間、共犯者がいる場合には共犯者の状況等の諸般の事情も総合的に考慮し、法90条の趣旨に照らして、身柄拘束の必要性の程度と保釈を必要とする事情を比較検討し、合理的な裁量によって判断されることになるといえます。

4.最高裁が裁量保釈が認められると判断した事例

最高裁が裁量保釈が認められると判断した事例

①最決平14.8.19裁判集刑事282・1

本決定は、「被告人が、Aと共謀の上、BがAのサーフボードに接触して傷を付けたなどと因縁を付け、Bから金品を喝取しようと企て、同人に対し、その顔面などに暴行を加えた上、修理費用等を要求するなどして、同人から現金5000円等を喝取した」(公訴事実の要旨)という事案につき、被告人の保釈を許可した原々審の裁判を取り消して保釈請求を却下した準抗告審の原決定を特別抗告審として取り消したものです。

本決定の要旨は、

「本件は、サーフィン中のBがAのサーフボードに誤って接触し傷を付けた偶発的な事案であること、関係者の供述に若干の食い違いがあるものの、大筋において供述が一致しているとみることも可能であること、被告人に前科前歴がなく、社会人として安定した職業、住居、家庭を有すること、AとBとの間で、Aが損害賠償として14万円をBに支払い、Bに対する修理代金債権を放棄する、BがAに対し宥恕の意思を表明するなどを内容とする示談が成立したこと等の事情がある。

このような本件事案の性質、その証拠関係、被告人の身上経歴、示談の成立状況などに照らすと、原決定には、裁量の範囲を逸脱し、法90条の解釈適用を誤った違法がある。」とした上、「保釈金額を500万円とし、指定条件を付して、被告人の保釈を許可する。」

 

というものです。

②最決平17.3.9裁判集刑事287・203

本決定は、「被告人が、Aと共謀の上、みだりに、大麻約1.153グラムを所持した」(公訴事実の要旨)という事案につき、保釈請求を却下した原々審の裁判及びこれを是認した準抗告審の原決定を特別抗告審としていずれも取り消したものです。

本決定の要旨は、

「大麻所持で現行犯逮捕されたAは、被告人との共謀による所持である旨供述し、被告人自身も、勾留質問、検察官の弁解録取の際には犯行の概略を認めて調書に署名指印したこと、被告人に前科前歴がなく、家族と同居し、芸術大学を目指して受験勉強中であり、現在、大学入試の期日が目前に迫っていること等の事情がある。

このような本件事案の性質、その証拠関係、被告人の身上経歴、生活状況などに照らすと、原々審の裁判及び原決定には、裁量の範囲を逸脱し、法90条の解釈適用を誤った違法がある。」とした上、「保釈金額を150万円とし、『被告人は、その弁護人を介する場合を除き、その方法のいかんを問わず、Aと一切の接触をもってはならない。』などの条件を付して、被告人の保釈を許可する。」

 

というものです。

③最決平24.10.26裁判集刑事308・481

本決定は、「被告人が、12歳の女児に対し、背後から抱きつき、着衣の上から左乳房を右手で触って押さえつけるなどのわいせつな行為をした」(公訴事実の要旨)という事案につき、被告人の保釈を許可した原々審の裁判を取り消して保釈請求を却下した準抗告審の原決定を特別抗告審として取り消したものです。

本決定の要旨は、

「被告人には法89条3号及び4号に該当する事由があり、常習性も強い事案であるが、被告人は、捜査段階から公訴事実を認めており、弁護人も公訴事実を争わない予定であること、被告人は、本件と同種の5件の強制わいせつ事件(先行事件)でも、既に起訴されており、本件はそれらの事件の間に行われた事案であること、被告人は、先行事件の公判で、先行事件のすべてを認め、検察官請求の証拠を全部同意し、その取調べが終了していること、本件の原々審が被告人の保釈を許可したのと同日付けで、先行事件の公判裁判所も先行事件につき保証金額を各75万円(合計375万円)と定めて保釈を許可していること(各保釈許可決定は、抗告棄却により、いずれも確定している。)、追起訴の予定はないこと、両親らが被告人の身柄を引き受け、公判への出頭確保と日常生活の監督を誓約していること、被告人は、釈放後は本件犯行場所から離れた父親の単身赴任先で両親と同居して生活する予定であること、被告人は、現在勾留先で受けている臨床心理士のカウンセリングを今後も受け続ける意向を示していること、被告人に前科前歴がないこと等の事情が認められる。

このような本件事案の性質や証拠関係、先行事件の審理経過、被告人の身上等に照らすと、保証金額を75万円とし、本件の被害者及びその関係者との接触禁止などの条件を付して、被告人の保釈を許可した原々審の裁判は、その裁量の範囲を逸脱したものとはいえず、不当ともいえないから、これを取り消して保釈請求を却下した原決定には、法90条の解釈適用を誤った違法がある。」

 

というものです。

④最決平26.3.25裁判集刑事313・319、判時2221・129

本決定は、「被告人が、2回にわたり、21歳と25歳の女性に対し、睡眠導入作用を有する薬物を混入した料理を食べさせ、その薬理作用により抗拒不能の状態に陥らせて姦淫した」(公訴事実の要旨)という事案につき、被告人の保釈を許可した第1審裁判所の原々決定を取り消した抗告審の原決定(本件には、法89条1号、3号に該当する事由があり、また、被告人が重要な情状事実について自己に有利に罪証を隠滅するおそれが否定できないから、同条4号に該当する事由も認められ、本件事案の悪質性、重大性、常習性に鑑みれば、裁量保釈は相当でない)を特別抗告審として取り消したものです。

本決定の要旨は、

「被告人には法89条1号、3号及び4号に該当する事由があるが、被告人は、原々決定までに、本件と併合審理されている同態様の準強姦又はその未遂被告事件5件(併合事件というが、これらの事件では勾留されていない)を含め、公訴事実を全て認め、検察官請求の証拠を全部同意し、その取調べが終わっていること、追起訴の予定はないこと、被告人の妻が被告人の身柄を引き受け、公判への出頭確保と日常生活の監督を誓約していること、被告人に前科前歴がないこと等の事情が認められる。

このような本件事案の性質や証拠関係、併合事件を含む審理経過、被告人の身上等に照らすと、保証金額を合計1500万円とし、本件及び併合事件の被害者らとの接触禁止などの条件を付して、被告人の保釈を許可した原々決定は、その裁量の範囲を逸脱したものとはいえず、不当ともいえないから、これを取り消して保釈請求を却下した原決定には、法90条の解釈適用を誤った違法がある。」

 

というものです。

⑤最決平26.11.18刑集68・9・1020、判時2245・124

本決定は、「被告人は、家庭用電気製品の販売等を目的とする会社の取締役であったが、LED照明製造会社等の代表者ら4名と共謀の上、被害会社から仕入代金の先払い名目で金銭をだまし取ろうと考え、被害会社にLED照明を製造して納入するように装い、注文書を交付するなどして、合計2億3000万円余りを販売会社名義の普通預金口座に振込送金させた」(公訴事実の要旨)という事案につき、被告人の保釈を許可した第1審裁判所(被告人は、実際に商品が納品される通常取引と認識し、被告人自身が述べたとされる欺罔文言を述べてもいないし、共犯者らとの共謀、欺罔行為を否認していた)の原々決定を取り消した抗告審の原決定(被告人が共謀も欺罔行為も争っていて、共犯者らとの通謀、あるいは関係者らに対する働き掛けなどによる、罪証隠滅のおそれが相当に強度であるから、未だ被害者1名の尋問さえ終了していない現段階で、被告人を保釈することは第1審の裁量の範囲を超えたものである)を特別抗告審として取り消したものです。

本決定の要旨は、

「原々審は、最重要証人である被害会社の担当者の主尋問が終了した第10回公判期日終了後に、保証金額を300万円とし、共犯者その他の関係者との接触禁止等の条件を付した上で被告人の保釈を許可した。原々審の意見書によれば、原々審は、共犯者らの主張の相違等に照らせば実効性ある罪証隠滅行為に及ぶ現実的危険性は高くなく、一連の架空取引において被告人と同様の立場であった共犯者は既に執行猶予付き判決が確定している中、被告人の勾留が相当期間に及んでいることを踏まえて、保釈を許可したものと理解される。」とし、

「抗告審としては、受訴裁判所の判断が、委ねられた裁量の範囲を逸脱していないかどうか、すなわち、不合理でないかどうかを審査すべきであり、受訴裁判所の判断を覆す場合には、その判断が不合理であることを具体的に示す必要がある」と判示した上で、

「原決定は、原々審の判断が不合理であることを具体的に示していない」とし、次いで、「本件の審理経過等に鑑みると、保釈保証金額を300万円とし、保釈条件を付した上で保釈を許可した原々審の判断が不合理であるとはいえず、そのような同決定を取り消して保釈請求を却下した原決定には法90条、426条の解釈適用を誤った違法がある。」

 

というものです。

⑥最決平27.4.15裁判集刑事316・143、判時2260・129

本決定は、「被告人は、柔道整復師の資格を有し、予備校理事長の職にあったが、18歳の予備校女子生徒に対し、同女が被告人の学習指導を受ける立場で抗拒不能状態にあることに乗じ、施術を装い、その胸をもみ、膣内に指を挿入するなどのわいせつな行為をした」(公訴事実の要旨)という事案につき、被告人の保釈を許可した第1審裁判所の原々決定を取り消した抗告審の原決定を特別抗告審として取り消したものです。

本決定の要旨は、

「被告人が公訴事実を全面的に争い、被害者の証人尋問が実施されて公訴事実に沿う証言がされたところ、その後の審理予定につき、弁護人は、被告人質問のほか、犯行場所の使用状況等に関し、被害者証言を弾劾する趣旨で、本件当時、本件予備校に通っていた元生徒1名の証人尋問を請求する方針を示している。原々決定は、保証金額を300万円と定め、被害者、前記元生徒及び本件予備校関係者らとの接触を禁止するなどの条件を付した上、被告人の保釈を許可したが、原決定は、弁護人が請求を予定している元生徒の証人尋問が未了であり、本件予備校理事長の職にあった被告人が、前記元生徒ら関係者に働き掛けるなどして罪証を隠滅することは容易でその実効性も高いと指摘し、原々決定を取り消した。

しかしながら、原々審の意見書によれば、原々審が受訴裁判所として、被害者の証人尋問が終了したという審理状況やその結果を踏まえ、罪証隠滅の可能性、実効性の程度を具体的に考慮した上で、現時点では被告人による罪証隠滅のおそれはそれほど高度のものとはいえず、保釈の必要性、被告人に前科がないこと、逃亡のおそれが高いとはいえないことなども勘案して裁量保釈を許可した判断は、不合理なものとはいえず、原決定は、原々審の判断が不合理であることを具体的に示していない」と説示し、「原々決定を裁量の範囲を超えたものとして取り消し、保釈請求を却下した原決定には、法90条、426条の解釈適用を誤った違法がある。」

 

というものです。

5.まとめ

逮捕後、勾留のまま起訴された場合、身柄拘束の状態が続きます。起訴されてしまった場合、保釈許可、あるいは、保釈請求却下の裁判がなされてもその取消しを求めるには、法律のプロである弁護士に依頼するべきです。

また、それより早く、逮捕された直後に弁護士へ刑事弁護を依頼すれば、不起訴を獲得できる可能性があります。

保釈請求を始めとした刑事弁護は、刑事事件の弁護実績豊富な泉総合法律事務所にご依頼ください。

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