性犯罪 [公開日]2018年4月21日[更新日]2019年3月7日

強制性交等罪とは?強姦罪はどのように改正されたか?わかりやすく解説

性犯罪を厳罰化する刑法改正案が、2017年6月23日に公布され、同年7月13日に施行されました。

110年ぶりの刑法の大幅改正となりますが、特に、罪名が変更された「強制性交等罪(きょうせいせいこうとうざい)」や、「準強制性交等罪」に注目が集まっています。

では、強制性交等罪・準強制性交等罪は、具体的にどのような内容となっているのでしょうか?

今回は、強制性交等罪・準強制性交等罪を中心に、性犯罪の扱いがどう変わったかを弁護士がご説明します。

【2017年の刑法改正のポイント】

  • 「強姦罪」3年以上の有期懲役
    →「強制性交等罪」5年以上の有期懲役
  • 「強姦致死傷罪・準強姦致死傷罪」無期又は5年以上の有期懲役
    →「強制性交等致死傷罪・準強制性交等致死傷罪」無期又は6年以上の有期懲役
  • 強姦及び準強姦の罪は親告罪
    →「強姦致死傷罪・準強姦致死傷罪」非親告罪(被害者の告訴がなくても起訴できる)

1.強制性交等罪とは

改正刑法177条 強制性交等罪
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

改正前の刑法(177条)が「女子を姦淫した」と規定していたのに対し、改正刑法では処罰対象を拡張し、被害者の性別を問わず、人に対して「性交、肛門性交又は口腔性交をした」と改めました。

罪の主体・客体の両方に男女とも該当し得ることとなったことから、罪名の名称も「強姦罪」から「強制性交等罪」へと改められることになりました。

【要件の検討】

改正前刑法177条の、「暴行又は脅迫を用いて」という要件ですが、最高裁判例において、「その暴行又は脅迫の行為は、単にそれのみを取り上げて観察すれば右の程度(抗拒を著しく困難ならしめる程度)には達しないと認められるようなものであっても、その相手方の年齢、性別、素行、経歴等やそれがなされた時間、場所の四囲の環境その他具体的事情の如何と相伴って、相手方の抗拒を不能にし又はこれを著しく困難ならしめるものであれば足りると解すべきである。」(最決昭33.6.6)とされています。

この判例の趣旨から、ここでいう「暴行又は脅迫」とは、反抗を著しく困難ならしめる程度のもので足りると解されています。

また、「性交等をした」に関しては、性別による犯罪の成否の差異を解消するという観点から、「行為者が、被害者の膣内、肛門内又は口腔内に自己又は第三者の陰茎を入れることに加え、自己又は第三者の膣内、肛門内又は口腔内に被害者の陰茎を入れる行為も含まれる」と解されています。

2.準強制性交等罪とは

改正刑法178条2項 準強制性交等罪
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

強制性交等罪と同様に、改正前刑法(178条2項)が「女子を姦淫した」と規定していたのに対し、改正刑法は処罰対象を拡張し、被害者の性別を問わず、人に対して性交等をしたと改めました。

また、強姦罪から「強制性交等罪」への罪名の変更を受けて、「準強姦罪」も「準強制性交等罪」に罪名が改められています。

【要件の検討】

「心神喪失」とは、精神の障害によって正常な判断能力を失っている状態をいい、熟睡、泥酔・麻酔状態、高度の精神病等がこれに当たります。また、「抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由によって心理的、物理的に抵抗することが不能又は著しく困難な状態をいい、恐怖・驚愕・錯誤等によって行動の自由を失っているなどがこれに当たります。

そして、「心神喪失・抗拒不能に乗じ」とは、既存の状態を利用することをいい、泥酔している女性を姦淫すること、深夜夫と誤信させて姦淫することなどがこれに当たります。
また、「心神喪失・抗拒不能にさせ」る方法には、麻酔、催眠術、欺罔などがあります。

「性交等をした」については、強制性交等罪で説明したとおりです。

3.非親告罪化

改正前の刑法では、強制わいせつ及び準強制わいせつの罪、強姦及び準強姦の罪は、被害者の告訴がなければ起訴できませんでした(親告罪)。

しかし、改正後は、「強制わいせつ及び準強制わいせつの罪」、「強制性交等及び準強制性交等の罪」、新設「監護者わいせつ及び監護者性交等の罪」については、被害者の精神的負担を減らすため、被害者の告訴がなくても起訴できるように改められました(非親告罪化)。

親告罪について詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。

[参考記事]

親告罪とは?不起訴に必要なのは示談交渉。弁護士にお任せください

4.強制性交等罪の量刑

強制性交等罪・準強制性交等罪といった性犯罪は、被害者の人格や尊厳を著しく侵害するという実態を持つ犯罪です。
そのような観点から、肛門性交や口腔性交も、膣性交と同等に処罰するものとして、法改正がなされたものと理解されています。

そして、性交という行為について、態様の違いのみで量刑に差をつけることは法改正の趣旨に反することになります。基本的には、性交も肛門性交も口腔性交も、量刑上、同等の刑罰評価が想定されているというべきです。

法定刑については、(性犯罪の悪質性及び重大性に比して、改正前刑法の強姦罪の刑罰が国民意識と大きく異なり低いということから、)強制性交等罪・準強制性交等罪の法定刑の下限が懲役3年から懲役5年に引上げられました。

また、強姦致死傷罪は「強制性交等致死傷罪」とされ、法定刑下限も懲役5年から懲役6年となりました。

なお、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会では、性同一性障害者が受けた性別適合手術によって形成された膣又は陰茎に対する行為についても、(個別具体的な判断によるものの)強制性交等罪・準強制性交等罪を構成し得ることが確認されています。

どれも、性犯罪に対する社会一般の評価を反映した結果、厳しい量刑になったと考えられるでしょう。

5.強制性交等罪による逮捕後の流れ

被疑者は、逮捕されると最大72時間自由を制限されます。
通常、逮捕から48時間以内に検察官に送致され、検察官は、被疑者を受け取ってから24時間以内に裁判官に対し、より長期の身体拘束を求める「勾留請求」をします。

裁判官は、検察官から勾留の請求があると、勾留質問を行って、その当否を審査します。
通常、強制性交等罪・準強制性交等罪を犯した疑いがあれば、重い犯罪ですから、住居不定、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのいずれかに当たり、捜査を進める上で身柄の拘束が必要なときに、被疑者の勾留を認めます。

なお、勾留期間は原則10日間ですが、事案が複雑、共犯事件、証拠収集が困難など、やむを得ない場合には、更に10日間以内の延長が認めることもあります。
さらに、起訴された場合には、釈放・保釈が認められない限り、身体の拘束が続くことになります。

検察官ははっきりとした証拠が固まってから起訴をするため、起訴後の有罪率は99%とも言われています。有罪判決はもちろん、罰金刑となった場合でも、被疑者の方には「前科」がつくことになります。

また、身体拘束が長引けば、無断欠勤として会社を解雇されたり、退学させられたりしてしまうかもしれません。

前科を免れるためには、逮捕後にいち早く被害者の方と示談をすることが大切です(被害者と示談交渉ができるのは弁護士のみです)。
重い性犯罪の示談は大変困難ですが、弁護士のサポート上で反省の意をしっかりと示すことで、被害者の方も示談に応じてくださることがあります。

[事例 125] 以前の強姦罪の有罪判決で執行猶予中の強姦罪→不起訴処分

また、釈放・保釈のための手続きでも、刑事事件に強い弁護士による適切な支援が必要不可欠でしょう。

逮捕後の流れに関して詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。

[参考記事]

警察に逮捕されたらどうなるのか?

6.性犯罪の相談は泉総合法律事務所の弁護士へ

今回の刑法改正の特徴といえるのは、強制的な性交等により、身体的、精神的に重大な苦痛を伴う被害を受けることは、被害者の性別によって差はないと考えられることから、罪の主体、客体の両方に男女とも該当し得ることとなった点です。

今後は、教育現場における性暴力防止に向けての取組、性犯罪被害に対する被害者支援、刑事裁判における被害者支援の充実なども課題となってくるでしょう。

強制性交等・準強制性交等は、重い性犯罪であり、決して行ってはならないものです。しかし、もし罪を犯してしまった場合には、早急に泉総合法律事務所までご相談ください。

泉総合法律事務所は、強制性交等などの重い性犯罪の刑事弁護についても経験豊富です。被害届を出されそう、逮捕されてしまうのではないか、前科をつけたくない、と不安になっているご本人はもちろん、家族が逮捕されるなどした場合にも、どうぞお早めにご相談・ご依頼ください。

[事例 130] 合コンで知り合った未成年の女性に強制性交等→示談・被害届不提出を確約
[事例 131] 知人女性に強制性交等→示談・被害届不提出を獲得

なお、法制審議会刑事法(性犯罪関係)部会では、刑法上の性犯罪について、次のような問題点が指摘されています。これらについても、今後注目していくべきでしょう。

  • 膣や肛門への手指や異物の挿入についても、性交等と同等に取り扱うべきではないか。
  • 性交同意年齢が13歳と設定されているが、性交同意年齢を引き上げるべきではないか。
  • 強制性交等罪における暴行・脅迫要件を緩和すべきではないか。

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