性犯罪 [公開日]2018年4月21日[更新日]2021年1月19日

強制性交等罪とは?刑法改正による変更点と逮捕後の流れ

強制わいせつ罪等の性犯罪を厳罰化する刑法改正案が、2017年6月23日に公布され、同年7月13日に施行されました。

110年ぶりの刑法の大幅改正となりますが、特に、改正前の「強姦罪」から罪名が変更された「強制性交等罪(きょうせいせいこうとうざい)」に注目が集まっています。

では、強制性交等罪は、具体的にどのような内容となっているのでしょうか?

今回は、強制性交等罪を中心に、性犯罪の扱いがどう変わったかを弁護士がご説明します。

1.強制性交等罪とは

強制性交等罪は、13歳以上の者に対して暴行・脅迫を用いて、性交等を行った場合に成立します。13歳未満の者に対しては暴行・脅迫を用いない場合でも同罪が成立します。

同罪の「暴行・脅迫」は、相手方の抵抗を著しく困難にする程度のものが要求されます。

「暴行」は物理的な有形力の行使を意味しますから、例えば被害者の手を掴んだだけでも「暴行」に該当します。

しかし、法が暴行・脅迫を要件としたのは、これをもって相手方の承諾に基づく性行為との区別基準とし、犯罪成立の範囲を明確化するためですから、この程度の有形力の行使では足りないと考えられてきました。

そこで少なくとも被害者の抵抗を著しく困難とする程度の暴行・脅迫が必要と理解されているのです(※最高裁昭和24年5月10日判決)。

抵抗を著しく困難とする程度の暴行・脅迫か否かは、当該犯行の具体的な状況(犯行日時、現場の状況、加害者と被害者の性別・年齢・体格差、凶器の有無など)から客観的に判断します。

例えば、男性が女性を羽交い締めして「静かにしろ」と告げる行為は、深夜の公園内では被害者の抵抗を著しく困難とする行為と言えますが、それが昼間、人通りの多い路上で行われた場合では、強制性交等罪の暴行とは評価できないでしょう(強制わいせつ罪、暴行罪、脅迫罪が成立する可能性があることはもちろんです)。

この(13歳以上の被害者に対しては)暴行・脅迫があって初めて犯罪が成立するという点は、改正前から変更はありません。

ここで強制性交等罪の条文をあげておきます。

刑法177条
「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、5年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。」

2.強制性交等罪の改正

では、旧来の強姦罪が強制性交等罪となって、どのように改正されたのかを見てみましょう。

(1) 加害者、被害者、犯行態様、罪名が改正された

改正前の強姦罪(旧177条)は「女子を姦淫した」と規定していました。姦淫とは性交(いわゆる膣性交)のことです。

このため強姦罪では、被害者は女性に限定されました。

加害者も、単独犯の場合は男性に限定され、女性が加害者となるのは、男性の姦淫行為に加担した共犯の場合に限られました。例えば、①女性Aが男性Bに、被害者女性Cに対する強姦行為をそそのかした場合(教唆犯)、②女性Aが男性Bと共謀して、Aが被害者女性Cを犯行現場に呼び出して、Bが強姦した場合(共謀共同正犯)などです。

改正法では、個人の性的自由を保護する観点から処罰範囲を拡大し、被害者の性別を問わないこととし、犯行態様も性交だけでなく、肛門性交、口腔性交も処罰対象としました。

強姦以外の行為も処罰対象としたことから、罪名も強制性交等罪に改められました。

(2) 被害者の告訴が不要となった

改正前の強姦罪は、被害者の告訴(犯人の処罰を求める意思表示)がなければ起訴できない親告罪でした。

強姦罪だけでなく、強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪、準強姦罪も同様で、告訴を不要とする例外は、2名以上の加害者が共同して犯行を行った場合(改正前178条の2「集団強姦等罪」など)や、被害者が死傷した場合(改正前181条「強制わいせつ等致死傷罪」など)でした。

しかし、親告罪では、いわゆるセカンドレイプ等を恐れる被害者に、告訴するか否かの選択を迫ることになってしまい、その精神的負担が大きいという弊害がありました。

そこで改正法は、強制性交等罪を被害者の告訴がなくても起訴することができる非親告罪としました。準強制性交等罪、強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪についても同様とし、さらに新設の監護者わいせつ罪(改正法179条1項)、監護者性交等罪(改正法179条2項)も同じく非親告罪としました。

親告罪について詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。

[参考記事]

親告罪とは?非親告罪との違いをわかりやすく解説

(3)刑が重くなった

改正前の強姦罪の法定刑は3年以上の有期懲役であり、死傷の結果が生じても無期または5年以上の有期懲役、集団強姦で4年以上の有期懲役でした。

しかし、これらの法定刑は性犯罪に対する国民の厳罰意識に比べて刑が低すぎると指摘されてきたため刑を重くすることになりました。

強姦罪は5年以上の有期懲役、死傷の結果が生じた場合は無期または6年以上の有期懲役となり、単独犯行での罪を重くしたことから、集団強姦等罪は削除されました。

3.強制性交等罪による逮捕後の流れ

被疑者は、逮捕されると、逮捕から48時間以内に検察官に送致され、検察官は、被疑者を受け取ってから24時間かつ逮捕から72時間以内に裁判官に対し、より長期の身体拘束を求める「勾留請求」をします。

裁判官は、検察官から勾留請求があると、被疑者に勾留質問を行って、勾留の理由と必要性を審査します。

裁判官は、住居不定、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのいずれかに当たり、捜査を進める上で身柄の拘束が必要なときに、被疑者の勾留を認めます。

なお、勾留期間は原則として勾留請求した日から10日間ですが、事案が複雑であったり、共犯者や参考人など関係者が多数存在したり、証拠が遠方にあり収集が困難など、やむを得ない場合には、更に10日間以内の延長が認められることになります。

起訴された場合には、被告人勾留に切り替わり、保釈が認められない限り、裁判終了まで身体の拘束が続くことになります。

なお、逮捕中の48時間以内に身体拘束されている被疑者と接見できるのは弁護士のみとなります。弁護士以外の家族などは勾留段階になって石鹸できることになります。

4.前科を回避するために

検察官ははっきりとした証拠が固まってから加害者を起訴するため、起訴後の有罪率は99%以上とも言われています。罰金刑や執行猶予付きの判決となった場合でも有罪判決である以上、被疑者の方には「前科」がつくことになります。

また、身体拘束が長引けば、無断欠勤として会社を解雇されたり、退学させられたりしてしまうかもしれません。

釈放をされ、前科を免れるためには、犯罪の被害者が個人や会社の場合には逮捕後にいち早く被害者の方と示談をすることが大切です。

そのためには、できるだけ早い段階から、刑事弁護経験豊富な弁護士を弁護人として選任し、示談交渉を開始してもらうべきです。

性犯罪の示談は大変困難ですが、弁護士のサポートを受けて反省の意をしっかりと示すことで、被害者の方も示談に応じてもらえることが少なくありません。

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また、保釈のための手続きでも、刑事事件に強い弁護士による適切な支援が必要不可欠です。

5.性犯罪の相談は泉総合法律事務所の弁護士へ

強制性交等・準強制性交等は、重い性犯罪であり、決して行ってはならないものです。しかし、もし罪を犯してしまった場合には、早急に刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所までご相談ください。

泉総合法律事務所は、強制性交等などの重い性犯罪の刑事弁護についても経験豊富です。被害届を出されそう、逮捕されてしまうのではないか、前科をつけたくない、と不安になっている被告人はもちろん、家族が逮捕されるなどした場合にも、どうぞお早めにご相談・ご依頼ください。

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