性犯罪 [公開日]2017年8月28日[更新日]2023年4月25日

強制性交等罪と準強制性交等罪の違い(強姦罪・準強姦罪)

2023年3月14日に閣議決定された法律案では、従来の「強制性交等罪」について、「不同意性交等罪」への名称変更と構成要件の修正が盛り込まれています。
また、改正刑法案では、強制性交等罪と準強制性交等罪がいずれも「不同意性交等罪」に統合されています。

社会問題化している性犯罪は年々厳罰化されており、現行の強制性交等罪(旧罪名:強姦罪)・準強制性交等罪(旧罪名:準強姦罪)であっても、逮捕された場合、直ちに弁護士に依頼して示談交渉に着手しないと、起訴されて前科がつく可能性が高いです(執行猶予付きでも前科がつきます)。

事件を起こしてしまったことに対する反省は必要ですが、必要以上の不利益を受けないよう、逮捕された本人又はその家族は「強制性交等罪・準強制性交等罪になると懲役刑になるのか」「逮捕された後はどうなるのか?不起訴は望めるのか?」「被害者との示談金はいくら可能なのか?」などを知っておく必要があります。

本記事では、間も無く改正が見込まれる、強制性交等罪(旧罪名:強姦罪)・準強制性交等罪(旧罪名:準強姦罪)について解説します。

1.強制性交等罪と準強制性交等罪とは?

(1) 強制性交等罪(旧:強姦罪)の構成要件

強制性交等罪は、13歳以上の者に対して暴行・脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という)をすること、13歳未満の者に対しては単に性交等をすることによって成立します(刑法177条)。
法定刑は、「5年以上の有期懲役」です。未遂も処罰対象です(刑法179条)。

従前は、被害者が女子に限定されていましたが、平成29年6月の改正(同年7月施行)により、男子も含まれるようになりました。そのため、加害者も被害者も性別を問わないことになりました。

13歳以上の者に対する性交等の行為の手段としての暴行・脅迫は、被害者の抵抗を抑圧するまでの必要はありませんが、著しく困難にする程度のものであることを要するとするのが、通説・判例です。
13歳未満の者は、性交等について十分な同意能力を有しませんから、同意の有無にかかわらず性交等の行為それ自体を処罰することになっています。

なお、改正刑法案では、性交同意年齢が13歳から16歳へと引き上げられます(改正刑法案177条3項)。

(2) 準強制性交等罪(旧:準強姦罪)の構成要件

準強制性交等罪は、人の心神喪失・抗拒不能に乗じ、又は心神喪失・抗拒不能にさせて性交等をすることによって成立します(178条2項)。法定刑は、「5年以上の有期懲役」です。

「心神喪失」とは、精神の障害によって正常な判断能力を失っている状態をいい、熟睡、酩酊・麻酔状態、高度の精神病等がこれに当たります。
また、「抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由によって心理的、物理的に抵抗することが不能又は著しく困難な状態をいい、恐怖・驚愕・錯誤等によって行動の自由を失っているなどがこれに当たります。

そして、「心神喪失・抗拒不能に乗じ」とは、被疑者がこの状況にあるのを利用することをいい、泥酔している人に対して性交等をすること、深夜に夫又は妻と誤信させて性交等をすることなどがこれに当たります。

また、「心神喪失・抗拒不能にさせ」る方法には、麻酔等の薬物投与、催眠術、欺罔などがあります。

(3) 強制性交等と準強制性交等の違い

犯行の態様から見て、性交等の行為の手段としての暴行・脅迫を用いる場合が強制性交等であり、心神喪失・抗拒不能の状態を利用する場合が準強制性交等といえ、これが両者の違いとなります。
ただし、13歳未満の者に対する強制性交等は、暴行・脅迫を性交等の行為の手段としません。

準強制性交等罪は、「準」とつくため、強制性交等罪より軽い印象を受けかねませんが、準強制性交等罪も、先に見たように強制性交等罪と同じ法定刑ですので、実際的にも、強制性交等罪と同様に重大な犯罪なわけです。

なお、冒頭の通り、改正刑法案では、強制性交等罪と準強制性交等罪がいずれも「不同意性交等罪」に統合されています。
改正刑法案では、不同意性交等罪を基礎づける「不同意」が認められる行為・事由を具体的に類型化しており、この中に心神喪失・抗拒不能の状態を利用するケースも盛り込まれています。

「不同意」の事由は、現行刑法における強制性交等罪・準強制性交等罪よりも拡大されており、実質的に処罰範囲が広げられています。

[参考記事]

不同意性交等罪とは? 刑法改正による強制性交等罪からの変更点を解説

2.強制性交等罪・準強制性交等罪で逮捕後の流れ

(1) 逮捕・勾留

事件が発覚すると、被疑者は警察により逮捕されてしまう可能性があります。
その後、逮捕に引き続き身体を拘束するのが「勾留」です。

逮捕された被疑者の場合、逮捕後48時間以内に検察庁に身柄を送致されます。検察官は、身柄を受け取ってから24時間以内かつ逮捕から72時間以内に被疑者を釈放するか、裁判官に勾留請求をしなくてはなりません。

勾留請求を受けて裁判官は、被疑者に対して勾留質問を行って、その当否を審査しますが、強制性交等罪・準強制性交等罪を犯した疑いがあり、住居不定、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれのいずれかに該当する場合には、被疑者の勾留を認めます。

なお、勾留期間は原則10日間ですが、やむを得ない場合には更に10日以内の延長が認められることもあります。さらに、起訴された場合には、保釈が認められない限り身体の拘束が続くことになります。

(2) 逮捕・勾留中の被疑者と家族の面会

逮捕中は、弁護士以外の人が被疑者と面会することができません。

被疑者は警察署の留置場等に留置され、外部との連絡も自由にできなくなりますので、逮捕中の被疑者と連絡を取るためには弁護士に依頼するしか方法がないことになります。

他方で、逮捕後の勾留中は家族も面会できますが、一般的な例でいいますと、平日の日中の時間帯でかつ時間制限(15~20分程度)、回数制限(1日1回)、人数制限(1回の面会で3人まで)、警察官等の立会いといった条件があります。さらに、接見(面会のこと)禁止等の決定がなされますと、面会できるのは弁護士だけとなります。

→よくある質問「接見とは?

(3) 起訴・不起訴の判断

検察官は、勾留の期間が満了するまでに、被疑者を起訴するか否かの判断をし、起訴しない場合には釈放しなくてはなりません。

被疑者を起訴するか否かは、犯罪の重大性、犯行態様の悪質性、被疑者の前科や反省の有無、被害者との示談の成立の有無等が考慮されます。

起訴されて有罪判決が下されると、例えそれが罰金刑でも前科がついてしまいます。

3.被害者との示談交渉の重要性

被告人の処分結果に最も影響を与えるのが、被害者との示談です。
強制性交等罪・準強制性交等罪で逮捕された人に有利となる結果を導くには、いかに早期に示談を成立させることができるかにかかっています。

しかし、示談となりますと、被害者の心情に配慮しなければなりませんので、殊に被害者の心理的ダメージが大きい性犯罪ではかなり高度な交渉ごとになります。刑事弁護経験豊富な弁護士に委ねることが適切です。

現実に、弁護士に依頼をすれば、この種の事犯でも示談が成立している事例は格別珍しいものではありません。

示談成立が早ければ早いほど、不起訴や早期の釈放など、被疑者・被告人に有利な処分結果が出ることが期待できます。

[参考記事]

刑事事件の示談の意義・効果、流れ、タイミング、費用などを解説

4.強制性交等罪・準強制性交等犯罪に関するよくある質問

  • 強制性交等罪・準強制性交等犯罪の刑罰は?不起訴になる?

    強制性交等罪・準強制性交等犯罪:懲役5年以上20年以下の懲役

    罰金刑がない重い犯罪ですが、弁護士にサポートを依頼して被害者との示談成立を実現することで、不起訴になる可能性は0ではありません

    一般的に、強制性交等罪などの量刑を行う場合、次の項目を基準として総合的に判断します。

    • 強制性交等の結果の程度(重大か軽微か)
    • 示談の有無と示談金額
    • 被害弁償の有無と被害弁償額
    • 性交等の行為の態様(悪質性、計画性など)
    • 性交等の行為の動機
  • 強制性交等罪・準強制性交等犯罪の示談金の相場はいくら?

    強制性交等罪の場合、被害者が致傷を生じていない限り、示談金の内訳の多くを「慰謝料」が占めます。
    慰謝料は文字通り心の傷を慰める金銭ですから、客観的な基準はありません。特に強制性交等罪では、被害者の精神的な打撃の深刻さは被害者によって様々です。

    また、示談金の上限は加害者側の資力によって画されますから、必ずしも被害が深刻な事案の示談金が高額になるとは限りません。
    したがって、強制性交等罪の示談金の相場は「ない」とお考え下さい。

    ただ、弁護経験からすると、格別に傷害の結果が生じていない事案では、100万円~300万円程度で合意してもらえる場合が多いと感じられます。

  • 起訴された後、保釈されることはあるのか

    保釈とは、保釈金を支払う代わりに勾留されている被告人を釈放させる制度です。

    被告人やその家族は、起訴後に保釈請求ができます。しかし、法律に精通していない被告人やその家族の場合、具体的に理由付けて裁判官を説得するような保釈請求をすることは至難のことです。

    弁護士が保釈請求をする場合、法律上の要件を具体的に主張するとともに、裁判官に面談を求め、その面談を通じて保証金額の希望を伝えたり、望ましい制限住居、適切な身柄引受人の存在などを訴えたりして、保釈の判断を勝ち取ります。

5.強制性交等罪・準強制性交等犯罪の弁護は泉総合法律事務所へ

強制性交等罪・準強制性交等罪は大変重大な犯罪です。
前科は人の一生涯を左右する問題ですので、もし逮捕されてしまったならば、お早めに泉総合法律事務所までご相談ください。

当弁護士法人では様々な刑事事件に取り組み、性犯罪においても多くのケースで示談していただいております。

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