性犯罪 [公開日]2018年5月1日[更新日]2020年12月9日

ストーカー規制法違反に当てはまる?どこからがストーカー行為か

ストーカー規制法違反に当てはまる?どこからがストーカー行為か

【この記事を読んでわかる事】

  • ストーカー行為だと認められる行為について(ストーカー規制法)
  • ストーカー規制法違反で逮捕された最近の具体例
  • ストーカー行為に該当するかどうかの基準と具体例解説

 

例えば好意を寄せる女性にアプローチしたいとき、どこまでが片思いとしてOKなのか、どこからがストーカー行為と言われてしまうのか、その境界線は難しいところです。

今回は、ストーカー行為の定義、ストーカー規制法違反で逮捕された最近の具体例、ストーカー行為に該当するかどうかの基準、ストーカー行為と思われるような具体例などに触れながら、ストーカー行為とその境界線について考えてみたいと思います。

なお、ストーカー行為等の規制等に関する法律は、「ストーカー規制法」、あるいは、単に「法」といいます。

1.ストーカー行為の定義

ストーカー規制法で定められる「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、法2条1項に定められた「つきまとい等」を反復してすることをいいます。

ただし、法2条1項1号から4号まで及び5号(電子メールの送信等に係る部分に限られます)に掲げる行為については、「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法によって行われる場合」に限られます。

もう少しかみ砕いて説明しますと、次のようになります。

「ストーカー行為」とは、特定の人に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、特定の人やその家族らに対し、下記の①ないし⑧の「つきまとい等」を繰り返し行うことをいうのです。

ただし、下記の①ないし④及び⑤(電子メールの送信等のみ)については、上記のような「不安を覚えさせるような方法によって行われる場合」に限られます。

  • つきまとい、待ち伏せ、立ちふさがり、見張り、押し掛け、うろつき
  • 監視していると告げる行為
  • 面会や交際などの要求
  • 粗野・乱暴な言動
  • 無言電話、連続した電話・ファクシミリ・メール・SNSのメッセージ等
  • 汚物などの送付
  • 名誉を傷つける
  • 性的羞恥心の侵害

「つきまとい等」に関して詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

参考:「ストーカー規制法改正の解説!つきまとい行為で警告・逮捕に

2.ストーカー規制法違反で逮捕された最近の具体例

(1) 中学校講師の男(23歳)は、平成29年1月、元交際相手の女性に対し、拒まれたにもかかわらず、SNSのメッセージ機能を利用して、メッセージを連続して送信するなどのストーカー行為をしたとして、ストーカー規制法違反で逮捕されました。

(2) 会社員の男(43歳)は、平成29年1月、元交際相手の女性に対し、同女性の勤務先周辺を自動車を運転してみだりにうろつくなどのストーカー行為をしたとして、ストーカー規制法違反で逮捕されました。

(3) 医師の男は、平成29年1月、平成28年10月から同年12月にかけて、女子高校生のTwitterに16回にわたり、「バス停で見ているよ」「僕のお嫁さんだよ」「県庁バス停にいれば○○に会えるのはわかっている」「○○の家ってここなんだ」「○○ちゃんの行動パターンを知り尽くしてしまった」などと行動を監視しているような書き込みを繰り返すなどのストーカー行為をしたとして、ストーカー規制法違反で逮捕されました。

(4) 無職の男(51歳)は、平成29年1月、元交際相手の女性に対し、LINEでメッセージ(わいせつな音声メッセージを含みます)を5回連続して送信するなどのストーカー行為をしたとして、ストーカー規制法違反で逮捕されました。

(5) 元保育士の男は、平成29年2月、保育所で担当していた女児に会わせるよう、女児の母親に対し、「(女児に)会いたい」というメールを10回以上送信し、電話を200回以上かけるなどのストーカー行為をしたとして、ストーカー規制法違反で逮捕されました。

(6) 会社員の男は、好意を持った知人女性の軽乗用車にGPSを取り付けたり、インターネットサイトに「監視」しているという投稿をするなどのストーカー行為をしたとして、ストーカー規制法違反で逮捕されました。

3.ストーカー行為に該当するかどうかの基準

(1) 女性の自宅前で告白するため、待ち伏せしていたが、女性は「怖い」と嫌悪感を抱いていた場合。

この場合は、好意の感情が女性に受け入れられることや女性がそれに応えて何らかの行動を取ることを望んで上記の行為を行ったものと解されますが、女性に身体の安全、住居等の平穏が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われたものといえれば、ストーカー行為に該当することになります。

そして、そのためには、上記のような行為が、その女性に対し、反復してなされる必要があります。

女性が情熱的なアプローチだと好意的に捉えていれば、女性には相手の行為に不安を感じていないわけですから、ストーカー行為には該当しないことになります

したがって、女性がストーカー行為だと言って警察に通報しても、ストーカー規制法に違反していると認められなければ、逮捕されないこともあることになります。

(2) 好意を寄せる女性が交際の申入れを受け入れてくれなければ、女性やその家族に危害を加えると脅し、ペットや自動車など女性の物を傷つけるなどして、女性に対し、交際を要求した場合。

この場合は、好意の感情が女性に受け入れられることや女性がそれに応えて何らかの行動を取ることを望んで上記の行為を行ったものと解され、しかも、女性に身体の安全、住居等の平穏が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われたものといえますが、好意の感情を充足する目的で法2条1項1号3号に該当するストーカー行為をしたといえるためには、交際の要求が、女性に対し、反復してなされる必要があります。

したがって、交際の要求を反復してしたといえなければ、ストーカー規制法違反となりませんので、刑法の脅迫罪及び器物損壊罪が成立します。

(3) 好意を寄せる女性の気を引くため、注文していない大量の宅配ピザや高額な商品を女性宅に届けさせ、受け取るように求めた場合

この場合は、好意の感情が女性に受け入れられることや女性がそれに応えて何らかの行動を取ることを望んで上記の行為を行ったものと解され、しかも、女性に身体の安全、住居等の平穏が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われたものといえますが、好意の感情を充足する目的で法2条1項1号3号に該当するストーカー行為をしたといえるためには、受取りの要求が、女性に対し、反復してなされる必要があります。

したがって、受取りの要求を反復してしたといえなければ、ストーカー規制法違反とはなりません。

4.ストーカー行為と思われるような具体例

(1) 交際相手に別れを告げられた後、「別れたくない」とつきまとい、その自宅や駅で待ち伏せし、「もう一度やり直そう」としつこく復縁を迫った場合

この場合は、好意の感情が相手方に受け入れられることや相手方がそれに応えて何らかの行動を取ることを望んで上記の行為を行ったものと解されますが、相手方に身体の安全、住居等の平穏が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われたものですから、好意の感情を充足する目的で、相手方に対し、法2条1項1号3号に掲げる行為を反復してしたものとして、ストーカー行為に該当します。

(2) 同級生に「好きです」と告白し、断られても「あきらめられない」と日に何十件もメールをし、無言電話をかけた場合。

この場合は、好意の感情が相手方に受け入れられることを望んで上記の行為を行ったものと解されますが、相手方に身体の安全が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われたものですから、好意の感情を充足する目的で、相手方に対し、法2条1項5号に掲げる行為を反復してしたものとして、ストーカー行為に該当します。

(3) 相手から交際を断わられた腹いせに、相手やその家族を誹謗中傷するチラシをばらまいたり、インターネット上に個人情報をさらすような悪意に満ちた書き込みを何度となくした場合。

この場合は、好意の感情が相手方に受け入れられなかったことから上記の行為を行ったものと解されますから、怨恨の感情を充足する目的で、相手方に対し、法2条1項7号に掲げる行為を反復してしたものとして、ストーカー行為に該当します。

5.まとめ

ストーカー規制法違反かそうでないか、警察に通報されてしまうか、逮捕されるかは被害者の気持ちの受け取り方もありますが、仮にストーカーだと言われてしまっても、弁護士の助けを借りてしっかり弁解すれば、不起訴となる可能性もあります。

ストーカー規制法違反を疑われてしまったら、一度弁護士にご相談ください。

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