性犯罪 [公開日]2018年1月17日[更新日]2021年2月26日

セクハラは犯罪?被害届を出されて逮捕されることはある?

忘年会や新年会、歓迎会や送別会などの席で、酔った勢いで会社の女性部下の身体を触ってしまったり下ネタを話してしまったりして、問題になることがあります。

周知のとおり、このような行為は「セクハラ」に該当します。たかがセクハラと考える方もいるかもしれませんが、セクハラが犯罪に該当する場合には逮捕されてしまうこともありうるので、注意が必要です。

今回は、冗談のつもりで行った言動であっても「セクハラ」となったり、刑事事件になったりしてしまう場合について、刑事事件に詳しい弁護士が解説いたします。

1.セクハラとは

セクハラと言えば、一般的に会社での「労働トラブル」だと思われていることが多いので、「刑事事件」「逮捕」と言われても、ピンと来ないかもしれません。

しかし、セクハラは立派な「犯罪」となる場合があります。

(1) セクハラとはどんな行為なのか?

セクハラとは「セクシュアル・ハラスメント」のことであり、日本語にすると「性的嫌がらせ」です。

「嫌がらせ」ですから程度も内容も様々ですが、男女雇用機会均等法(※雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律)では、次のとおり定めています。

第11条1項
①職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けること
②当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること

この法律は、職場内でのセクハラを防止・対応する施策を企業に求めるものに過ぎず、セクハラを禁止する法律ではありませんが、どのような行為がセクシャルハラスメントとなるかを考える上では参考にはなります。

厚生労働省の指針(※)では、この条文にしたがって、セクシャルハラスメントを次のふたつのタイプに分けています。
※「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)」

対価型セクハラ

職場で性的な言動を行ったときに労働者が拒否したことを理由として、解雇や降格、減給などの不利益処分を行うことです。

たとえば、女性の従業員に性関係を強要したところ、拒絶されたために解雇したケースなどが該当します。

環境型セクハラ

性的な言動によって就業環境を不快なものとしたために、労働者の労働遂行に支障を発生させるパターンです。

たとえば、上司が性的な発言を繰り返すので、部下が苦痛に感じて仕事をする意欲をなくしてしまった場合などが該当します。

上司が職場に女性のヌードのポスターを貼ったために、部下が苦痛に感じて業務に専念できなくなったケースなどもこのパターンです。

 

男女雇用機会均等法のセクハラ規定は、「職場のセクハラ」に関するものですから、「職場において行われる性的な言動」という要件が付されていますが、セクシャルハラスメントは職場内に限るものではありませんから、職場外も含めたセクシャルハラスメントを考える際のポイントになるのは、「性的な言動」か否かです。

例えば、以下のような言動は、性的なものと評価されます。

  • 異性との性生活について尋ねる
  • 性的な冗談を言う、からかう
  • 食事やデートにしつこく誘う
  • 自分の性的な体験談を聞かせる
  • 性関係を強要する
  • 許可無く身体に触る

また、セクシャルハラスメントが「嫌がらせ」である以上、「相手の意思に反する」ことが要件となることは当然です。

性的な言動といえども、相手の真意に基づく同意があるなら、何ら咎められる理由はありません。

(2) セクハラの民事責任とは?

さて、それが職場における行為か否かによらず、相手の意思に反する性的言動を行い、相手に何らかの損害を生じさせたならば、それは故意過失によって、違法に、相手の法的に保護されるべき権利・利益を侵害した不法行為(民法709条)であって、行為者は損害賠償義務を負うことになります。

多くの場合、被害者の精神的損害に対する慰謝料支払義務を負担することになるでしょう。

また、前述した職場での対価型セクハラで、被害者が解雇、降格、減給などの処分を受けたならば、これらの処分は無効となるうえ、被害者は会社に対しても使用者責任(民法715条)などを根拠に損害賠償請求をすることが可能です。

さらに職場でのセクシャルハラスメント行為は、企業秩序違反として、加害者は、懲戒解雇など、会社による懲戒処分を受けることになります。

2.セクハラで成立する犯罪

刑法を含めた法律に「セクハラ罪」は存在しません。

しかし、それはセクハラ行為が犯罪とならないことを意味するわけではありません。当該セクハラ行為が、刑法を含む法律の刑罰規定に違反する行為であるならば、立派な犯罪行為となります。

セクハラによって犯罪が成立するのは、以下のようなケースです。

  • 歓送会や新年会の後に、泥酔して朦朧としている被害者をホテルに連れ込み性交渉をした場合……準強制性交等罪(旧準強姦罪)
  • 宴会で、酔って同僚や部下の女性に無理矢理キスをした場合……強制わいせつ罪
  • 更衣室にスマホを差し入れて盗撮した場合…迷惑防止条例違反
  • 女性部下に性生活についてのわいせつな言葉を投げかけた場合……名誉毀損罪、侮辱罪
  • 部下の女性の服の上から身体を触った場合……強制わいせつ罪
  • 飲み会の帰りに、同僚の女性を押し倒して性交渉をしようとした場合……強制性交等罪未遂罪
  • 新年会、歓送会の帰り、同僚の女性に抱きついたり、胸やお尻を触ったり揉んだりした……強制わいせつ罪、迷惑防止条例違反

3.セクハラで逮捕された場合の流れ

セクハラ行為が犯罪に該当すれば、逮捕されることがあるのは当然のことです。

強制性交等罪のような、もはや嫌がらせの域を超えた重大犯罪の場合はもちろんですが、身体に触る強制わいせつ罪、迷惑防止条例違反でも、被害者が警察に被害届を提出すれば、逮捕の可能性は否定できません。

では、セクハラで逮捕された場合、その後どのような刑事手続きの流れになるのでしょうか?

(1) 身柄拘束される

逮捕をされると、警察の留置場内に身柄拘束されることとなります。

警察官は逮捕後48時間以内に、被疑者の身柄を検察官に送付しなければなりません。
検察官は被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内かつ逮捕から72時間以内に、裁判所に勾留請求するか釈放するかを判断しなければなりません。

被害が軽微で、被疑者の身元が明らかな場合などには、勾留請求されずに釈放されることもあります。

検察官が勾留請求をして裁判官がこれを認めた場合、被疑者の身柄は留置場内に引き続き拘束されることになります。

勾留期間は10日間ですが、10日では捜査が終了しない場合、さらに最大で10日間勾留延長される可能性があります。

起訴前の身柄拘束期間は最大逮捕から23日です。ただ、23日も身柄拘束されたら、通常の会社員の場合、懲戒解雇されてしまう可能性があります。

解雇などの大きな不利益を避けるには、身柄拘束を早めに解いてもらうことが何より重要となります。

(2) 起訴される

勾留期間が満期になる前に、検察官は、被疑者を起訴するか不起訴にするのか決定しなければなりません。

このとき起訴されると、高い確率(99.9%以上)で有罪となってしまいます。

有罪判決を受けると前科がついてしまうので、今後の人生において大きな影響を受けてしまうでしょう。

[参考記事]

前科があると就職に影響するのか?

悪質な強制わいせつや強制性交等罪が成立した場合などには、実刑判決を受けてしまうおそれも高くなります。

4.セクハラで逮捕された場合の対応

セクハラで逮捕された場合、重要なことは早期に身柄を解放してもらうことです。
また、前科を避けるために起訴されないようにすることも大切です。

どうしても起訴を避けられないなら、実刑判決を受けないようになるべく刑を軽くする方法を検討すべきです。

そのために重要となるのが、被害者との「示談」です。示談とは、加害者と被害者が交渉をして、示談金の支払いと引き換えに被疑者を宥恕してもらえるよう合意することです。

宥恕(ゆうじょ)とは、「許す」ことで、「処罰を望まない」などの宥恕文言を示談書に記載することで、被害者の処罰感情が無くなったことを明らかにしてもらうのです。

このように示談は、被害が金銭賠償され、被害者が処罰を希望しなくなったという意味で、被疑者にとって有利な事情として評価され、検察官が不起訴処分にとどめてくれる可能性が高まるのです。

仮に、起訴されてしまったとしても、示談が成立したら、最終的な判決において有利な情状として斟酌(しんしゃく)されます。結果として、罰金刑になったり執行猶予がつく可能性が高まります。

また逮捕された最初期の段階で、早々に示談を成立させることができれば、勾留されない、勾留されても延長はされないといった、早期の身柄解放を実現できる可能性もあります。

[参考記事]

刑事事件における示談の意義、タイミング、費用などを解説

5.セクハラの加害者になってしまったら弁護士にご相談を

セクハラの場合、痴漢などと違って相手が顔見知りであることがほとんどでしょうから、逮捕されていない場合には、加害者本人が自分でも示談交渉ができると思うかもしれません。

しかし、セクハラの被害者は、怒りや恐怖心から、加害者との直接の交渉に応じないことが通常です。

また、加害者が不用意に被害者に接触することは、脅迫、罪証隠滅、お礼参りを疑われ、却って逮捕されてしまう危険があります。
後の公判で、犯行後も執拗に被害者とコンタクトをとろうとしていたなどと指摘されたら、裁判官の心証は最悪になってしまいます。

そこで、セクハラで効果的に示談交渉を進めるためには、弁護士に対応を依頼すべきです。

性犯罪での示談交渉の経験豊富な弁護士であれば、被害者の怒り、恐怖心に配慮しながら示談交渉を進め、不起訴を獲得するために必要な示談書を確実に入手し、早期に不起訴決定を獲得できる可能性があります。

泉総合法律事務所は、セクハラ事案のみならず、痴漢や盗撮など、各種の性犯罪に対応している刑事事件に強い弁護士事務所です。ケースに応じた最適な対処方法をアドバイスいたします。また、早期に被害者と示談交渉を進め、確実に検察官に不起訴決定をしてもらえるよう、最善の手配を進めます。

被害者の怒りが強く、示談に応じてもらえないと思われるようなケースでも、弁護士が介入することによって、事態を収拾できることも少なくありません。

突然の逮捕で困惑されている加害者の方やご家族様、刑事告訴すると言われてお困りの方などは、どうぞお早めにご相談ください。

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