身に覚えのない人身事故→「やっていない」という主張を貫き、不起訴処分を獲得

[事例 105] 交通事故 人身、死亡事故
性別 男性相談に至った
経緯
・前科をつけたくない・不起訴にしてほしい
年齢 50代
職業 会社員
罪名人身・死亡事故
弁護活動の結果不起訴

背景

その日、Aさんは車を運転していました。三車線の大通りを走っていたところ、前が詰まっていたので、一つ右の車線に変更しようと思いました。ウィンカーを出し、ミラーで後方を、窓から右をそれぞれ確認してから、車線を変更しました。
しばらくそのまま走っていたところ、自分の車を煽るように走っている後ろの車に気が付きました。不思議に思い隣の車線に移ると、後ろについて車線を変更してきました。不安に思いながら走らせていたところ、信号が赤になり、止まりました。すると、後ろからついてきた車から男性が降りてきて、突然叫びだしました。Aさんの車が、その人の車に当たったというのです。全く身に覚えのないAさんは困惑しました。
その人が警察を呼びました。そしてその男性の主張が、「Aさんが無理やりに車線変更してきたためにハンドル操作を誤って縁石にぶつかった」ということだとわかりました。確かに縁石にはこすれたような傷がありました。警察官はそれがその傷だと言いますが、Aさんにはそうなのかどうか全く分かりませんでした。
その日は物損という形で、Aさんはいったん返されました。しかし後日その男性が診断書を持ってきたということで、人身事故になり、警察署に呼び出されました。

弁護士対応 - 直筆で作成した上申書を検察官に提出⇒再度の取り調べとなった

警察署に呼び出されて不安になったAさんが、事務所に相談に来られました。話を聞いて、Aさんがこの件の責任を負う必要があるとは思えませんでした。いくつか問題がありましたが、主には、そもそもその男性の車がその時に縁石に衝突したのか、そして、その衝突が、接触したわけでもないAさんの車の車線変更に原因があると言えるのか、でした。そして、到底そのような証拠は集まらないと思いました。このような場合、警察官としては、Aさんに自らの責任を認めさせてしまおうとするだろうと予測できたため、Aさんには、絶対に自分の責任だったとは認めないようにと言い聞かせました。
しかし、取調べに行ったAさんは、「自分の責任でした」という供述調書に署名をしてしまっていました。それはおかしいとAさんが言ったところ警察官は突然顔色を変えて「反省していないのか。それなら裁判の手続きに移る。何度も警察に来てもらうことになる。こちらが気を使っているのがわからないのか。」と言われ、怖くなってしまったそうです。
私は、直ちに次の対策を取りました。そのような警察官に対しては、何を言っても無駄です。そこで、その翌日にAさんに事務所に来てもらい、上で述べた理由で怖くて署名しただけであり、自分に過失があったとは思わない、という内容の上申書を、直筆で書いてもらいました。そして、それを、私が作った意見書とともに、検察官へと提出しました。
すると、後日検察官の指示で、警察官の再度の取り調べがありました。その時には前回とは打って変わった態度だったようです。そこではAさんの本当の認識をきちんと供述調書にしてもらうことができました。

結果 - 無事に不起訴処分となった

最終的には、検察官はAさんを不起訴にしました。

弁護士からのコメント

過失の交通事故で、Aさん自身が自分の過失である、と認めることは、故意の事件に比べたらそこまで重要ではありません。しかし、捜査機関は上で述べたような対応を取ってきます。そして、重要ではないとしても、事実ではない供述調書を作成するべきではありません。
日本では、取調べに弁護士が同席することはできません。どうしても、取調べは依頼人の方が一人で頑張らなければなりません。しかしそれには限界があります。それでも、弁護士がいれば、まずい供述調書を作成されてしまった場合に、直ちにそれをリカバリーする活動をすることができます。
上申書を作ったのが、調書を作られてから1か月後であったなら、その上申書の内容を、検察官が信じてくれたかはわかりません。罪を免れようと今更嘘をつきだしたのか、と考えられてしまったかもしれません。幸いにもAさんが取調べよりも前に相談に来てくれたために、調書が作られた翌日に、Aさんの本当の言葉が書かれた上申書を作り、Aさんにとってベストの結果を導くことができました。