数年前起こしてしまった死亡事故で突然起訴するとの連絡がきた→執行猶予

[事例 71] 交通事故 人身、死亡事故
性別 男性 相談に至った
経緯
・家族が逮捕された
・起訴された・釈放してほしい
・執行猶予にしてほしい
年齢 50代
職業 会社員
罪名 自動車運転過失致死(法改正前のものが適用)
弁護活動の結果 執行猶予

背景

会社員であるAさんは、休日に車を運転していました。そして、交差点を右折する際、角に立っていた高齢の男性がさしていた傘に車を接触させてしまいました。その結果、男性は後ろに倒れ、頭を打ってしまいました。Aさんは、すぐに通報し、男性は救急車で運ばれました。しかし搬送先がCT等のない施設であったため、いったん帰宅しました。Aさんもその日は帰宅しました。しかし、男性の容体がその後急変し、自宅で倒れて亡くなっている男性が発見されました。
その後、数年間は刑事手続として何も進展がありませんでしたが、ある日突然検察から、「Aさんを起訴する、裁判になるから弁護士をどうするかを考えておくように」という連絡を受けました。そこで、Aさんご本人が来所され、ご依頼をいただきました。

弁護士対応 - 示談成立やAさんの反省態度を裁判所にアピール

Aさんの運転による事故と、男性が亡くなってしまったこととの因果関係を争うことも検討しました。しかしAさん自身が、亡くなってしまった男性のこと、そのご家族のことを考え、争いたくないと希望しました。
そこで、確かに結果は重大だが、交通事故という類型の中で、Aさんの過失の程度は軽いことを主として主張することとしました。また、ご依頼をいただいた時点で、Aさんが加入していた保険会社とご遺族との間で示談が成立していましたので、それらの書類を集め、分かりやすい形で報告書にまとめ、それらを裁判所に提出しました。
また、Aさんはご自身の行動をとても悔い、そして反省していましたので、その気持ちがしっかりと裁判官に伝わるよう、被告人質問の内容を、Aさんとよく話し合って決めました。

結果 - 執行猶予判決を獲得。

裁判の結果としては、無事に執行猶予付きの判決となりました。Aさんは事故から数年間続いた状況に区切りをつけることができ、安堵されていました。

弁護士からのコメント

弁護人としては、Aさんの過失の程度から考えると、罰金刑もありうるのではないかと考えました。確かに人が亡くなってしまったことは重大、そして残念な結果です。しかし、取るべき責任の重さを考えるときには、結果だけでなく、Aさんが犯してしまった行為の内容も十分に考えなければならないからです。
これを考えたとき、Aさんは交差点を曲がる運転手として十分な注意義務を果たしていなかったのは事実です。しかし、そこは狭い道であり、間を開けるのにも限界がありました。そして、Aさんは男性の体にぶつけてしまったのではなく、傘に引っ掛けてしまっただけです。また、もちろんスピードを出して曲がったわけではありません。この点を十分に考慮してもらいたいと考えました。
結果としては、残念ながら罰金刑は認められませんでした。しかし、Aさんは事故後数年間続いた状況がようやく一段落し、ホッとしている様子でした。