社用車で人身事故を起こしてしまった→会社に知られずに解決、刑事事件化を防ぐ

[事例 73] 交通事故 人身、死亡事故
性別 男性 相談に至った
経緯
・前科をつけたくない・不起訴にしてほしい
・会社や学校に知られたくない
・示談したい
年齢 30代
職業 会社員
罪名 過失運転致傷
弁護活動の結果 刑事事件化防止

背景

Aさんは高速道路上で、前方不注意による追突事故を起こしてしまいました。被害者は同乗者を含めて2名おり、2名ともケガを負っていましたが、人身事故ではなく物損事故扱いにしてくれました。
Aさんが運転していた車は勤務先の営業用の車でした。しかし、Aさんは、事故当時は仕事中ではなく、私用で車を使ってしまっていたのです。そのため、Aさん側で保険を使おうとすると、勤務先に社用車の私的利用と事故の事実を報告する必要がありました。Aさんとしては、その事実を会社に報告してしまうと、会社の中での自分の立場がかなり危うくなってしまうとのことで、その事実は会社には秘密にしておきたいとの希望でした。そのため、Aさんが運転していた車の保険は使えません。
そこで、Aさんからは、自分の代理人として被害者2名と示談をして、前科がつかないようにしてもらいたいとご依頼を受けました。

弁護士対応 - 被害者との示談交渉

この事件では、幸いAさんが被害者の連絡先をすでに教えてもらっていたので、当方で依頼を受けたあと、すぐに被害者2名と連絡を取りました。そして、被害者には、この事故については加害者側の保険は使わず、代理人弁護士を通じて加害者本人が誠意をもって対応すると伝えたところ、了承してもらえました。
そして、被害者の方では、まず、当面の治療費として、それぞれに20万円ほど振り込んでもらいたいとの申し出があったため、依頼者に合計40万円を振り込んでもらいました。その後、被害者から車の修理代の見積もりが出たとの連絡があったため、車の修理費用として約90万円を、依頼者から支払ってもらいました。そして、各被害者は約6か月間通院治療し、治療終了後に、加害者から各被害者に対して、治療費以外に約70万円を支払うということで示談ができました。

結果 - 刑事事件化せず終了。

各被害者とも、当該事故について人身事故への切り替えは行わないということを承諾していただき、示談書にも警察に被害届等は提出しないことを記載したので、刑事事件としてはそもそも立件されずに終えることができました。

弁護士からのコメント

本件については、依頼者の側から「絶対に会社に知られたくない」との希望があったため、当初から、当該事故の事実を依頼者の勤務先に知られないように細心の注意を払いました。上でも述べましたが、勤務先に知られないようにするには、事故の事実を勤務先に報告できないので、勤務先で入っている保険を使うことができません。そのため、加害者側では相当の金銭的負担をする必要があります。
最終的に、依頼者は、修理代や治療費等も含めて総額300万円近くを、被害者側に支払いました。当該依頼者は、それなりに資産や収入のある方でしたので、何とか支払いが可能でしたが、普通の方はなかなか用意できない金額だと思います。
ですので、勤務先の営業車を私用で使うことは厳に慎んだ方がよいと思われます。