性犯罪 [公開日]2022年2月28日

パパ活でお金をもらって逃げた・金銭を払わずに逃げたらどうなる?

パパ活とは、中高年の経済力のある男性から金銭を受け取ってデート等のサービスを提供することをいいます。

近年取り上げられることのあるパパ活ですが、これは犯罪なのでしょうか?
また、女性がお金をもらって逃げたり、男性がお金を払わずに逃げたりしたらどうなるのでしょうか。

1.パパ活は犯罪?

(1) パパ活自体は犯罪ではない

男性がパパ活を行うことそのものは、原則として犯罪になりません。
自分のお金をどう使うかは自由ですし、相手にお金を支払ってデート・食事・映画等に行く行為を禁止した法律もありません。

また、パパ活に際して性的行為を伴っていても、相手方が同意している限りは、強制わいせつ罪などの性犯罪に問われることはありません(ただし(2)で述べる場合を除く)。

他方、売春防止法3条は、売春行為、買春行為を禁止しています。売春とは対象を受け相手方と性交することをいいますが、パパ活に際して性交を行う場合には同条違反となります。
もっとも、同条には罰則規定はないので、パパ活が同条により処罰されることはありません。

(2) 例外的に犯罪になるケース

もっとも、相手方が18歳未満の「児童」「青少年」である場合や未成年の場合には、パパ活が犯罪になる可能性があります。具体的に以下の犯罪が成立し得るでしょう。

  • 児童との淫行を禁止する児童福祉法34条1項6号違反
  • 児童買春を禁止する児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律4条違反
  • 青少年との淫行を禁止する各都道府県が定める青少年健全育成条例違反
  • 誘惑・甘言で未成年者を自己の支配下におく未成年誘拐罪

相手方が未成年者の場合には、パパ活が未成年誘拐罪に該当することもあるので、性的行為を伴っていなくても犯罪行為となることがあります。

また、この場合(相手が未成年の場合)に性的行為があると、たとえ相手方が性的行為に同意していたとしても犯罪になります。児童福祉法や青少年健全育成条例は、性的に未熟な児童・青少年の保護を目的とするので、児童等の性的行為についての同意を、犯罪成立を妨げる事情としていないためです。

また、相手の年齢を問わず、サービスの内容に含まれていないのに無理矢理わいせつな行為、性交等をした場合は、強制わいせつ罪、強制性交等罪等が問題となります。

[参考記事]

パパ活と法律|パパ活は犯罪になる?

2.お金をもらって逃げた・金銭を支払わずに逃げた場合

(1) お金をもらって逃げたらどうなる?

では、パパ活に際して女性が先にお金をもらって逃げた場合、犯罪は成立するのでしょうか。

この点、当初からお金をもらって逃げようと思ってパパ活を行った女性には「詐欺罪」が成立する可能性があります。
パパ活をすると欺いて金銭をもらい、その結果、金銭が女性の元に移ったためです。

刑法246条1項
人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

なお、パパ活でも、売春をすると欺いて男性から金銭の交付を受けた場合は、男性は不法原因給付(民法708条)として金銭の返還を請求できないのであるから、女性に詐欺罪を適用して、男性の財産権を保護してやる必要はないという反対意見もあります。

しかし、男性の給付は女性からの欺罔行為に触発されたもので、女性の行為の違法性(社会相当性からの逸脱)が高いこと、男性は金銭という個別の財産を渡しており金銭の喪失自体を損害と評価できるとして、この場合にも女性に詐欺罪の成立を認めるのが通説であり、判例も結論は同じです(最高裁昭和33年9月日判決)。

もっとも、当初は本当にパパ活をするつもりで金銭をもらったが、その後、翻意して逃げた場合、詐欺罪は成立しません。なぜなら、詐欺罪が成立するには、相手をだます時点で詐欺の故意が必要なためです。

相手から金銭をもらった時点では詐欺の故意はないので、詐欺罪は成立しないのです。

(2) 男性側が金銭を支払わず逃げたらどうなる?

一方、男性が金銭を支払うと女性を欺いてパパ活によるサービスの提供を受けたが、対価を支払わず逃げた場合には、刑法246条2項の詐欺罪が成立する可能性があります。このいわゆる2項詐欺は、人を欺いて、サービスつまり役務の提供を得ることを内容とするからです。

刑法246条2項
前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

もっとも、サービスの内容が売春である場合に2項詐欺罪が成立するかは考え方が分かれます。

というのも、売春は公序良俗に違反するもので、売春という役務を提供しても、女性が対価を請求する権利を刑法で保護する必要はなく、男性が欺罔によって支払義務を免れて財産上不法の利益を得たとはいえないとして、2項詐欺罪の成立を否定する考え方があるためです(札幌高判昭和27年11月20日)。

逆に、同じようなケースで2項詐欺罪の成立を肯定する考え方もあるので(名古屋高判昭和30年12月13日LEX/DB文献番号27917435)、一応は詐欺罪が成立すると考えておいたほうが良いでしょう。

3.パパ活で逮捕されたら

男性側であれ女性側であれ、パパ活に際しての行為が犯罪に該当する場合には、逮捕される可能性があります。

逮捕・勾留(逮捕より長期の身体拘束)された場合には、最大で23日間身体拘束される可能性があります。その後起訴された場合には、有罪判決が出される可能性が非常に高いです。

特に、近年は性犯罪が厳罰化されているので、パパ活が児童福祉法違反青少年健全育成条例違反等となる場合には起訴される可能性が高いでしょう。

[参考記事]

逮捕から起訴・不起訴の決定までの流れ

起訴を回避したり、厳しい判決が出されるのを回避したりするためには、被害者と示談をする必要があります。
示談成立の事実は、被疑者に有利な事情として、検察官・裁判官が処分を決するに当たり考慮してくれます。

もっとも、示談交渉を被疑者本人で行うのは困難です。特に被害者が未成年の場合、示談の相手方はその保護者となるのですが、保護者は怒り心頭で示談交渉もままならないといったことはよくあります。
そのため、弁護人に示談交渉を依頼することが示談成立に不可欠です。

[参考記事]

児童買春事件における示談の注意点と弁護士の役割

パパ活を行って逮捕された方は、早急に泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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