押し付け痴漢も立派な痴漢犯罪です!逮捕されたら弁護士へ
「痴漢」というと、電車内等で無抵抗の女性に対して、長時間、手や指で臀部や胸を撫でまわすという卑劣な犯罪であると認識されている方が多いと思います。
もちろん、典型的なケースの認識としては間違っているわけではありません。
しかし、痴漢は必ずしも上記のようなケースに限定されているわけではありません。
今回は、一見普通の痴漢とは認識されにくい「押し付け痴漢」について解説していきます。
1.押し付け痴漢とは?
「押し付け痴漢」とは、満員電車などで男性が自身の体の一部(手の甲や下半身の一部など)を女性の胸や下半身などに押し付ける行為を指します。
もちろん、満員電車での偶然の接触は当てはまりません。
押しつけ痴漢は、手や指で「撫でまわす」「揉む」といった露骨な行為にまでは至らないことから、被害者である女性も「これは痴漢に当たるのだろうか?」と考えてしまい、声を上げにくくする要因となっています。
また、男性側も手や指で「撫でまわす」「揉む」といった行為に出ているわけではなく、単に体を押し付けているだけだから痴漢には該当しないだろうと考えたり、さらには、触れただけで痴漢と言うのは女性の痴漢でっち上げだと考えたりするかもしれません。
しかし、そのような押し付け痴漢もまた、法律で規制されている「痴漢」行為に当たると言えます。
(1) 押し付け痴漢も立派な痴漢行為
以下で、痴漢の際に適用される各都道府県の条例内容を確認してみます。
東京都迷惑防止条例
第五条 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
一 公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。埼玉県迷惑防止条例
第二条
4 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、他人に対し、身体に直接若しくは衣服の上から触れ、衣服で隠されている下着等を無断で撮影する等人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。神奈川県迷惑防止条例
第3条 何人も、公共の場所にいる人又は公共の乗物に乗つている人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次に掲げる行為をしてはならない。
(1) 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から、又は直接に人の身体に触れること。
東京都、埼玉県、神奈川県の迷惑防止条例を挙げてみましたが、各条例ともに「撫でまわす」「揉む」ということを条例違反の要件とはしておりません。
各条例に共通している文言は、①「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせる」こと、②(条例によって表現は異なりますが)「身体に直接若しくは衣服の上から触れ」ることの2点となっています。
このことからすると、女性を著しく羞恥させるものであれば、男性が自身の体の一部(手の甲や下半身の一部など)を女性の胸や下半身などに押し付けるだけの行為であっても、各迷惑防止条例に抵触することになります。
つまり、押し付け痴漢も立派な痴漢行為となり得るのです。
(2) 故意かどうかの判断基準
もっとも、迷惑防止条例は故意犯ですので、過失や不可抗力の場合には処罰の対象ではありません。
通勤時間帯の山手線や埼京線のように、車内が相当混雑している場合に周りの人達との身体的接触は避け難いでしょう。
例えば、電車が急ブレーキをかけたために倒れかかってしまい偶々近くにいた女性の身体に触れた場合は、不可抗力(あるいは過失)と言えるでしょう。
また、網棚に上げた荷物を下ろす際に肘が隣にいた女性に触れてしまったというケースも過失にとどまります。
しかし、各条例は「触れる」ということを要件の1つとしているため、その人が「女性に触れるつもりで」触れれば条例の定める要件の1つに該当することになります。
そこでは「満員電車だったから」等は言い訳になりません。
満員電車であってもなくても「女性に触れるつもりで触れ」、それが著しく人を羞恥させるものであれば迷惑防止条例に抵触し得ることになります。
被害にあった女性も「手や指で撫でまわされてまではいないから」などと躊躇する必要はなく、著しく不快な方法で「触れられて」いれば被害の声を上げる行為は正当になります。
【冤罪を避けるためにできること】
痴漢冤罪を100%防ぐ手段は残念ながらありません。それでも、可能性を下げる予防策を講じることはできます。
まず、女性との距離を置く、両手でつり革をつかむなど、女性に触れることもないように車内で気を付けることは可能です。また、偶然の接触があった場合も、直ちに誤解を回避するために「すみません」と一言述べたり、すぐに距離を置くようにしたりといったこともできるでしょう。
女性側から見ても、接触があった直後に謝罪の一言があれば偶然の接触であると認識できることになるはずです。男性側の意識の持ち方やわずかな言葉だけでも女性側の誤解回避、ひいては冤罪回避に繋がり得ます。
2.押し付け痴漢の解決事例
押し付け痴漢も痴漢の一態様であり、痴漢のでっち上げではありません。
ですから、偶然に女性の体の一部に手などが当たることがあっても、直ちに手を離さないと痴漢行為をしたことになり、検挙される可能性があります。
現に泉総合法律事務所では、押し付け痴漢を同一女性に対して複数回、日を変えて行ったことから悪質と評価されて逮捕された方のご家族が、当事務所の弁護士に刑事弁護を依頼されたことがあります。
その時は、担当弁護士が早急に被疑者に接見して事件概要を把握するとともに、翌日の検察官の取り調べに対する対応の仕方をアドバイスしました。
また、翌日午前中に検察庁に出向き、身元引受書や上申書、弁護士意見書を提出して検察官に働きかけ、勾留請求を阻止し釈放にこぎつけることができました。
被疑者は「痴漢した」という意識があまりなく、手が被害女性の体に当たったままにしていただけで痴漢には当たらないと考えていたのですが、被害女性の受け止め方は違います。
同一女性に対して複数回となると故意で触ったという評価になり、弁解の余地はなくなります。
押し付け痴漢を軽く考えず、男性側の見方と女性側の見方は違うことを意識することが重要です。
女性ならばどう考えるか、どう受け止めるかという観点を意識して行動することをお勧めします。
[参考記事]
痴漢で逮捕された場合の示談交渉は弁護士へ依頼
3.押し付け痴漢で逮捕されたら泉総合法律事務所へ
「痴漢など絶対にしない」と思っていても、ふと魔が差して痴漢をしてしまった、ということは誰にでもあり得ることです。
痴漢によって、逮捕・起訴される可能性はありますし、処分が罰金であってもそれは「前科」となります。
不起訴などで前科を回避し、最終処分を有利に導くためには、刑事弁護の経験豊富な弁護士に弁護依頼をすることをお勧めします。
上記のように、泉総合法律事務所は、世間一般的な痴漢の弁護はもちろん、押し付け痴漢の弁護も経験しております。
その他様々な刑事事件の弁護活動の実績が豊富ですので、もし刑事事件で逮捕されてしまった場合には、お早めに当事務所へ刑事弁護をご依頼ください。