痴漢 [公開日]2017年11月29日[更新日]2020年9月18日

痴漢容疑で線路から逃げることは正しいのか?

痴漢は、迷惑防止条例違反・刑法違反(強制わいせつ罪)となる行為です。
電車内や駅構内で痴漢事件が発覚したケースでは、被害者、目撃者、駅員、駆け付けた警察官らに身柄を取り押さえられ、まずは駅事務所等に連れていかれるでしょう。

このような場合、「痴漢を疑われた男性が線路上に降りて逃げる」ことがあります。

しかし、①実際に痴漢行為に及んでいた場合であると、②真実は痴漢行為などしておらず、濡れ衣を着せられた冤罪に過ぎない場合であるとを問わず、「線路を走って逃げる」という行為が抱えるリスクを考えると、おすすめできない行為であって、正しい対処法とは言えません。

今回は、痴漢事件の弁護実績が豊富な弁護士が、痴漢と疑われて線路に降りて逃げることの是非と、痴漢と疑われたときの正しい対処方法について解説します。

1.痴漢を疑われて線路に降りた事案

2017年5月、横浜市において、電車内での痴漢と疑われた30代の男性が、現場に駆けつけた駅員と話し合っている最中に、ホームから線路に飛び降り、逃走しようとしたところ、電車にはねられて死亡しました。

このように、線路上を走ることは、電車にひかれて命を落とすリスクが高いのです。

あなたが本当に痴漢の犯人であろうと、ただの濡れ衣であろうと、警察から逃れるために、かけがえのない命を危険にさらすべきではありません。

したがって、線路を走って逃げることは、正しい対処法ではありません。絶対におやめください。

【線路上に降りて逃げる行為は、それ自体が痴漢とは別の犯罪】
線路内にみだりに立ち入った者は、1万円以下の科料で処罰されます(鉄道営業法37条、罰金等臨時措置法2条)。
急ブレーキや脱線などで、多数の乗客・乗員にも危険を及ぼし、安全円滑な電車運行を阻害する可能性があるからです。
また、逃げる際に駅員や周りの人を押しのけるなどの行為があったときは、暴行罪、傷害罪、業務妨害罪にも問われる可能性があります。
加えて、実際に電車がストップすることを余儀なくされ、ダイヤを混乱させた場合には、民事上の損害賠償責任を問われ、鉄道会社から莫大な賠償金を請求される可能性もあります。

2.痴漢行為をしてしまい、見つかった場合の正しい対応

それでは、実際に痴漢を行ってしまい、それが見つかった時、どのような対処をすることが正しいのでしょうか?

(1) 逃げずに素直に駅員室へ同行する

まず、逃げないことが重要です。前述のように、線路上を逃げることは命の危険がありますし、それ自体が他の犯罪に該当したり、損害賠償を請求されたりするリスクがあるからです。

それだけではありません。
そもそも、実際に痴漢をしていた場合でも、素直に事実を認めて、警察署までの任意同行に応じ、真摯な反省の態度を示し、進んで自宅や職場を明らかにすれば、逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断されて、逮捕までいたらないケースが多いのです。

ところが、その場から逃げようとすれば、逃亡を防止するために、直ちに現行犯逮捕されてしまいます。

そして、いったん逮捕されてしまえば、「逃亡を図った事実がある」として、勾留決定されてしまい、身柄拘束が長期に及んでしまいます。

仮に、首尾良く逃亡できた場合でも、後の捜査で犯人であることが特定され、逮捕状によって通常逮捕をされた際には、やはり「逃亡した事実がある」として、勾留されることが必至です。

そこで、痴漢を疑われて、実際にやっていたとしても、とにかく冷静になり、逃げずに覚悟を決めることが大切です。

また、痴漢を疑われたとき「駅員室に行ってはいけない」と言われることがあります。

しかし、同様の理由から素直に駅員室に行くべきです。

特に、駅員室へ「行く、行かない」の言い合いは、駅員などとの身体や腕のつかみ合いなどに発展しやすく、それ自体が暴行罪、傷害罪、業務妨害罪として、痴漢行為の罪とあわせて立件されてしまうリスクもあります。

仮に、そうなると、「悪質な犯人」と評価され、単なる痴漢では済まなくなってしまいます。

(2) 謝罪すること

実際に痴漢行為をしていたなら、被害者にきちんと謝罪をしましょう。真摯に罪を認めて謝れば、被害者の被害感情、処罰感情も和らぐ可能性があります。

真摯に謝罪し、反省を示すことで、場合によっては被害届を出すのを思いとどまってくれて、事件とならずに済むこともあります。

また、被害届を出されてしまった場合でも、その場で謝罪していたかどうかは、後々、示談に応じてもらえるか否かに影響します。

[参考記事]

被害届を出されても示談で取り下げてもらうことはできるのか?

(3) 身元を明らかにし、連絡先を伝えること

被害者、駅員、警察には、免許証などの身分証明書を開示し、氏名・連絡先を伝えましょう。

(4) 弁護士を呼ぶこと

弁護士を呼ぶことも、逮捕を避けるために非常に有効です。

被疑者が本気で反省して謝罪、被害者と警察官に身元と連絡先を明らかにしてたうえ、いつでも出頭に応じますと言っても、簡単には信用してもらえない場合もあります。

しかし、弁護士が正式に弁護人となることを明らかにして、今後、被害者との示談交渉を担当し、被疑者本人への出頭要請があれば、弁護士が責任をもって本人に対応させると約束することで、逃亡の危険が乏しいと評価される可能性が高まります。

[参考記事]

痴漢の逮捕後の流れと弁護士に示談交渉を依頼するメリットとは?

【冤罪だった場合の正しい対処法】
一方、本当は痴漢をしていないのに、痴漢と間違われて取り押さえられてしまった場合でも、前述のとおり、線路上を走って逃げる行為は、自身の命の危険があるばかりでなく、それ自体が別の犯罪に該当したり、民事賠償責任を負ってしまう可能性があるのでおすすめできません。逃げずに正々堂々と否認することが正しい対処法です。
痴漢事件では、否認して逮捕された被疑者に対して、「素直に認めれば、すぐに釈放してやる」「認めれば起訴しない」「どうせ罰金で済むから認めてしまえ」など、警察の取調官から自白するよう強く迫られることがあります。しかし、取調官のこのような口車には絶対に乗ってはいけません。できる限り速やかに弁護士を選任し、身柄拘束中の取り調べに対して、どのように対応したら良いか、法的なアドバイスを受けることがもっとも正しい対処法です。また、早期に弁護活動を開始できれば、目撃者を探す、捜査機関から犯行状況とされている内容が当時の車内状況等と整合しているかどうかといった客観的事実の調査など、被疑者に有利な証拠収集も可能となります。
痴漢冤罪事件は長い闘いとなるので、早い段階から、強い情熱をもって刑事弁護にあたってくれる弁護士に依頼することが大切です。

3.まとめ

痴漢の疑いをかけられたら、本当にやっている場合であっても冤罪であっても、気が動転してしまうのは当然のことです。

しかし、上記のように、そこで必死に逃げようとして線路に降りてしまうといった行動は、絶対にしてはいけません。

逃げずに誠実に対応すれば、不利益を小さくすることができるでしょう。

痴漢の疑いをかけられたときにはもちろんのこと、実際に逮捕され身柄拘束されてしまった後でも、困ったときには、刑事事件に強い弁護士を呼んで、しかるべき弁護を受けるべきです。

泉総合法律事務所は、痴漢をはじめとした刑事弁護に積極的に取り組んでいます。万一の際にはいつでもご相談ください。

痴漢の刑事弁護は泉総合法律事務所まで

痴漢など絶対にしないと思っていても、ふと魔が差して痴漢をしてしまった、ということは誰にでもあり得ることです。迷惑防止条例違反の行為といえども、逮捕・起訴されたりしますし、処分が罰金であっても前科となります。

不起訴などで最終処分を有利に導くためには、刑事弁護の経験豊富な弁護士に弁護依頼をしてください。

泉総合法律事務所は、刑事事件、中でも痴漢の弁護経験につきましては大変豊富であり、勾留阻止・釈放の実績も豊富にあります。

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