痴漢 [公開日]2020年2月28日[更新日]2023年4月7日

痴漢する人の心理|「痴漢したい」という病気・依存症の治療は可能?

「痴漢」と聞くと、「被疑者が性欲を抑えられないだけ」「被疑者が異常な性癖を抱えているだけ」と考える人が多いと思います。
しかし、痴漢を行う人の中には、やめたいと思ってもやめられない、いわば精神疾患に罹っている人も存在します。

この記事では、「痴漢をやめられない」「痴漢したいと思ってしまう」という病気(依存症)の治療方法について解説します。

1.痴漢の刑罰

刑罰には、一般の方が犯罪を犯すことを思いとどまらせる効果(一般予防)と共に、犯罪者が再び犯罪を犯さないようにする効果(特別予防)が期待されています。
そうすると、痴漢を犯した人が再度痴漢をするのは、刑罰が軽いからなのでは?といった疑問が浮かぶのではないでしょうか。

そこで、痴漢をした場合の刑罰について確認してみましょう。

痴漢は、各都道府県の迷惑防止条例違反や、刑法上の強制わいせつ罪で処罰されます。
東京都の迷惑防止条例を例に出すと、痴漢は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金(常習犯は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)に処されます。また、痴漢が強制わいせつ罪にあたる悪質なケースでは、6月以上10年以下の懲役に処されます。

ここから分かるように、痴漢は、特に常習の場合は重い刑罰が科され、懲役刑に処される可能性もあります。
そのため、痴漢を繰り返してしまう理由は、必ずしも刑罰が軽いからとは言えないでしょう。

2.痴漢を犯す理由

痴漢の刑罰はしっかりと定められているというのに、なぜ痴漢のニュースはなかなか減らないのでしょうか。

痴漢行為を行う理由としては、以下の場合が考えられます。

  • 性欲の発散…性欲があり、それを実現するために痴漢をします。皆さんが最も想定する痴漢の理由と思われます。
  • 認知の歪み…被害者は痴漢をされて喜んでいる、抵抗しないのは自分を受け入れている証拠、露出が多い格好をするのは痴漢されたいと考えているからだ、といった、一種の偏見にとらわれて痴漢を行います。
  • ストレス…日ごろ溜まったストレスの発散として痴漢をしてしまいます。
  • スリルを味わう…ゲーム感覚で痴漢を行い、バレるかバレないかの瀬戸際を楽しむために痴漢を行います。
  • 自己愛が強い…他者からの承認を強く求める一方、他人を物のように見たりする傾向があるといわれます。
  • 性依存症にかかっている…性的衝動のコントロールが効かず、意志に反して痴漢をしてしまいます。

中には許し難い理由もありますが、痴漢を繰り返している人でも、痴漢が悪いことだと認識はしており、もう痴漢をするのはやめたい!と考えている人達はいます。
その人達の中には、性依存症という精神疾患に罹患している人が含まれている可能性があります。

性依存症とは、性的衝動のコントロールが効かなくなる状態で、れっきとした精神疾患です。そのため、性依存症の再犯を防止するには、特別予防を目的とする刑罰ではなく、病院での適切な治療が必要となります。
(なお、性依存症は正式名ではなく、正しくは性嗜好障害と言います。)

3.性依存症の治療方法

先述したように、性依存症は精神疾患のため、これを治すために必要なのは治療です。
最後に、性依存症の治療プログラムの一環と、痴漢を繰り返さないための生活習慣の変更について解説します。

(1) 病院での治療プログラムを受ける

依存症の治療を専門としている病院では、以下のような治療プログラムが準備されています。

集団精神療法

同じ悩みを抱える人達が集まって、それぞれが抱える問題を話し合い、自分の心の問題点を認識し、これを克服するための方法を模索する治療法です。

同じ悩みを持つ人の集団で行うことによって、より良い解決手段を発見できるだけでなく、孤独感を解消できるなどの効果があります。

集団認知行動療法

自己の誤った信念や思考を修正するものです。
痴漢常習者は、女性に対するゆがんだ認識を持っている例が多いのです。

「痴漢をされた女性がじっとしているのは、嫌がっていないからだ」
「むしろ女性も望んでいる」
「露出の多い服装で誘っている」
「満員電車に乗っているほうが悪い」

自分の頭の中にある考えが、客観的な事実とは違っていることを認識させて修正する必要があります。これを同じ悩みを抱える人達が集まって行うことで、共通する問題を再認識でき、他の人の克服方法を参考にするなど、より治療の効果を期待することができるのです。

内観療法

例えば、「母親にしてもらったこと」「母親にしてあげたこと」「母親に迷惑をかけたこと」をじっくりと時間をかけて思い出す作業を継続的に行います。
これにより、自分が大切にされていた存在であること、母親からしてもらうばかりで依存しやすく未熟であること、これまでの自分は迷惑をかけるだけの存在だったことなどを自覚させます。

決して道徳・倫理を押しつけるためのものではなく、自己を客観的に観察し分析してもらうことが目的です。

条件反射療法

痴漢常習者は、痴漢をして性的な快感を得られたという経験が積み重なることで、「電車内で女性を見ると痴漢をして快感を得たい欲求が生じる」という、「条件反射」が強化されてゆき、思考や理性で欲求を抑えることができなくなります。これを治療するには、次のような訓練を行います。

例えば、電車内で女性を見かけたら、「私は、今、痴漢をできない。できないが自分は大丈夫だ。」などと自分で決めたキーワードを発しながら、痴漢ができないように両手のひらをぐっと握りしめるなどの、これも自分で決めた動作を行います。この訓練を何度も繰り返すのです。

これは、電車内で女性を見かけたという状況に対する、「痴漢行為をしたくなる」という条件反射を、「痴漢をできない。大丈夫と言いながら両手のひらを握りしめる行為を行う」という条件反射に置き換えてゆく作業なのです。

このような訓練から始まり、最終的には、痴漢をしたくなる欲求それ自体を抑えることを目指します。

(2) 日ごろの習慣を変える

病院での治療プログラム以外でも、日常生活の習慣を変更することで、痴漢を行うのを防ぐことは可能です。

例えば、混雑した車両に乗らない、電車やバスに乗ったら両手を挙げる、これらに乗るにしても一人ではなく事情を知る家族・同僚・友達と共に乗るなどの習慣を付けることが挙げられます。

それでも、痴漢の欲求を抑えられない場合は、可能であれば電車やバスの利用をやめて車・バイク・自転車などの移動手段を用いるべきです。

4.痴漢をする心理に関するよくある質問

  • 痴漢をしたいと思う、痴漢をする人の心理とは?

    痴漢は、特に常習の場合は重い刑罰が科され、懲役刑に処される可能性もあります。
    それにも関わらず痴漢行為を行ってしまう理由としては、以下の場合が考えられます。

    • 性欲の発散…性欲があり、それを実現するために痴漢をします。皆さんが最も想定する痴漢の理由と思われます。
    • 認知の歪み…被害者は痴漢をされて喜んでいる、抵抗しないのは自分を受け入れている証拠、露出が多い格好をするのは痴漢されたいと考えているからだ、といった、一種の偏見にとらわれて痴漢を行います。
    • ストレス…日ごろ溜まったストレスの発散として痴漢をしてしまいます。
    • スリルを味わう…ゲーム感覚で痴漢を行い、バレるかバレないかの瀬戸際を楽しむために痴漢を行います。
    • 自己愛が強い…他者からの承認を強く求める一方、他人を物のように見たりする傾向があるといわれます。
    • 性依存症にかかっている…性的衝動のコントロールが効かず、意志に反して痴漢をしてしまいます。
  • なぜ痴漢をやめられないの?

    上記のような理由で痴漢を繰り返している人でも、痴漢が悪いことだと認識はしており、もう痴漢をするのはやめたい!と考えている人達はいます。
    その人達の中には、性依存症という精神疾患に罹患している人が含まれている可能性があります。

    性依存症とは、性的衝動のコントロールが効かなくなる状態で、れっきとした精神疾患です。そのため、性依存症の再犯を防止するには、特別予防を目的とする刑罰ではなく、病院での適切な治療が必要となります。

5.まとめ

性依存症を自分一人で改善するのは困難です。病院に行って適切な治療を受けることが何より重要です。

また、痴漢をどうしても止められないという場合、弁護士に相談することも有益な手段です。
刑事弁護に熱心な弁護士であれば、性依存症の改善方法を助言してくれるでしょう。

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