性犯罪 [公開日]2018年4月2日[更新日]2023年10月13日

児童ポルノ禁止法とは?児童ポルノと児童買春の規制

児童ポルノ禁止法とは?児童売春の規制も弁護士がわかりやすく解説

「児童ポルノ」という言葉は、ほとんどの方がお聞きになったことがあるでしょう。

2014年、「児童ポルノ」を規制する法律が改正されました。
それまで、児童ポルノの所持は、他人に販売や提供する等の目的でなければ処罰されませんでした。しかし、改正後は、児童ポルノを性的興味から「所持しているだけ」でも処罰を受けることになっています。

そして、そんな児童ポルノ禁止法は、児童買春も厳しく禁じています。

今回は、児童ポルノや児童買春を禁止している「児童ポルノ禁止法(規制法)」の規制内容や罰則について弁護士が解説します。

1.児童ポルノ禁止法について

(1) 概要

児童ポルノや児童買春を規制している「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」は、通称「児童ポルノ規制法」「児童ポルノ禁止法」「児童買春禁止法」と呼ばれる法律です。

児童ポルノ禁止法は、「児童ポルノ」の製造、所持、提供、輸出入などの行為を禁止しています。
それに加えて、同法は「児童買春行為」も禁止する法律です。

なお、児童ポルノや児童買春の詳細な意味については、後の項目でご説明します。

(2) 児童とは?

児童ポルノ禁止法で規制対象となるのは「児童」についてのポルノ画像や買春行為です。

ここで言う「児童」とは、18歳未満の者です。性別は問いません。
年齢が18歳以上の人が相手であれば、ポルノ画像を作成したり買春行為をしたりしても、この法律で処罰されることはありません。

また、この法律は過失による犯行を処罰していないので、相手のことを18歳以上と誤診し、犯罪事実の認識がなかった場合は、やはり犯罪は成立しません。

ただし、「18歳未満とは知らなかった」と言い訳をしても、相手の外見が見るからに幼い場合などには、事実の認識があったと認定されますから、簡単に言い訳が通用するわけではありません。

(3) 児童ポルノとは?

児童ポルノ禁止法では、児童ポルノの定義について「写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物であって、児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」とされています(法2条3項)。

ここで言う「児童の姿態」とは、以下のようなものを言います。

  • 児童を相手にしている、または児童同士による性交や性交類似行為(肛門性交、口淫等)
  • 他人が児童の性器等を触る行為や児童が他人の性器等を触る行為(但し、性欲を興奮させ又は刺激するもの)
  • 衣服の全部や一部を着けない児童の姿で、殊更に児童の性器やお尻、胸などを強調、露出した姿(但し、性欲を興奮させ、刺激するもの)

こういった児童の姿を記録した「写真」「画像」、またはこれらの電磁データーの「電磁記録媒体(HDD、SSD、CD、DVD、USBメモリー、ROMなど)」が「児童ポルノ」です。

ただし、性交行為および性交類似行為以外の姿態は、「性欲を興奮させ刺激するもの」という要件がついているので、家族のアルバムなどの水着や水浴びしている幼児、児童の写真は、通常は「児童ポルノ」に該当する姿態ではありません。
家族の団らんとして子どもと一緒にお風呂に入っている写真や、子どもの成長記録として撮影した写真なども、通常は同様に児童ポルノになりません。

ただ、「性欲を興奮させ刺激するもの」か否かは、撮影者の意図とは無関係ですから、たとえ家族写真であっても、常に児童ポルノに該当しないわけではありません。

例えば、家族との入浴中の写真であっても、性器が大写しされている写真であれば、殊更に児童の性的な部位が露出・強調され、かつ、性欲を興奮・刺激するものとして児童ポルノと評価される危険性は十分にあります。

しかし、児童ポルノ単純所持は、自己の性的好奇心を満たす目的がなければ処罰されませんから、たとえ児童ポルノと評価される家族写真を所持していても、それだけで犯罪が成立するわけではありません。
何が児童ポルノに該当するかという問題と、どのような行為が処罰対象となるのかという問題(後述します)を混同しないように注意が必要です。

【アニメは児童ポルノになるのか?】
アニメも児童ポルノに該当する場合があることは、写真や動画と何も変わりがありません。
ただ、児童ポルノ禁止法は、「実在する児童の姿態」を規制対象としているので、「架空の児童の姿態」は児童ポルノではありません。このため、架空の登場人物を描くことが多いアニメでは、写真や動画よりも、児童ポルノ禁止法違反に問われる例が少ないだけです。
実在する児童が性交する姿などをアニメで表現すれば、児童ポルノ禁止法違反となります(※最高裁令和2年1月27日判決(実在した児童をモデルとしたCGを児童ポルノと認定した事案)。

(4) 児童買春とは?

児童買春とは、児童に金品や財物などの「対償」を渡して、性交や性交類似行為、児童の性器などを触ったり、自分の性器などを児童に触らせたりすることです。
「買春」と言っても、「性行為」のみならず、その類似行為や性器など(性器、肛門、乳首)を触り、触らせる行為も処罰対象となります。

典型的なのは、「援助交際」と呼ばれる行為です。
女子中学生や女子高校生などにお金を渡し、性交やそれに類似する行為をすると、「児童買春罪」として処罰される可能性が高くなります。

[参考記事]

児童買春・援助交際の罪|逮捕される?初犯での処罰内容は?

2.児童ポルノに関する規制内容

次に、児童ポルノに関して規制される行為と処罰内容を確認しましょう。

児童ポルノについては、法律上、以下の行為が禁止されています。

  • 所持
  • 保管
  • 提供
  • 製造
  • 販売
  • 運搬
  • 輸出入
  • 公然陳列

2014年の法改正前は、児童ポルノの単純所持は規制されていませんでした。しかし、改正によって禁止されるに至っています。
つまり、児童ポルノについては自己の性的好奇心を満たす目的があれば「持っているだけ」で処罰され得るということです。

児童ポルノに関する規制内容と罰則は、以下の通りです。

規制内容 罰則
①自己の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持、画像データの保管 1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
②特定かつ少数の者に対する児童ポルノの提供、画像データの送信 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
③特定かつ少数の者に対する児童ポルノの提供目的での児童ポルノの製造・所持・運搬・輸出入、画像データの保管 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
④児童に姿態をとらせた上で画像を撮影しての児童ポルノの製造(目的を問いません。) 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
⑤盗撮による児童ポルノの製造(目的を問いません。) 3年以下の懲役又は300万円以下の罰金
⑥不特定又は多数の者に対する児童ポルノの提供、画像データの送信、又は児童ポルノの公然陳列 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその併科
⑦不特定又は多数の者に対する児童ポルノの提供目的や公然陳列目的での児童ポルノの製造・所持・運搬・輸出入、画像データの保管 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその併科
⑧日本人による外国での、不特定又は多数の者に対する児童ポルノの提供目的や公然陳列目的での児童ポルノの輸出入 5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金又はその併科

3.児童買春に関する規制内容

最後に、児童買春罪が成立する場合と刑罰の内容を確認します。

児童ポルノ禁止法により、「児童買春」に関連して処罰される行為には、単純な児童買春、児童買春のあっせん、人身売買の罪があります。

(1) 児童買春罪

まずは、単純な児童買春罪から見ていきます。

児童買春とは、児童に対し、「対償」を渡したり、渡すことを約束したりして、以下に該当する行為を行うことです。
「対償」とは「見返り」「対価」を意味し、典型的には金銭や物品(ブランド品など)ですが、それに限られるものではありません。

  • 性交
  • 性交に類似する行為
  • 児童の性器などを触る
  • 自身の性器などを触らせる

児童買春の刑罰は、5年以下の懲役または300万円以下の罰金刑です。

なお、「対償」なしに児童と性交や性交類似行為を行った場合には児童買春にはならず、別途「淫行条例」という条例違反が問題になってきます。

(2) 児童買春周旋・勧誘罪

自分が児童買春をしなくとも、児童買春を周旋したり勧誘したりすると、児童ポルノ禁止法による処罰対象となります。

刑罰の内容は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金刑です。懲役と罰金刑は、併せて(同時に)科される場合もあります(=併科)。

さらに、児童買春の周旋・勧誘を業務として行っていた場合、さらに重い「7年以下の懲役及び1000万円以下の罰金刑」が科せられます。

(3) 児童買春等目的人身売買等

児童買春や児童ポルノの画像、映像などを製造する目的で、児童を人身売買すると「1年以上10年以下の懲役刑」が科されます。
当然ながら、罰金刑のない非常に重い罪となっています。

4.まとめ

児童ポルノ禁止法は近年改正されましたが、これはそれだけ世間が児童に関しての性犯罪に厳しい目を持っているということです。
多くのケースで「児童ポルノ禁止法」と略されていますが、児童ポルノと児童買春を規制していますので、出来心などで抵触するような行為をしてしまわないようにしましょう。

万が一逮捕されてしまったら、すぐに優秀な刑事弁護人を選任することが何より重要です。

ご主人や息子さんなど、身内の方が児童ポルノ禁止法違反で逮捕されたら、すぐに泉総合法律事務所までご相談ください。

[参考記事]

児童ポルノ禁止法違反が発覚する経緯と逮捕後の流れ

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