暴力事件 [公開日]

現場助勢罪とは?野次馬も犯罪?要件・判例・条文の意味を解説

現場助勢罪とは?野次馬も犯罪?要件・判例・条文の意味を解説

【この記事を読んでわかる事】

  • 傷害事件に野次馬で関わったら罪に問われるって本当?
  • 「現場助勢罪」とはどんな犯罪?刑罰は?
  • 逮捕されてしまった場合、どうすればいい?

 

「現場助勢罪」という言葉をご存知でしょうか。何か揉め事・傷害事件が起こっているところを、野次馬としてはやし立ててしまった場合、刑事事件の被疑者となってしまうことがあります。

以下においては、現場助勢罪の趣旨、現場助勢罪の行為、現場助勢罪と傷害罪の幇助の関係、判例の立場、最近の事例、現場助勢罪で逮捕後の弁護依頼などに触れながら、現場助勢罪について解説することとします。

なお、以下の刑法における条文は、単に条文番号のみを掲げています。

1.現場助勢罪の趣旨

現場助勢罪は、傷害罪(204条)及び傷害致死罪(205条)が行われるに当たり、現場において勢いを助けることによって成立します(206条)。

206条の趣旨については、争いがあります。

①「傷害の幇助行為に類してはいるが、それに当たらない傷害等の現場における単なる助勢行為を独立に処罰するもの」
②「傷害等の現場における幇助行為を特に軽く処罰するもの」

①説が、判例(大判昭2.3.28刑集6・118)、多数説です。

①説によれば、206条は、喧嘩の現場において無責任な助勢行為が行われますと、喧嘩の規模・程度が拡大し、本来ならば生じないであろう重大な結果が生じるおそれがあることから、このような危険を防止するため、傷害又は傷害致死の犯罪が行われている現場での片面的な扇動的行為を独立に処罰することとしたものとします。

これに対し、②説によれば、206条は、野次馬の群集心理を考慮して、その責任を緩和することとしたものとします。

2.現場助勢罪の行為

206条
「前2条の犯罪が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。」

以下、その要件について説明します。

(1) 前2条の犯罪が行われるに当たり

傷害罪(204条)又は傷害致死罪(205条)を惹き起こすような実行行為、すなわち暴行が行われている時点という意味です。

そして、傷害又は傷害致死の犯罪が行われていることを要しますから、暴行の段階で助勢したもののこれらの結果が生じなかったときは、現場助勢罪は成立しません。

(2) 現場において

傷害又は傷害致死の犯罪を引き起こすような暴行が行われている時及び場所をいいます。

現場であるかどうかは、社会通念に従って客観的に判断されます。

(3) 勢いを助けた

野次馬的に扇動して行為者の犯罪意思を強めることをいいます。

行為者をはやし立て、その気勢を高めるものであれば足り、言語によると動作によることを問いません。

現場助勢罪が成立するには、現場で勢い助ける行為が行われれば足り、その助勢行為により実行行為者の実行が容易になったかどうかを問いません。

(4) 自ら人を傷害しなくても

助勢者が自ら人を傷害しなかったときはという意味です。

助勢者が自ら人を傷害したときは、傷害罪の共同正犯又は同時犯(207条)が成立し、現場助勢罪は成立しません。

【参考】判例から見る!刑法における同時傷害の特例の要件

3.現場助勢罪と傷害罪の幇助の関係

喧嘩の現場において、野次馬が、喧嘩の当事者双方を声援した場合、①説・②説ともに、現場助勢罪が成立するとします。

問題は、特定の行為者を声援した場合に、①説と②説で、現場助勢罪の成否に違いがあるのか、ということです。

例えば、喧嘩の現場において、野次馬が、喧嘩の当事者の一方に肩入れして、相手を「やってしまえ」などと声援し、喧嘩の当事者がその声援に鼓舞され、傷害行為に出た場合です。

①説では、傷害罪の幇助が成立するとし、②説では、傷害罪の幇助とはならず、現場助勢罪が成立するにすぎないとします。

また、喧嘩の現場で当事者双方に声援したが、傷害の結果に至らなかった場合、①説では不可罰となるとしますが、②説では暴行罪の幇助が成立する余地があるとします。

4.判例の立場

判例は、「206条は、傷害の現場における単なる助勢行為を処罰するものであって、特定の正犯者の傷害行為を容易にした場合は、傷害罪の従犯である。」としています(前掲大判昭2.3.28)。

5.最近の事例

相撲界での傷害事件において、その場にいた当事者以外の力士を現場助勢罪として立件すべきではないかという世論もあります。

②説に立つとすれば、特定行為者を声援した場合でも、現場助勢罪が成立することにはなりますが、裁判実務上は①説がとられており、特定行為者を声援したとする立証ができたとすれば、傷害罪の幇助が成立することになるものの、その立証は難しかったものと考えられます。

しかも、裁判実務が①説に立つ以上、その場にいた者が、当事者双方を声援したことが立証されない限り、現場助勢罪の立件は難しいと思われます。

しかも、助勢行為が必要なのは、傷害罪の実行行為が行われている時点ですから、その開始前の助勢行為は含まれませんし、また、その終了後の助勢行為もこれに当たりませんので、上記の傷害事件では立証上の困難さがあったものと思われます。

6.現場助勢罪で逮捕後の弁護依頼

被疑者の処分結果に影響を与えるのが、被害者との示談です。

したがって、被疑者に有利となる結果を導くには、いかに早期に示談を成立させることができるかにかかっています。

示談ができれば、勾留の手続に至る前に釈放されることも考えられます。

そうすれば、在宅のままで、検察官の処分を待つことができ、仮に、起訴となっても、略式手続で終わる可能性が大きいことになります。

しかし、たとえ罰金でも前科がつくことになります。被疑者が、不起訴処分の結果を望むのは当然のことです。

そして、事件後の早い段階で、示談が成立すれば、不起訴処分の可能性が出てきますので、早期に、法律のプロである弁護士に示談交渉を委ねるのが、望ましい結果が得られる早道ということになります。

【参考】傷害事件における示談。示談金・慰謝料相場と弁護士依頼のメリット

7.まとめ

被疑者は、ただの野次馬のつもりだったかもしれません。しかし、刑事事件はいつ自分が被疑者になってしまうか分かりません。

逮捕されてしまったら、すぐに弁護士に相談しましょう。刑事事件の弁護でしたら、実績豊富な泉総合法律事務所の弁護士にお任せ下さい。

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