家族が突然「傷害罪」で逮捕された|弁護士は何をしてくれる?
自分は大丈夫だと思っていても、家族や友人がいつ刑事事件に関わってしまうかは誰にも分かりません。
特に、「普段は温厚な人なのに酔っ払って人を殴ってしまった」「電車の中で口論となり傷害事件を起こしてしまった」ということは誰にでも起こり得るでしょう。
ここでは、そのような「傷害罪」を起こした家族(夫・息子など)が逮捕されてしまった後の流れ、及び刑事弁護方法について解説します。
1.傷害罪とは
傷害罪は、相手の生理的機能を侵害することによって成立します。
怪我をさせることは勿論ですが、必ずしも外傷の有無は問わず、性病を感染させること、精神障害を起こさせることなども生理的機能を害するものとして「傷害」となります。
なお、暴行を加えても相手が怪我をしなかった場合は、傷害罪ではなく暴行罪が成立します。
傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となっています。
2.傷害罪で逮捕後の流れ・手続き
次に、傷害罪で「逮捕」された場合、どのような手続きが行われるのか、そしてどれくらい身体拘束が続く可能性があるのかを説明していきたいと思います。
(1) 逮捕
何らかの犯罪により逮捕されてしまった場合、被疑者の身柄は警察署に留め置かれることになり、以降、警察官による取り調べ等の捜査を受けることになります。
警察官は逮捕から48時間以内に被疑者の身柄を検察官に送致しなければなりません(「検察官送致」と呼びます。マスコミ用語では「送検」です)。
(2) 勾留
警察官から被疑者の身柄を送致された検察官は、今度は身柄を受けとってから24時間以内かつ逮捕から72時間以内に「勾留」を裁判官に請求する必要があるかどうかを判断しなければなりません。
「勾留」とは、逮捕に引き続き被疑者の身柄を警察署内に留め置くことを言い、法律上、勾留を請求した日から10日間(延長が認められた場合は最大で20日間)というリミットが設定されています。
検察官が「勾留請求をしない」という結論に至った場合には、被疑者の身体はこの時点で開放されます。
逆に「勾留請求する」という結論に至った場合、検察官は勾留請求を裁判官に対して行います。
裁判官がこれを認めれば被疑者は勾留され10日間(延長された場合最大20日間)の身体拘束を引き続きうけるという流れになります。
裁判官がこの請求を却下した場合、被疑者の身体は開放されます。
勾留を認める理由としては、被疑者に犯罪の相当な嫌疑があり、証拠隠滅する可能性・逃亡の恐れがあるという勾留の必要性が存在することが挙げられます。
弁護士以外の一般の方(家族を含む)の面会は、「逮捕」の状態の時には認められていません。
つまり、身体拘束を受けたばかりの、一番被疑者が不安であり精神的にも安定しない時に、ご家族やご友人など励ましてくれる方々との面会はできないということになります。
「勾留」に至ってしまった場合、検察官の申請に応じて裁判官が「接見禁止」を下さない限りは一般の方も接見を行うことができますが、平日の日中の限られた時間しか面会できず、警察官も立ち会うことになります。
これに対し弁護士の接見は逮捕後すぐに可能で、接見禁止中でも行うことができ、また、曜日や時間に限りがありません。
参考:接見とは?接見を制限された場合には弁護士に相談を
(3) 起訴・不起訴の処分決定
勾留されてしまった被疑者について、検察官は勾留期間中に刑事裁判にかけるか否かの最終的な処分を決めます。
種類としては、公開の法廷での正式裁判にかける「公判請求」、裁判所の書類上の手続(略式手続)だけで罰金刑を受ける「略式起訴」(この二つが「起訴処分」です)、そして起訴しないことに決める「不起訴」処分があります。
また、起訴不起訴の決定を決めずに身柄を解放して、引き続き捜査を行う「処分保留」もあります。
なお、期間制限は身柄拘束に対するものであり、起訴・不起訴の決定を制限する期間ではありません(起訴決定の期間制限としては別に公訴時効制度があります)。
このように、①当初から身柄拘束されていない事件、②身柄拘束されたが期限途中で釈放された事件、③処分保留として釈放された事件(これらを総じて「在宅事件」と呼びますが)では、公訴時効期限を除き、起訴・不起訴の結論を出さなくてはならない期間は決まっていません。傷害罪の公訴時効は犯行から10年です。
したがって、在宅事件では、捜査機関の繁忙などによって、起訴・不起訴の結論が出るまでに長い期間を要するケースが珍しくはありません。
早くても数か月、長いと数年がかかるものもあります。
3.弁護士の活動
傷害事件について、弁護士に刑事弁護を依頼した場合、弁護士が行う基本的な弁護活動は下記のとおりです。
(1) 逮捕~勾留時の接見
逮捕中は、家族でさえ面会ができませんから、被疑者の味方として話ができるのは刑事弁護人に限られます。
弁護士は、被疑者から家族への伝言を聞いたり、逆に家族からの伝言を伝えたり、取り調べへのアドバイスをしたりします。
そして、重要なのが、検察官に対して「勾留請求」しないように働きかける活動です。被疑者に勾留の必要性がないことをアピールすることで、勾留請求の阻止を試みます。
たとえば、次のようなアピールです。
①被疑者が傷害の犯罪事実を認めており、すでに捜査機関によって確認され供述調書化された目撃者の証言や押収済みの防犯カメラの記録映像といった証拠の内容と被疑者の自白が一致している。
②しかも、見知らぬ酔客同士の口論に起因する喧嘩であり、格別、動機の解明を要する事案ではないから、これ以上の証拠収集の必要もなく、全ての証拠は揃っている。そのため、もはや被疑者が証拠を隠滅する危険性がない。
③被疑者には定まった住居があり・心配する家族がいる、しっかりした勤務先・通学先があることから逃亡の恐れがない。
それでも勾留請求されてしまった場合には、同様の内容を裁判官にもアピールし、勾留を認める決定を出さないように働きかけます。
(2) 被害者との示談
犯行を自白している刑事事件における最重要の弁護活動のひとつは、「被害者との示談」を行うことになります。
というのも、この示談の結果によっては勾留の期間に影響を及ぼすこともありますし、最終的な処分が軽くなる可能性を大きく高めることもあるからです。
しかし、当事者同士やその家族が被害者と示談交渉を行おうとしても、そもそも被害者側の連絡先の開示すら受けられませんし、仮に話ができても平行線をたどり全く話が進まないことがほとんどです。
そこで、弁護士が間に入ることで、この示談交渉がまとまる可能性は大きく高まります。
なお、在宅事件においても、自白事件の基本的な弁護活動は同様に取り調べへのアドバイスと示談交渉活動になります。
(3) 最終的な処分への意見
刑事弁護人は、検察官に対して直接話をしたり、意見書面を提出したりという働きかけをすることができます。
そこで、最終的な起訴・不起訴の処分が出される前に、示談活動の結果や被疑者の反省状況などを書面にまとめて提出し、口頭でも説明することで少しでも処分が軽くなるようにアピールすることができます。
(4) 裁判への対応
それでも検察官が正式起訴による「公判請求」をして刑事裁判になってしまうことがあります。
自白事件の傷害罪の場合、懲役刑を回避して罰金刑で済ませること、仮に懲役刑でも執行猶予付き判決を得ることが、大きな目標となります。
そのために弁護士は、大きく分けて、①犯罪事実の内容が悪質ではないこと、②情状が良いことの2点を裁判官に主張していきます。
①犯罪事実の内容が悪質ではないこととは、例えば次のような主張です。
(ⅰ)居酒屋での酔客同士の喧嘩であって、突発的な傷害事件で、計画性はなく、犯行動機としても単純なものに過ぎない。
(ⅱ)凶器など用いずに素手で殴ったに過ぎず、それも複数回ではなく、転倒した場所にたまたまビール瓶があって怪我が大きくなるという不幸が重なったもの。
(ⅲ)被害者が倒れた後に、追い打ちの暴行をしたりすることはなく、かえって驚いて助け起こそうとした事実がある。②情状が良いこととは、例えば、次のような主張です。
(ⅰ)示談が成立し、損害賠償金は支払い済みで、被害者が宥恕を表明している。
(ⅱ)被害者の怪我は完治した(あるいは、○月ころ完治見込み)。
(ⅲ)前科・前歴がない。
(ⅳ)謝罪の手紙を何度も被害者に送り、保釈後は直接に面会して謝罪している。
(ⅴ)職場や学校において、役職や委員活動など信頼を得てきた事実がある。
(ⅵ)家族や上司が今後の監督を誓約している。
もちろん、これらの各事実は、証言や証拠書類で裏付けられるものでなくては裁判官を説得できません。そこで弁護士は、証拠書類を収集して提出し、法廷での被告人質問や情状証人としての家族が証言する内容の打ち合わせを行います。
こうして、裁判官に対して判決が少しでも軽くなるようにアピールします(最終弁論)。
4.当事務所の解決事例
最後に、当事務所が実際に解決した「家族が傷害罪で逮捕されてしまった」事件の事例をご紹介します。
(1) 事件の内容
Aさん(21才)は大学生でしたが、アルバイト仲間と飲みに行った際、同僚と喧嘩になってしまい、相手に暴行行為をして怪我させてしまいました。Aさんはかなり酔っていたこともあり、通報により駆けつけた警察が来た後も暴れてしまったことから、最終的に傷害罪で逮捕され、警察署に連れて行かれてしまいました。
Aさんは、両親と兄弟の4人暮らしでしたが、事件から数時間後、家族のもとに警察から「Aさんが逮捕され、警察署に留置されている」ことが伝えられます。この電話に出たAさんの父親は、警察官にすぐに息子に会いたいと伝えましたが、「逮捕されている間に面会はできない」と断られてしまいました。
この様な経緯で、Aさんの両親は当事務所のHPを見てご来所し、当事務所の刑事事件弁護士が依頼をお受けすることになりました。
(2) 示談成立、不起訴
依頼を受けた弁護人は、まずAさんの勾留を回避すべく、意見書を作成しこれを検察官に提出しました。しかし、Aさんは勾留されてしまいました。
そこで、早期の身体拘束からの解放、不起訴処分の獲得を目指して、すぐに被害者との示談交渉に臨みました。
被害者の怪我は軽微とは言えず、大変お怒りでしたが、タイムリミットもある中、何度も連絡を取って被疑者の反省や家族の対応を説明し、誠意のある慰謝料を支払うことで、なんとか期限内に示談をまとめることができました
きちんと反省をし、被害者の方とも示談が成立してお許しをもらっていたこと、身体拘束から早急に解放して大学の授業に出席しないと留年してしまう可能性もあったこと、被疑者の年齢も若くこの時点で「前科」がつくことは被疑者にとってあまりに不利であること等をアピールしたところ、前科・前歴がなく初犯だったことも併せて、最短の10日の勾留で無事に「不起訴」として釈放されることになりました。
傷害事件において、逮捕の期間と合わせても10日少しの間に家族を含む当事者同士で示談をまとめられる可能性は、率直に言ってかなり低いと思われます。
被害感情が大きく示談に応じて頂けないということも少なからずあります。
今回は、やはり早急に弁護士を付けたことが、迅速に解決した最大の要因と言えるのではないでしょうか。
5.傷害罪に強い弁護士に相談を
泉総合法律事務所は、刑事事件弁護に特に力を入れており、通常の法律事務所以上の経験と実績を持っています。この違いは非常に大きなものです。
もし家族が突然逮捕されてしまったという場合、早期に弁護士に依頼することで、釈放・示談交渉による不起訴が可能となります。お早めに泉総合法律事務所へとご相談ください。