暴力事件 [公開日]2017年7月26日[更新日]2023年5月17日

重傷の傷害事件で逮捕されても、弁護士が示談すると不起訴になるか?

重傷の傷害事件で逮捕されても、弁護士が示談すると不起訴になるか?

傷害事件を起こしてしまった場合、「酔っ払っていて覚えていない」と否定するか・否定しないか、相手が軽傷か・重傷か、お互いに暴行を加えていたか・一方的だったか等、様々なパターンがあり、それにより弁護方針も異なってきます。

特に、相手の怪我が重傷なケースでは、早期に弁護士に依頼をして被害者と示談をすることが不起訴のために大切です。

ここでは、全治6ヶ月等の重傷の傷害事件の刑事弁護について解説します。

1.傷害事件の処分の決まり方

刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

傷害事件において、起訴されるか・不起訴になるか、刑罰が重くなるか・軽く済むかの判断で最も肝心なのは傷害の程度です。

刑事事件で逮捕されると、逮捕から48時間以内に検察庁に身柄を送致されますが、軽傷ならばその後の検察官の取り調べに先立ち弁護士が釈放に向けての意見書を提出するなどして働きかけることで、釈放されることも多くあります。

しかし、傷害の程度が重傷ですと釈放は難しくなり、被害者の示談できなければ罰金刑に留まらず起訴・正式裁判の可能性が高くなります。

2.実際にあった重傷の傷害事件の刑事弁護

(1) 事件の概要

当事務所がかつて承った傷害事件の刑事弁護の事例についてぼかして言及しますと、「飲み屋で酔っぱらっていたら近くの人が絡んできたのでつい殴ってしまいました」というケースで、ひどい暴力を加えて被害者が大けがをした事案がありました。

もちろん、被害者は警察に被害届を提出し、医師の診断書も提出しました。
幸い後遺症はありませんでしたが、かなりの大けがで、傷害の部位から再発が懸念されるような重傷でした。

警察は、店内、道路、最寄り駅の防犯カメラを解析し、更にSUICAの使用履歴の分析などをして被疑者にたどり着き、数ヶ月後に令状逮捕にこぎつけました。

この傷害事件では、被疑者の家族が大まかな状況しか分からず、単に「警察に逮捕されて留置場に留置されている」程度しか分からない状況で、当所に弁護依頼をされました。

(2) 勾留決定・準抗告の棄却

重傷事件となった本件では、弁護士が検察官に勾留の必要性はないと働きかけましたが、残念ながら勾留請求となり、その後勾留請求を審理する裁判官に対しても弁護士の意見書などを提出して釈放を働きかけましたが、勾留決定となりました。

それでも諦めずに、準抗告(3名の裁判官からなる裁判所に対して、別の裁判官の勾留決定の取り消しを求めて裁判を提起すること)をしましたが、棄却されました。

準抗告の棄却決定では、傷害の程度が重大であったこと被疑者の弁解が被害者・目撃者の証言と食い違うこと、逃亡の恐れがあることを棄却の理由としておりました。

(3) 勾留後・勾留中の示談活動

被疑者が10日間の勾留となると、逮捕とあわせて2週間近く身柄拘束され、かなりの期間で欠勤となります。
また、本件は傷害の程度が重かったので、起訴・正式裁判の可能性もありました。

起訴されれば、保釈までさらに勾留されること、執行猶予がついても前科がつくことになりますので、それは何とか避ける必要があると弁護士は考えます。

そこで、当所の弁護士は被害者の連絡先を検察官から教えてもらい、その後、直ちに弁護士から被害者に連絡を入れ、勾留期間内での示談成立を目指しました。

傷害の程度は重傷でしたが、傷害事件から数か月経過して傷害も治癒しており、被害者の被害感情も多少和らいでいたように思えました。
被害者の代わりに謝罪するとともに謝罪の手紙を渡して、被疑者の事情もある程度汲んでいいただき、何とか示談をまとめさせていただきました。

(4) 不起訴を獲得(解雇されず)

翌日、示談書を検察官に提出したところ、その日に勾留取消となり、釈放されて元通り出勤することができるようになりました。会社は解雇とならずに、刑事処分は後日不起訴となりました。

この重傷の傷害事件では、示談できなければ起訴され正式裁判になる可能性があり、そうでなくても罰金刑になる可能性は高かったでしょう。

 

泉総合法律事務所では、被害者が勾留決定となった場合、早急に示談活動を行い、勾留期限前に示談を成立させて釈放となるように最大限努力しています。

もっとも、示談は被疑者の都合や考えもありますので、勾留期限内にできるとは必ずしも限らないのも事実です。一日でも早い釈放のため、どうぞお早めに弁護士へご相談ください。

3.傷害事件の刑事弁護ポイント

傷害事件を起こしてしまった場合、特に重傷事件で勾留となったケースでは、示談取り付けによる釈放活動・不起訴活動が必要となります。

泉総合法律事務所は、釈放活動経験、示談交渉経験が豊富な弁護士が多数在籍しており、釈放に向けて諦めずに弁護活動をいたします。
初回相談は無料となっておりますので、どうぞお早めにご相談ください。

4.傷害事件に関するよくある質問

  • 傷害事件で警察は動く?動かない?

    「飲み屋で酔っぱらっていたら近くの人が絡んできたのでつい殴ってしまいました。怖くなって飲み屋から逃げ出したのですが、どうしたらいいでしょうか?」
    弁護士事務所では、こんな質問を時たまに受けます。

    殴られた人が警察に被害届と医師の診断書を提出すれば、傷害罪として警察は捜査を開始します。
    怪我の程度が全治6ヶ月以上などかなりの重傷であれば、街の治安のためにも警察の捜査の力の入れようも本格的なものになるでしょう。

  • 傷害事件で警察を呼ばれた後の流れは?

    泉総合法律事務所が弁護依頼を受ける傷害事件は、ほとんどが酒で酔っぱらったケースです。
    (先述のような重傷の傷害事件もありますが、多くは軽度の傷害事件です。)

    酔っていると、その場から逃走することはあまりなく、軽傷ならばそのまま警察に連行されて任意での事情聴取を受け、手書きの上申書を作成したところで釈放されるケースが多いです。
    そして、後日警察に呼び出されて供述調書を作成したところで警察での捜査は終了し、検察庁に書類送検されるのが通常だろうと思われます。

    他方にも非があり(一方的ではなく互いに暴行をしたなど)、傷害の程度が軽微な場合には、弁護士を通して示談すれば警察が検察庁に書類送検せず事件を終了させる(微罪処分)こともありえます。

    一方、重傷の事件であれば、警察は被疑者を逮捕してそのまま勾留となることが多いと考えられます。

    【参考】逮捕後の勾留の要件とは?勾留の必要性を否定して釈放を目指す

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