身近な法律の疑問 [公開日]2020年5月12日[更新日]2023年12月15日

ナンパ・客引きは犯罪行為?逮捕されるのか?

しつこくナンパをしたり、ナンパの際に女性の身体を触ったり、認められていない地域で客引き行為を行ったりすると、警察を呼ばれてしまう場合があります。

ナンパや客引きをしている時に警察を呼ばれてしまったら、逮捕や起訴に繋がらないように慎重に行動する必要があります。

この記事では、ナンパ・客引きについて成立する罪の内容(犯罪行為の内容)、ナンパ・客引きで警察を呼ばれてしまった場合の対処法などについて、法律の専門的な観点から解説します。

1.ナンパ・客引きで成立する罪

まず、ナンパ・客引き行為に成立する罪としてどのようなものがあるか、および各犯罪の法定刑について解説します。

(1) ナンパで成立する罪

ナンパに成立する可能性があるのは、①軽犯罪法違反、②迷惑防止条例違反、③ストーカー規制法違反の3つです。

軽犯罪法違反

軽犯罪法1条28号は、「他人の進路に立ちふさがって、若しくはその身辺に群がって立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者」について、拘留または科料に処す旨を規定しています。なお、拘留と科料は併科される場合があります(同法2条)。

ナンパの声掛けをするだけなら問題ありません。
しかし、相手が拒否しているのに無理やり引き留めるような形でナンパをすると、軽犯罪法違反に問われる可能性があります。

迷惑防止条例違反

度が過ぎたナンパ行為は、各都道府県が定める迷惑防止条例が禁止する「つきまとい行為」に該当する可能性があります。

たとえば東京都の迷惑防止条例5条の2第1項第1号は、「つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと」を反復して行うことを禁止しており、これに違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます(同条例8条2項2号)。

また、ナンパに断られた腹いせなどで女性の身体(胸やお尻)に触る行為も迷惑防止条例違反・不同意わいせつ罪になる可能性があります。

ストーカー規制法違反

さらに、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(通称:ストーカー規制法)にも、「ストーカー行為」の禁止規定があります(ストーカー規制法2条3項)。
禁止されている行為の内容は迷惑防止条例とほぼ同じで、違反した場合の法定刑も1年以下の懲役または100万円と同じです(同法18条)。

なお、ストーカー行為が行われると、都道府県公安委員会からストーカー行為の禁止命令がなされる場合があります。

禁止命令に違反して再びストーカー行為に及んだ場合、さらに重い2年以下の懲役または200万円以下の罰金に処せられることになるので注意が必要です(同法19条1項)。

(2) 客引きで成立する罪

客引き行為に成立する可能性がある罪は、①風営法違反、②迷惑防止条例違反の2つです。

風営法違反

「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(通称:風営法)22条1項1号は、風俗営業に関して客引きを行うことを全面的に禁止しています。

また、風俗営業に関して客引きをするため、道路などの公共の場所で、人の身辺にたちふさがり、又はつきまとう行為も禁止されています(同条2項)。

これらの禁止規定に違反すると、6月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金に処されることになります(同法52条1号)。
なお、懲役と罰金は併科される場合もあります。

迷惑防止条例違反

各都道府県が定める迷惑防止条例においても、客引きに関連する行為が禁止されている場合があります。

たとえば、東京都の迷惑防止条例7条1項1号から4号では、以下の客引き行為が禁止されています。

  • わいせつな見せ物などに関する客引き行為
  • 売春類似行為を目的とする客引き行為
  • 異性による接待をして酒類を伴う飲食をさせる行為などに関する客引き行為
  • 執拗な客引き行為

これに違反して客引き行為を行うと、50万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処せられます(同条例8条4項5号)。

なお、客引き行為を規制する必要性が高い地域として東京都公安委員会が指定する地域において、わいせつな見せ物や性的なサービスに関する客引き行為を行った場合、さらに重い100万円以下の罰金に処せられます(同条3項2号)。

2.ナンパや客引きで警察を呼ばれてしまったら

では、万が一違法なナンパや客引き行為を行い警察を呼ばれてしまった場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。

(1) 警察の取り調べには最大限協力する

まず、警察の取り調べに対しては最大限協力した方が良いです。
嘘をついたり、言い逃れをしたりすると、反省をしていないと見られて重い処分が下される可能性が高まります。

無理やりその場から逃げようとするなどの行為はもってのほかです。
無理に逃走しようとすると、警察はやむを得ず現行犯逮捕に及ぶ可能性があります。

また、警察に対して暴力を働いた場合、傷害罪や公務執行妨害罪という非常に重い刑罰が課される罪に該当してしまいます。

ナンパや客引き行為については、真摯な反省を見せれば軽い処分で済んだり、不起訴になったりする可能性も十分にあります。
後に不利益を被らないためにも、警察の取り調べには真摯に協力しましょう。

(2) 身分を明かしておく

ナンパや客引き行為を行った人が証拠を隠滅したり、逃亡したりする可能性があると判断されると、警察は逮捕に及ぶ可能性があります。

逮捕を避けるためには、自ら身分を明かしておくことが有効です。
身分を明かすことにより、証拠隠滅や逃亡のおそれが小さくなり、逮捕の必要性がなくなります。

そのため、警察から身分を聞かれた際には、身分証を提示するなどして正直に身分を明かしましょう。

3.弁護士に相談するメリット

もし、ナンパや客引きで警察を呼ばれてしまった場合は、すぐに弁護士に相談してください。
警察の捜査が続いている場合、いずれあなたは起訴されて罰金刑を言い渡されたり、裁判にかけられたりしてしまうかもしれません。

そうなってしまう前に、法律の専門家である弁護士とともに対策を考えましょう。

(1) 取り調べに関するアドバイスをもらえる

捜査機関が起訴を検討している場合、あなたに対して取り調べが行われることになります。

被疑者には黙秘権が認められているので、取り調べに答えるのも答えないのも自由です。
しかし、警察の巧みな誘導に従い、不利益な供述を引き出されてしまう可能性も大いにあります。

一度話してしまった内容は、裁判になった際に被疑者に不利な証拠として用いられてしまうことになります。
そのため、取り調べにどのような姿勢で臨むかが極めて重要になります。

弁護士は被疑者に対して、法律の専門的な観点から取り調べについてのアドバイスをしてくれます。

取り調べに備えて、できるだけ早く弁護士に相談してください。

(2) 不起訴に向けての弁護活動をしてもらえる

もし起訴されてしまうと、有罪になって刑罰が課される可能性が非常に高くなります。

最悪の場合懲役刑に処せられるほか、罰金などで済む場合であっても前科が付いてしまい、社会生活上大きな障害になってしまう可能性があります。

そのため、弁護士のサポートを受けて、不起訴(起訴猶予)にしてもらえるように、できる限りの行動をすることが必要です。

弁護士は、被害者との示談交渉や謝罪文作成のサポートなどを通じて、検察官に対して被疑者に良い情状があるということを訴えます。

こうした弁護活動により、ナンパや客引き行為で警察沙汰になった場合であっても不起訴となった例が数多くあります。

4.警察の取り調べ段階から弁護士へご相談を

ナンパや客引きに関する規制は近年強化されており、悪質なケースでは警察沙汰になることも珍しくありません。

万が一、ナンパや客引き行為を行って警察を呼ばれてしまった場合には、できるだけ早めに弁護士に相談することをおすすめします。

特に、警察からの取り調べには適切に対処をする必要があります。お困りの方は、泉総合法律事務所の無料相談をご利用ください。

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