身近な法律の疑問 [公開日]2018年3月28日[更新日]2021年8月6日

刑事事件と民事事件の違いとは?

「事件」という単語は皆さん聞き慣れていると思いますが、「刑事事件」と「民事事件」は具体的にどのような点が異なるのでしょうか?

同じ「事件」でも、刑事か民事かで取るべき行動や手続き方法が異なります。

今回は、自分や家族が起こした事件が刑事事件だとしたらどのような手続きが必要なのか、どう対応したら良いのか等を解説します。

1.刑事事件と民事事件の違い

「事件」とは、一般的な用語としては「殺人事件」「誘拐事件」のように、「犯罪事件」すなわち犯人が刑罰法規に違反した「刑事事件」を指します。

しかし、法律家の世界では、「事件」とは、単なる「案件」「事案」を意味する言葉として使われています。

このため、刑罰法規に違反し、刑事裁判の対象となりうる案件を「刑事事件」、それ以外の民事裁判の対象となりうる案件を「民事事件」と称しています。

(1) 刑事事件|個人と国の裁判

刑事事件の代表的なものは、殺人、強盗、暴行、窃盗などです。
国家は刑法などの法律によって犯罪行為をあらかじめ決めておき、刑事裁判によって、犯罪行為の有無を判定し、法を適用し刑罰を与えます。

刑事裁判では、訴えるのは「検察官」と決まっていて、訴えられた人は「被告人」です。

「被告人」は一個人に過ぎず、強大な組織力・法律の専門知識・強制捜査権を有する捜査機関を相手に裁判で闘うことは事実上困難です。そこで、被告人の利益を守る保護者的・後見人的な存在として「弁護人」を選任する権利が保障されています。

また、一定の重大な犯罪については、弁護人がいなければ刑事裁判を開くことはできないと定められています。刑事事件の「弁護人」になれるのは原則として弁護士だけです。

刑事裁判で主に問題になるのは、その人が本当に罪を犯したかどうかと、罪を犯した場合にはどのような刑罰を与えるかということです。

刑罰には、「死刑」や「懲役」だけでなく、「罰金」も含まれます。罰金刑で処罰されたケースでも、刑罰を与えられたということですから前科がつきます(民事裁判で敗訴しても前科はつきません)。

参考:罰金でも前科です!

また、刑事事件には「裁判員裁判」が導入されていますが、民事事件にはありません。

(2) 民事事件|私人と私人の裁判

民事裁判は、私人と私人の間における金銭問題(例えば、借金の返済請求、交通事故の損害賠償請求、遺産分割など)や身分問題(例えば、離婚請求、認知請求など)を国家の裁定によって解決するものです。

民事裁判では、訴えた方を「原告」、訴えられた方を「被告」と言います。誰でも「原告」及び「被告」になる可能性があり、「被告」と呼ばれても犯罪を疑われているわけではありません。

民事裁判は私人間の紛争を解決するためのものですが、国や地方自治体を訴えたり、逆に訴えられたりすることもあります。

その場合は、国や地方自治体も私人と同等の立場で売買契約、賃貸借契約などの法律関係に入っているケース等が対象になります。

このような私人と同様の法律関係ではなく、国や地方自治体が公権力としての立場で私人に対して強制力を行使する場面での法律関係の争いなどは「行政事件」という別個の訴訟になります。

なお、民事裁判は、弁護士に頼まずに自分だけで対応することも可能です。弁護士に依頼した場合、弁護士はその人の「訴訟代理人」になります。原告が依頼した弁護士は「原告代理人」、被告が依頼した弁護士は「被告代理人」と呼ばれます。

2.刑事事件と民事事件の両方に当てはまる例

1つの事件で、刑事事件・民事事件の両方に当てはまることもあります。

例えば、交通事故で他人を死亡させたり、負傷させたりした場合、刑事事件では「危険運転致死傷罪・過失運転致死傷罪」「業務上過失致死傷罪」などの犯罪に当てはまり、その事故の態様によっては実刑になることもあります。

一方、交通事故を起こしたことによって被害者から損害賠償請求されると、これは民事事件となります(この場合、民事事件の訴訟の中で、刑事事件の記録が証拠として使われることもあります)。

このように、被害者が存在する刑事事件は、同時に、必ず民事事件も内包しています。これは刑事事件の犯行それ自体が、他人の権利・利益を違法に侵害する行為であり、民事上の不法行為として損害賠償義務を発生させるからであり、当然のことです。

なお、交通事故による免許停止処分などは行政処分なので、その不服を争う事件は行政事件となりますから、交通事故は3つの事件にかかると言われることもあります。

【損害賠償命令制度とは?】
裁判所には「民事部」と「刑事部」があって、刑事事件と民事事件とは別々に扱われています。刑事事件と民事事件では、手続に適用される訴訟法が異なるからです。
しかし、殺人、傷害などの被害者救済の必要性が高いとされる一部の重大な事件では、地方裁判所での刑事事件の裁判の後に、同じ裁判官が、引き続いて民事上の損害賠償額を決める手続きが導入されています。これを「損害賠償命令制度」といいます。
この制度では、刑事事件で被告人に有罪判決が言い渡された場合、引き続いて、その刑事事件を担当した裁判官が、民事上の損害賠償について審理をしてくれます。この制度では、刑事事件で利用した刑事記録をそのまま利用でき、原則として4回以内で審理を終えて、金額を決め損害賠償命令を出してくれます。
ただし、その命令に「異議申立」がなされた場合には、通常の民事事件に移行します。

3.刑事事件と民事事件における示談

示談」とは、民事事件の当事者が、その事件を解決済みとする合意をいいます。

例えば、交通事故が起きた場合、加害者と被害者で賠償金の金額や支払方法などを合意して示談をすることで、当該交通事故の民事問題については当事者間で解決済みとなるのです。

他方で、そのトラブルが刑罰法規にも抵触している場合、刑事事件については、検察官が起訴の権限を有しているので、民事事件の示談が成立しているだけでは当然にはその刑事事件は終わりません。

もっとも、被害者がいる刑事事件では「示談」が成立しているかどうかで処分の内容に大きな影響があります

というのは、示談においては、示談金支払いによる損害の補填がなされたことだけでなく、それによって、被害者が加害者を許し、刑事事件としての処罰を求めないという意思表明をも示談書に明記することが通常だからです。

これによって明らかとなる、被害者の損害が填補され、被害感情も和らいだという事実は、検察官の起訴・不起訴の判断、起訴後の裁判官の量刑判断において被疑者被告人に有利な事情として考慮されるのです。

[参考記事]

児童買春事件における示談の注意点と弁護士の役割

4.刑事事件で逮捕されてしまったら泉総合法律事務所へ

被害者のいる刑事事件は、同時に必ず民事事件ですから、ほとんどの場合、示談の成否が刑事処分の帰趨に大きな影響を及ぼします。刑事事件で逮捕されてしまった場合、専門的な知識を持った弁護士に依頼しましょう。

刑事事件で逮捕されてしまったら、刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所までご相談ください。

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