交通事故 [公開日]2017年10月25日[更新日]2019年11月1日

自動車運転死傷処罰法とは?交通事故被疑者・被害者必見の新設法律

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法または自動車運転死傷行為処罰法)が平成26年5月20日に施行されたことにより、刑法に規定されていた「危険運転致死傷罪」と「自動車運転過失致死傷罪」は削除されました。

自動車運転処罰法は、文字どおり、自動車の運転により人を死傷させてしまった場合に適応される法律です。
この施行により自動車事故は厳罰化されたと言われていますが、具体的にどのような内容が規定されており、犯してしまった場合にはどのような刑罰が科されるのでしょうか。

以下では、自動車運転処罰法とはどのような法律なのか、解説していきます。

1.自動車運転処罰法の内容と違反の罰則(量刑)

自動車の運転に伴う事故は、職業運転手だけでなく、通常の社会生活を送っている方々も、わずかなミスで起こす可能性があります。

しかし、運転行為の中でも、単純なミスとはいえない、悪質性や危険性の特に高いものについては、自動車運転処罰法の制定に伴い次第に厳罰化が図られています。

(1) 危険運転致死傷罪

自動車運転処罰法で特に重い刑罰を科せられるのは、旧刑法208条の2を引き継いだ「危険運転致死傷罪」です。

危険運転致死傷罪は、危険運転行為から人が死傷した場合に成立します。
また、危険運転致死事件は、裁判員裁判の対象事件になります。

以下のような運転により人を負傷させた場合は15年以下の懲役に、人を死亡させた場合は1年以上20年以下の懲役に処せられます。

  • アルコールや薬物の影響で正常な運転が困難な状態での運転(2条1号)
  • 制御困難な高速度での運転(2条2号)
  • 進行制御技能なしでの運転(2条3号)
  • 妨害目的で、危険な速度で割り込み又は接近する運転(2条4号)
  • 危険な速度で赤信号等を殊更に無視する運転(2条5号)
  • 危険な速度で通行禁止道路を進行する運転(2条6号)

また、以下の運転により人を負傷させた者は12年以下の懲役に、人を死亡させた者は15年以下の懲役に処せられます。

  • アルコールや薬物の影響で正常な運転に支障が生じる状態での運転(3条1項)
  • 病気の影響で正常な運転に支障が生じる状態での運転(3条2項)

(2) 過失運転致死傷罪

旧刑法211条2項(自動車運転過失致死傷罪)を引き継いだ「過失運転致死傷罪」は、運転上必要な注意を怠って人を死傷させた者に7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が科せられられます(ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑が免除される場合もあります)。

【無免許運転による加重の罪】
自動車運転処罰法では、無免許運転で人を死傷させた場合には、規範意識を欠いた、危険な運転が現実的な結果を招いたものとして、より重く処罰するとされています。
例えば、無免許で危険運転致死傷を招いた場合は罪状にもよりますが6月以上の有期懲役、過失運転致死傷を招いた場合は10年以下の懲役となります。

2.自動車運転処罰法で逮捕・勾留される可能性

人身事故を起こしたことにより逮捕されると、自動車運転処罰法の施行以前では、結果が重大な事案であっても、勾留(身体拘束)手続を経ない在宅処理が多数でした。
とはいえ、自動車運転処罰法の施行により罰則の強化が図られたことにより「自分の場合は逮捕・勾留されてしまうのではないか…」と不安に思う方も多いかもしれません。

これについては、危険運転致死事件以外の事件については、逮捕はともかく勾留されずに在宅事件として扱われるケースも多々あるものとされています。

というのも、被疑者が事実関係を認め、実況見分調書やアルコール・薬物の検出に関する書面等の重要な客観的証拠が収集されていれば、被疑者が証拠隠滅行為に及ぶ現実的可能性は低くなることも一因とされています。
証拠隠滅や逃亡のおそれがない場合は、多くのケースで勾留まではされないでしょう。

したがって、勾留の手続がとられるのは、裁判員対象事件の危険運転致死事件や、客観的な証拠に乏しく、供述に依存するような事案が多いと思われます。

3.用語の説明

最後に、自動車運転処罰法に規定されている用語をご説明します。
事故を起こしてしまったという方は、ご自身の行為がいずれかの状態に当てはまっているか否かをご確認ください。

(1) 危険運転致死傷罪

「正常な運転が困難な状態」

「正常な運転が困難な状態」とは、道路や交通の状況などに応じた運転をすることが難しい状態になっていることをいいます。

例えば、アルコールによる酔いのため、前方をしっかり見て運転することが難しい状態や、自分が思ったとおりのハンドルやブレーキなどを操作することが難しい状態が、これに当たります。

また、意識を失うおそれがある病気(てんかん、再発性の失神、低血糖症、重度の睡眠障害)の発作のために意識を失っている状態や、精神疾患(統合失調症、そう鬱病)による急性の精神病状態などもこれに当たります。

「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」

「正常な運転に支障が生じるおそれがある状態」とは、上記「正常な運転が困難な状態」のような状態にはなっていないけれども、アルコールや薬物、又は病気のために、自動車を運転するのに必要な注意力・判断能力・操作能力が相当程度低下して、危険である状態のことをいいます。

アルコールの影響による場合には、道路交通法の酒気帯び運転の罪になる程度のアルコールが体内にある状態であれば、通常はこれに当たるとされています。

[参考記事]

飲酒運転(酒気帯び運転・酒酔い運転)で呼び出し!?逮捕後の流れ

また、病気の影響による場合には、意識を失うような発作の前兆症状が出ている状態や、前兆症状は出ていないけれども決められた薬を服用していないために運転中に発作のために意識を失ってしまうおそれがある状態、急性の精神病状態に陥るおそれがある状態などがこれに当たります。

「自動車の運転に支障を及ぼすおそれがある病気」

ここでいう病気は、運転免許の欠格事由とされている病気の例を参考に、施行令3条で定められています。

具体的には、先述のように、統合失調症、てんかん、再発性の失神、低血糖症、そう鬱病、重度の睡眠障害があげられています。

(2) 判例による用語の理解(参考)

「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」

「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」とは、アルコールの影響により道路交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態をいい、アルコールの影響により前方を注視してそこにある危険を的確に把握して対処することができない状態もこれに含まれる(最決平23.10.31)とされています。

「殊更に無視」

赤色信号を「殊更に無視」とは、およそ赤色信号に従う意思のないものをいい、赤色信号であることの確定的な認識がない場合であっても、信号の規制自体に従うつもりがないため、その表示を意に介することなく、たとえ赤色信号であったとしてもこれを無視する意思で進行する行為も、これに含まれる(最決平20.10.16)とされています。

4.交通事故の弁護も泉総合法律事務所へ

自動車運転処罰法違反の交通事件は、時には重大犯罪として処罰されます。逮捕されてしまった場合、弁護士に早期に相談してください。

自動車運転処罰法違反の処分結果に最も影響を与えるのが、被害者やその遺族との示談といえます。
示談交渉などは、保険会社とのやりとりも含め、交通事件に精通している弁護士に委ねるのが望ましいです。

泉総合法律事務所の弁護士にご依頼いただければ、適切な弁護活動で早期に釈放されたり、起訴されても執行猶予付き判決が得られたりする可能性が大いにでてきます。

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自動車運転処罰法違反を犯してしまった方は、どうぞお早めに泉総合法律事務所の無料相談をご利用ください。

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