交通事故 [公開日]2018年2月22日[更新日]2021年2月25日

ひき逃げで示談成立・不起訴を目指す|実際の解決事例

「ひき逃げ犯が逮捕された」という報道は珍しくありません。

ひき逃げ事件は、単なる交通事故ではなく、警察官・警察署に事故を報告する義務を怠る報告義務違反・被害者を助けなかった救護義務違反としても重く処罰される可能性があります。

では、ひき逃げで検挙・逮捕されてしまった場合、示談を成立させ、不起訴処分を獲得するためには何をするべきなのでしょうか?

それは、直ちに弁護士を選任して、弁護活動をスタートしてもらうことです。

泉総合法律事務所でも、ひき逃げ事件を解決した事例が多くあります。
今回はその事例から、ひき逃げで示談して不起訴を目指すためのポイントをご紹介します(※なお、守秘義務、プライバシー保護のため、実際の事案をアレンジしております)。

1.ひき逃げの事例

Aさん(50代男性)は、原動機付自転車に乗って道路を走行していました。すると、前方から自転車が逆走をしてきました。

Aさんはその自転車をすれすれでかわし衝突した感覚はありませんでしたが、万が一衝突していたらまずいと考え、原動機付自転車を停車させ、自転車の運転手のところへ向かいました。

Aさんが相手の方に怪我がないかを尋ねたところ、相手の方は「怪我はしていないものの接触はしたので、警察を呼ぶ」と言いました。

Aさんは、接触した感覚もないし、相手の方が興奮状態にあったことから、その場を立ち去りました

数日後、その現場を通りかかったところ、ひき逃げ事故があったという旨の警察署の看板が設置されており、自分が疑われているのではないかと考え、相談に来られました。

2.ひき逃げで成立する犯罪

ここで、ひき逃げで問われる可能性のある犯罪について、簡単に表にまとめておきましょう。

名称内容法定刑条文
過失運転致死傷罪自動車の運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた者7年以下の懲役・禁錮又は100万円以下の罰金(軽微な傷害は、情状により、刑の免除可能)自動車運転処罰法第5条
救護義務違反直ちに運転を停止し、負傷者を救護する義務に違反した者5年以下の懲役又は50万円以下の罰金道路交通法第72条1項前段、117条1項
運転者の運転に起因した死傷の場合、10年以下の懲役又は100万円以下の罰金同法117条2項
報告義務違反直ちに警察官・警察署に事故を報告する義務に違反した者3月以下の懲役又は5万円以下の罰金同法第72条1項前段
同法119条1項10号

ひき逃げで問われる可能性のある犯罪の詳細は、次の記事をご覧ください。

[参考記事]

ひき逃げの罪-必ず後日に検挙されて逮捕される?弁護士必須の重大事件

3.受任後の弁護活動

(1) 警察署へ任意で出頭

まず、逮捕される可能性を低くするため、Aさんは警察署へ出頭しました。

弁護士は、Aさんの言い分をまとめた供述調書を作成するだけでなく、事前に刑事手続の流れや、取り調べを受ける際に注意するべきこと等を詳しく説明しました。

特に、接触した感覚がないという点について、「接触の可能性もあると思いました」「接触をしていることがわかったはずだと今言われれば、そうかも知れないと思います」などという「未必の故意」を認めるような調書の記載を絶対にされないように念を押しました。

【逮捕されている場合も弁護士の接見が大事】
もし既に被疑者が逮捕されている場合も、いち早く弁護士に接見を依頼することが大切です。
逮捕中は家族でも面会はできませんが、弁護士だけは別です。いつでも警察官の立ち会いなしに、面会(接見)が可能です。
特に弁護士による最初の接見の機会を早めにもつことはとても重要です。第1回の接見は、被疑者に味方がいることを伝え、その保障された権利や刑事手続について説明して不安を払拭する役割があるからです。
弁護士の接見時間には原則として制限がありませんから、2時間でも3時間でも、面会を続けることができます。

(2) 被害者の連絡先開示

その後、検察事務官から連絡があり、被害者の電話番号を教えてもらいました。

弁護士が直ちに被害者に電話を入れたところ、被害者は、Aさんがその場から立ち去ったことにお怒りであり、この点について謝罪してほしいとのことでした。そして、謝罪があれば、損害賠償請求や処罰を求めないとの意向も示されました。

被害者から詳細を伺うと、刑事訴訟になった場合、Aさんに不利な事情があるように思われました。

そこで弁護士は、Aさんとともに被害者にお会いし、謝罪を行いました。

(3) 示談交渉の開始

通常の交通事故であれば、Aさんが契約している任意保険会社が示談代行で被害者と示談交渉をしてくれるので、これに任せておくことも選択肢のひとつですが、今回は任意保険会社の示談代行に任せることができないと判断しました。

その理由は次の通りです。

①あくまで民事賠償問題の解決だけを目指した交渉で、被害者から宥恕(※)を得ることを目的としていないから、示談書に宥恕文言が入ることもない。
②保険会社は示談金の金額を低額に抑えようとするうえ、格別早期の示談成立に熱心ではないので、本件でも示談に時間がかかり、逮捕となる可能性がある。
※「宥恕(ゆうじょ)」とは寛大な心で許すとの意味で、「処分を望まない」、「寛大な処分を望みます」などの記載を宥恕文言と言います。

自動車保険は責任保険といい、加害者が被害者に支払った賠償金を保険会社が加害者に補てんしてくれる制度ですから、示談代行を待つまでもなく、刑事弁護を担当する弁護士が加害者の代理人として示談を行って、加害者側が示談金を支払ってしまい、後で保険会社に補てんを請求すれば良いのです。

ただし、示談金として支払った金額が、直ちに保険会社が補てんを認める金額となるかは別です。
そこで、弁護士としては保険会社の担当者に事情を説明し、連絡を密にして、保険会社の内諾が得られるよう根回しをしながら、示談交渉を進める必要があります。

今回、被害者には幸い処罰感情がなかったため、早期の示談に応じてもらえ、損害賠償請求や処罰を求めないという書面を取得しました。

(4) 示談の成立

弁護士は、被害者から受け取った書面を警察署に届けました。

結果として、これ以上捜査は進めず、立件しないことで事件が終結いたしました。

4.本件の示談成立・不起訴のポイント

ひき逃げは、過失運転致死傷罪になる可能性だけでなく、報告義務違反で5万円、救護義務違反となれば10年以下の懲役又は100万円以下の罰金という重い刑罰を受ける危険があるものです。

本件が立件を免れ不起訴を勝ちとることができたのは、早期に出頭をしたことで逃亡・証拠隠滅の恐れがないと判断されたこと、被害者が良心的であったこと、そもそも被害が軽微であったことなど、被疑者に有利な状況が重なっていたことも確かにあります。

しかし、何と言っても、早期に弁護の依頼を受けて受任し、すぐに示談交渉をスタートできたことが成功の大きな要因です。

被害者に有利な情況が揃っていても、弁護人を付けずに漫然と出頭し取り調べを受けていれば、逮捕・勾留されたうえに、勾留満期までに示談もできず、そのまま起訴されて身柄拘束が続いていた可能性も高かったでしょう。

5.ひき逃げをしてしまった場合の対処方法

最後に、ひき逃げ事件一般について、どのように対処すれば良いのかをご説明します。

(1) 自首する

まずは、できるだけ早く自首することをお勧めします。

ひき逃げをしても、特に被害者が死亡したり重傷を負ったりすると非常に高い確率で検挙されます。

その場合、逮捕状をとられて突然逮捕されるので何の準備もできません。情状も悪くなり、重い刑罰が適用される可能性が高くなります。

これに対し、事件や犯人が発覚する前に出頭すれば自首が成立し、任意的に刑罰を減軽してもらえる可能性があります。身柄拘束されることを見越して身辺整理をすることもできるでしょう。

また、軽微な事故であれば、本件のように不起訴になる可能性も高くなります。

[参考記事]

自首の仕方と成立要件|出頭との違いとは?

(2) 被害者と示談をする

ひき逃げをした場合には、被害者との示談交渉を積極的に進めるべきです。

被害が軽傷であれば、検察官による処分前に示談を成立させることにより、不起訴処分を獲得することも可能です。

起訴されてしまった場合でも、判決前に示談が成立してきちんと民事賠償を終えられたら、情状が良くなって執行猶予がつく可能性が高くなります。

ただ、ひき逃げされた被害者は、通常加害者に対して強い怒りを抱いており、被疑者やその家族が自分たちで示談の話し合いを進めようとしても難しいことが多いです。

弁護士であれば、加害者の代理人とは言っても法律の専門家としての公正な立場から被害者にコンタクトを取れますし、被害者としても心を許して示談に応じやすいものです。

また、弁護士が示談交渉をするときには、法律的な基準によって適正な示談金額を定めることもできますし、示談が成立したときには被害者から「嘆願書」をとりつけられる可能性もあります。

嘆願書があると、刑事事件における加害者への処分が軽くなりやすいので、大きなメリットがあります。

被害者との示談を進める際には、必ず弁護士に依頼しましょう。

(3) 反省の態度を示す

ひき逃げ事故の対応では、被疑者被告人が反省の態度を示すことも非常に重要です。
反省していると、そのことが良い情状となって刑事処分が軽くなる可能性があるためです。

具体的には、被害者に対して謝罪文を書き送ったり、反省文を書いて検察官や裁判所に提出したり、裁判の被告人質問できっちり自分の気持ちを供述したりすべきです。

被害者との示談が成立しない場合や、判決までに間に合わない場合などに「贖罪寄付」をする方法によっても、反省の気持ちを示すことができます。

5.まとめ

ひき逃げを起こしたとき、放っておくと後日に警察から逮捕されて刑事裁判となり、重大な不利益を受ける可能性が高いです。
まずは自首を検討し、早期に刑事弁護人を選任して被害者対応を行うことが、刑事責任を軽くするために必要でしょう。

泉総合法律事務所では、ひき逃げ事件の刑事弁護にも力を注いでいます。
ご家族がひき逃げ事件で逮捕された方は、どうぞお早めにご相談ください。

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