無免許運転をした場合、逮捕・懲役になってしまうのでしょうか?
「無免許で、しかも飲酒運転した」というニュースや、無免許運転のドライバーを摘発する警察ドキュメンタリーの番組を見たことがある方は多いのではないでしょうか。
実際、近年は無免許運転や飲酒運転についての法令が厳しくなり、警察は検問やパトロールを強化しているようです。
では、ご自身や家族・身内が無免許運転で逮捕されてしまった場合、どのような罰則が適用されるのでしょうか?罰金はいくらで、前科はつくのでしょうか?
今回は、無免許運転で逮捕された場合の罰則・罰金についてご説明いたします。
1.無免許運転の罰則
無免許運転とは、運転免許がないのに自動車等の車両を運転する犯罪を指します。
道路交通法64条1項は、「何人も…公安委員会の運転免許を受けないで…自動車又は原動機付自転車を運転してはならない。」と無免許運転の禁止を定めています。これに反した場合には3年以下の懲役又は50万円以下の罰金という刑事罰が課されます。
なお、道路交通法における「自動車」には、50CCを超えるバイクも含まれます。
「公安委員会の運転免許を受けない」場合には、一度も免許を取得したことがない場合だけでなく、免許が失効した場合・免許が取り消された場合・免許停止中の場合・免許対象外の車両等を運転した場合が含まれます。
これに対し、眼鏡使用やオートマ限定などの「免許の条件」に違反して運転した場合には、無免許運転ではなく「免許条件違反」という犯罪となり、3月以下の懲役又は5万円以下の罰金刑となります(同法91条)
ちなみに、単に車に乗っていた際に免許を携帯していなかったという場合には、「免許不携帯」という別の犯罪となります(同法95条1項)。免許不携帯に対する刑事罰は2万円以下の罰金または科料です。
ただし、免許不携帯の場合はいわゆる交通切符(交通反則告知書)を受け取って反則金を納付すれば起訴を免れるので、刑事罰を受けることはありません(同法128条2項)。免許不携帯の反則金は3,000円です。
2.無免許運転で逮捕・実刑の可能性
(1) 逮捕されるケース
無免許運転は犯罪ですから、発覚すれば逮捕される可能性があることは他の犯罪と同じです。
例えば、無免許運転中に自動車検問などで犯行が発覚すれば、多くは警察署への任意同行を求められ、これを拒否すれば現行犯逮捕されます。その場で身柄を拘束しなければ、無免許運転を継続しながら逃亡してしまう可能性が高いからです。
逆に、任意同行に応じて取り調べを受けた結果、被疑者が犯行を認めており、住所や職場など身元も明らかで、逃亡や証拠隠滅の恐れがないと判断されれば、逮捕状は請求されない(自宅に返される)場合も少なくありません。
もっとも、次のようなケースでは、今後起訴される見込みが高く、それ故、逃亡・証拠隠滅の危険があり、身柄確保の必要性も著しいと判断されて、逮捕状請求される場合が多いでしょう。
- 無免許運転での逮捕歴がある
- 無免許運転で、かつ飲酒をしている
- 交通違反履歴が多数ある
- 交通関連事件での執行猶予期間中である
- 無免許運転で人身事故を起こした
- 自動車検問を回避しようとした
(2) 実刑を受けるケース
前述のとおり、無免許運転には3年以下の懲役刑がありますが、逮捕・起訴されたからといって、必ずしも実刑(執行猶予がつかない懲役刑)になるとは限りません。
実刑を受ける可能性が高いのは、以下のような場合です。
- 無免許運転の執行猶予期間中にまた無免許運転をした場合
- 無免許運転の前科・前歴が複数回ある場合
- 無免許運転で人身事故を起こし、無免許運転による過失運転致死傷罪(自動車運転処罰法6条4項)が適用される場合
- 無免許運転でひき逃げし、教護義務違反・報告義務違反(道路交通法72条1項、117条2項、119条1項10号)、無免許運転による過失運転致死傷罪が適用される場合
3.無免許運転の罰金・点数
では、無免許運転の罰金、そして点数はどうなっているのでしょうか?
(1) 無免許運転をした場合の罰金
前述のとおり、無免許運転の罰金は「50万円以下」です。
なお、犯罪白書によれば道路交通法違反の罰金でもっとも数が多いのは10万円未満の金額ですが、無免許運転で10万円未満というのは相場としては考え難い金額です。おおむね20~50万円と考えておけば良いでしょう。
無免許運転で起訴されて有罪判決が確定すれば、罰金刑であっても前科となります。
とはいえ、検察統計によると、2018年における道路交通法違反事件の起訴率は56.8%とされており、半数近くが不起訴処分で終わっていることがわかります。
無免許運転でも、下記で説明する対策を十分に行い不起訴処分になれば前科とはなりません。
(2) 無免許運転の点数
無免許運転で逮捕された場合、課されるのは罰金・懲役といった刑事処分だけではありません。加点などの行政処分も科されることになります。
当たり前ですが、無免許運転で点数が課されるのは、何らかの免許を取得していた場合です。具体的には、免停中の無免許運転、免許対象外車両の無免許運転の場合に点数(25点)が課されます。
15点以上で免許取消しとなってしまうため、無免許運転違反のみで免許は取り消され、違反の前歴がなくとも2年間は運転免許取得の欠格期間となってしまいます。
もともと免許を取得していない場合や免許取消後の無免許運転では点数は問題となりませんが、運転免許試験に合格しても、無免許運転をした日から2年間は免許付与を拒否されてしまいます(道路交通法90条1項4号、道路交通法施行令33条の2第1項二、同別表第三、同別表第二)
4.無免許運転で捕まったらすべきこと
無免許運転で逮捕されたら、できるだけ早く以下の行動をとることが大切です。
(1) 弁護士に依頼する
無免許運転で逮捕されたら、できるだけ早く弁護士に相談してください。
仮に逮捕されてしまった場合、その直後は家族が面会することはできません。面会できるのは家族や本人から依頼を受けた弁護士のみです。
弁護士は、逃亡や証拠隠滅をする可能性がないことを示し、検察官に対して早期釈放・勾留請求回避を働きかけていきます。勾留が決定されてしまうと最大で20日間家に帰ることができなくなってしまうため、これを回避することは非常に重要です。
それでも検察官が勾留請求した場合には、裁判官に対して勾留請求の却下を働きかけます。
逮捕から72時間の間に、早期釈放・勾留回避のための活動・取調べを受ける際の本人へのアドバイス・(被害者がいる場合は)被害者に対する示談交渉などを開始することができれば、釈放・不起訴の可能性が高まります。
不起訴で済めば前科がつかないため、将来への影響も最小限に抑えられるでしょう。
すでに勾留が決定している場合でも、不服申し立てを行い、勾留の必要性がないことを示して勾留決定の取消を求めていきます。
逮捕された場合、本人はもちろんのことご家族も動揺しており、どうしたら良いかわからない状態になっていることも多いため、専門家である弁護士がついているだけでも安心していただけるはずです。
(2) 家族が協力できる不起訴に向けたサポート
ご家族としては、身柄引受人になることで勾留の理由がないことを示すことができます。身柄引受人がいることで逃走を防止できる可能性が高まることから、勾留回避の可能性も上げることができるでしょう。
また、今後無免許運転を行わないようにするために、家庭の自動車の鍵は本人には渡さず家族が管理すること、必要な場合は廃車処分を行うことなどを示すことで、再犯防止に対する協力姿勢を見せることも必要です。
弁護士による弁護活動だけでなくご家族との連携やサポートによって、勾留防止・不起訴を勝ち取れる可能性が上がります。
将来への影響を最小限にするため、早期社会復帰を可能とするためにも、逮捕の一報が入った段階で刑事弁護に強い弁護士にご相談いただくことが重要です。
5.無免許運転で逮捕されたら弁護士に相談を
無免許運転で逮捕されたら、早期に弁護活動を開始できるかどうかが、その後に続く処分に大きく影響します。できるだけ早くご本人・ご家族の不安を取り除くためにも、お早めにご相談ください。
泉総合法律事務所は、無免許運転を含む刑事事件に精通しており、これまでの実績から早期に解決するためのノウハウにも長けています。
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