身近な法律の疑問 [公開日]2021年11月24日

家宅捜索とは|どこまで捜索されるのか?条件は?

捜査の過程において、警察官や検察官が「家宅捜索」を行うことがあります。

もし家宅捜索の対象となった場合には、その後どのような流れになるのでしょうか。また、どこまで捜索されるのでしょうか。

この記事では、家宅捜索について、家宅捜索を受けた場合の対応等について解説します。

1.家宅捜索とは

(1) 家宅捜索の意義

家宅捜索とは、捜査機関が被疑者や関係者の住居や事務所に立ち入り、犯罪に関連する証拠物を「捜索」し「差押え」る手続きをいいます。

犯罪捜査における「差押え」とは、捜査機関が、証拠物に対する持ち主の占有を排除して、強制的に占有を取得する行為です。「捜索」とは証拠物等の発見を目的として、一定の場所や人の身体などを探す活動です。

捜査機関は、犯罪事実を把握すると捜査活動を開始します。犯罪事実の概要や犯人がどのような人物かについて、被害者等から話を聞きます。

しかし、客観的な証拠がない・少ない場合、犯人を逮捕・起訴し処罰するのは困難です。そこで、犯罪に関連する客観的な証拠を収集するために、捜索差押えが行われるのです。

なお、家宅捜索という用語は法律上のものではありません。住居等に立ち入った捜索が、一般に家宅捜索と言われているにすぎません。
前述のとおり、刑事訴訟法上は、住居に立ち入って差押対象物を探す処分を、単に「捜索」といいます。

(2) 家宅捜索でどこまで差押えられる?

捜索・差押えは、捜査機関が勝手に行えるわけではありません。捜査機関により不当な捜索差押えが行われ、国民のプライバシーが侵害されたり、捜索活動を口実とした政治的な弾圧がおこなわれたりするおそれがあるからです。

そこで、憲法は捜索差押え(押収)を行うためには、裁判官(司法官憲)が発付した令状が必要と定めています。

憲法35条1項「何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第33条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。」

憲法35条2項「捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。」

令状には、被疑者の氏名、差し押さえるべき物、捜索すべき場所などが記載されます。その範囲に限り捜査機関は捜索差押えをすることができます。
したがって、例えばA宅の家宅捜索が許可されたとしても、隣にあるB宅や、関係者のC宅を家宅捜索することはできません。

また、令状に記載されていない物については、たとえ他の犯罪の証拠になることが確実なものであっても、差押えることができません。新たに令状を発布してもらう必要があります。

このように、捜査機関が捜索差押えを行おうと考える場合には、裁判官に令状を請求し、これが出された場合に捜索差押えができるという事になります。たとえ捜査活動中に犯罪に関する何らかの証拠を見つけても、勝手に差押える事は出来ないのです。

もっともこれには例外があります。

まず、犯人を逮捕する際には、その逮捕現場において、令状無くして捜索差押えをすることが可能となっています。例えば、窃盗犯人を住居で逮捕した場合には、その住居内で当該窃盗罪に関連する証拠の捜索差押えができます。

また、物の所持者が任意に提出した物は、捜査機関が占有を取得することができ、事件終了まで返還する必要はありません。つまり、いったん任意の提出を受けた以後は、令状無しに差し押さえと同様の効力が生じるわけです。これを「領置」と呼びます。

2.家宅捜索から逮捕・起訴までの流れ

(1) 家宅捜索から逮捕まで

家宅捜索は突然行われます。事前に通知があるなどといったことはありません
対象者にバレてしまっては、証拠を隠滅されてしまい、捜索差押えの目的を達成できないからです。

捜査機関は、数人ないし数十人で家にやってきて、令状を呈示し捜索差押えを開始します。対象者はこれを拒否することはできません。抵抗した場合、公務執行妨害罪等の犯罪が成立する可能性があります。

捜査機関は、証拠物を発見したらこれを差押え、警察署等に持ち帰ります。なお、差押物は、これを保持する必要がなくなった場合、対象者に返還されます。

なお、通常逮捕が先行し、逮捕した後に家宅捜索が行われます。そうでないと逃亡されてしまうからです。
もっとも、逮捕するに足りる証拠がない場合には、家宅捜索により逮捕に必要な証拠をそろえてから逮捕が行われます。

家宅捜索があったからといって必ず逮捕されるわけではないのですが、捜査機関が家宅捜索を必要と判断した以上、後に逮捕される可能性は大いにあります。

なお、逮捕も原則として、裁判官に令状を請求して行います。

(2) 逮捕から起訴まで

逮捕されたあとは取り調べが行われます。

逮捕後、警察官は被疑者の身柄と証拠物を検察官に送致します。身柄を受け取った検察官は、被疑者を取調べた後、裁判官に被疑者の勾留を請求するかどうか決定します。

勾留が認められると、被疑者は勾留されます。起訴前の逮捕・勾留による身体拘束は、最長で23日間です。

[参考記事]

勾留請求・準抗告とは?釈放を目指すなら泉総合法律事務所へ!

検察官は、勾留期間の満了までに被疑者を起訴するか否か決定します。起訴されなかったらそこで釈放ですが、起訴された場合、更に勾留が続く可能性があります。

[参考記事]

刑事事件の起訴率・不起訴率|不起訴を目指すなら弁護士へ

3.家宅捜索を受けたらどうするべき?

家宅捜索を未然に防ぐことはできませんから、家宅捜索を受けた場合の対応がこれからのために重要です。

身に覚えがない犯罪の場合、家宅捜索しても何も出てこないのが通常ですから、捜査機関は何も差押えずに帰っていきます。

ただし、令状に基づく捜索が実施されたということは、捜査機関は、あなたに犯罪の嫌疑があると判断しており、令状を発付した裁判官も、これを認めたということです。今回の捜索の不奏功で、その嫌疑が晴れたとは限らず、さらなる捜査が続く可能性も否定できません。

これ以上、身に覚えがない事件に巻き込まれないよう、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。
捜査機関に対し、弁護士を通じ、積極的に潔白を主張して嫌疑を晴らすという対応が適切な場合もあれば、不当な捜査であると強く抗議をして、以後の捜査を諦めさせるという対応をとるべき場合もあります。

また、令状発布の根拠となった証拠資料が、捜査機関によるでっち上げだったなど、不当な捜索差押えが捜査機関の故意過失によって行われた場合などには、国や自治体による違法な捜索という事で損害賠償を請求できる可能性があります(国家賠償法1条)。

他方で、身に覚えのある犯罪でしたら話は変わってきます。逮捕される可能性も踏まえ、知っていることを捜査機関に話すべきかなどの判断が必要になります。

逮捕・勾留された場合にも、身体拘束から解放されるために検察官・裁判官に働きかけることが必要になってきます。

具体的には、被害者がいる犯罪の場合、早急に示談をすることが重要です。
また、被害者がいない覚せい剤事案などでは、被疑者が反省していることや、再犯防止のための治療計画がある等の記載をした意見書を出すことになるでしょう。

また、捜索差押えが違法な場合、獲得した証拠を裁判で使用することが禁止されることがありますので、この点の主張を適切にできるよう準備する必要があります。

[参考記事]

違法収集証拠について|争われた判例は?

とはいえ、これらすべてを自分一人で行うのは困難です。これらは弁護士の専門分野ですから、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。

4.まとめ

家宅捜索は以降の刑事手続きの前段階に過ぎません。
これから続くであろう刑事手続きで受ける不利益を減らすためにも、刑事事件を起こしてしまい家宅捜索を受けた場合には、すぐに泉総合法律事務所にご相談ください。

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