未成年の飲酒|一緒にいた場合は逮捕される?罪に問われる?
「未成年が飲酒をすると、一緒にいた成人や酒類を提供した店側が処罰される」という認識はみなさんの中にあると思います。
では、具体的にどのような要件を満たしたとき、どのような罪に問われるのでしょうか。また、未成年側が罪に問われないのは何故なのでしょうか。
以下においては、未成年者に酒類を販売・提供した場合について、成立する罪及び刑罰を中心に説明します。
1.未成年者への酒類販売・提供の罪
(1) 罪と刑罰
未成年者飲酒禁止法では、次のように規定されています。
①未成年者の親権者や監督代行者が、未成年者の飲酒を知りつつ制止しなかった場合には、1000円以上1万円未満の科料に処せられます。
「親権者」とは、その名の通り「親」を指します。
「監督代行者」とは、親権者に代わって日常的に未成年者を監督すべき義務を負っている人のことで、例えば、子供を預かり同居して面倒を見ている者(兄弟を含む)や、住み込みで未成年の従業員を雇っている雇用主、学生寮の舎監などが該当します。
サークルや部活、会社の先輩は、日常的に未成年者を監督していない限り、監督代行者には該当しません。
しかし、サークルや部活の監督・顧問が学生を引率した先の飲み会であった場合は、その監督・顧問は監督代行者として罪に問われる可能性が高いです。
また、会社の飲み会であった場合には、上司や会社が使用者責任(民法715条)を問われるケースがあります。
②酒類を販売する営業者(酒屋、コンビニエンスストアなど)又は供与する営業者(飲食店、居酒屋、スナックなど)が、未成年者が飲酒することを知りながら、酒類を販売又は供与した場合には、50万円以下の罰金に処せられます。
③酒類を未成年者に販売・供与した法人の代表者又は法人若しくは自然人の代理人、使用人その他の従業員が、その法人又は自然人の業務に関して、未成年者が飲酒することを知りながら、酒類を販売又は供与した場合には、違反行為者が50万円以下の罰金に処せられるほか、その法人又は自然人も50万円以下の罰金に処せられます。
③の場合、酒類を販売又は供与した従業員だけでなく、その法人や事業主も罪に問われます。
(2) 相手が未成年者と知らない場合
上記の営業者が、相手が未成年者と知らずに酒類を販売又は提供した場合には、罪には問われません。相手が未成年者であることの認識は、確定的であれ、未必的であれ、必要と解されているからです。
したがって、酒類を販売又は提供する人が、その認識がなければ、罪には問えないことになります。
しかし、実際問題としては、未成年者飲酒禁止法1条4項において、営業者には、罰則の規定はないものの、「年齢確認等の措置を行うこと」が義務付けられていますから、未成年者に酒類を販売又は提供した場合には、少なくとも未必的な認識を推認されることが多いと思われます。
ただし、年齢15歳の少年に、たばこを販売した事案に関してですが、高松高判平27.9.15は、少年が店内のタッチパネル式年齢確認システムで「20歳以上」と答え、店側も身分証の提示を求めなかったことを認めながら、「店員が少年の顔を見た時間は極めて短時間であり、当時の少年の身長が約167㎝で成人男性でもおかしくなく、未成年者と判断、認識していたと認めるには合理的な疑いがある。」として、無罪としています。
なお、親権者や監督代行者は通常未成年者の年齢を知っているはずですから、上記のような例外は適用されないと考えて良いでしょう。
(3) 民法改正による成人年齢の引き下げについて
成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法の改正案が成立し、2022年4月1日から施行されています。
しかし、民法が成人年齢を18歳にしたからといって、アルコールが成長期にある者に与える悪影響が変わるわけではありません。
未成年飲酒禁止法の第1条1項は、「満20年に至らさる者は酒類を飲用することを得す」と定めて、20歳未満の者の飲酒を禁止しています。
この法律の目的は、アルコールが成長期の身体にとって害があるため、成長期にある者を保護することにあります。
また、立法背景には、飲酒は喫煙と並んで、非行の温床になるから禁止した方がよいという考えもあったようです。
そのような配慮から、成人年齢が18歳になっても、19歳など未成年の者の飲酒は認められないことに変わりありません。
ビール酒造組合のホームページによると、未成年者は、アルコールを代謝する働きが弱いこと、アルコールは、成長期にある脳の神経細胞への影響が大きいこと、肝臓や膵臓などの臓器障害に陥りやすいことなど、成長期にアルコールを摂取することの悪影響が指摘されています。
2.未成年者本人が処罰されない理由
未成年者が酒類を購入したり飲酒したりしても、未成年者に対する罰則規定がありませんので、未成年者本人は処罰されることはありません。
これが形式的な理由ですが、実質的な理由としては、「未成年者飲酒禁止法違反は福祉犯と位置付けられているので、未成年者本人を処罰するのは困難である。ここにいう福祉犯とは、大人は罰せられるけれども子供は罰しないということであり、あくまでもこの法律は子供を保護するためであるから、保護対象である子供を罰することは論理矛盾である。」とされています。
なお、法的な罪に問われないといっても、警察に補導されて学校や職場に連絡をされると、停学・退学、解雇などの重い処分を受ける可能性はあります。
また、酔った勢いで喧嘩をして相手に暴力をふるえば、暴行罪や傷害罪で逮捕される可能性はあるでしょう。
3.まとめ
未成年者に酒類を販売・提供することは犯罪になります。年齢確認等の措置をとるように注意しなければなりません。
また、未成年者に違反行為を強要することは絶対にしてはならないことです。
仮に飲酒をした未成年が急性アルコール中毒になったり、喧嘩をして負傷したり、器物損壊などのトラブルを起こしたりした場合には、一緒にいた人が民事上の法的責任を問われ、親から賠償金(慰謝料・治療費など)を請求されることもあります。
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