禁錮・懲役・執行猶予とは?各判決の意味を解説します。

刑事事件弁護

禁錮・懲役・執行猶予とは?各判決の意味を解説します。

新聞・テレビ等の各種メディアの刑事裁判に関する報道において、「禁錮・懲役○年・執行猶予○年の判決」との言葉に触れることがあります。

今回は、この禁錮・懲役、そして執行猶予について解説します。

1.禁錮刑・懲役刑について

(1) 禁錮刑・懲役刑の相違点

禁錮刑とは、人の身体の自由を剥奪する刑のことをいい、自由を剥奪する刑であることから自由刑と呼ばれています。

懲役刑は、人の身体の自由を剥奪して、所定の労働に従事させる刑のことをいいます。

懲役刑は、禁錮刑と同様に自由刑であるものの、所定の労働に従事させる点において禁錮刑とは異なる、より重い刑であると理解されています。

もっとも、禁錮刑のように、何もすることなく刑期の満了を待つことは、労働に従事できる懲役刑より精神的苦痛の大きいものであるため、禁錮刑に処せられた者でも、本人の希望により、労働に従事することは少なくないと言われています。

(2) 禁錮刑・懲役刑のある犯罪

禁錮刑・懲役刑のある犯罪は複数あるところ、それらは、①禁錮刑のみ科すことのできる犯罪、②懲役刑のみ科すことのできる犯罪、③禁錮刑又は懲役刑を科すことのできる犯罪に大別されます。

禁錮刑のみ科すことのできる犯罪は、いわゆる政治犯・思想犯の類型であり、典型は内乱に関する罪です。

他方、懲役刑のみ科すことのできる犯罪は、殺人罪、傷害罪、強盗罪、窃盗罪などです。

そして、禁錮刑又は懲役刑の科すことのできる犯罪は、公務執行妨害罪、名誉毀損罪などです。

2.執行猶予について

(1) 執行猶予の意味

執行猶予とは、刑の執行を猶予することを意味します。

従来、執行猶予は刑の全部を対象とするものに限られていました。しかし、2016年6月1日以降の刑事裁判では、刑の一部の執行猶予を認める新たな制度が始まりました。

(2) 刑の一部の執行猶予

刑の一部の執行猶予とは、禁錮刑・懲役刑の一部の執行を猶予することを意味します。

この刑の一部の執行猶予は、従来、執行猶予を付すことは相当ではない、いわゆる実刑判決相当の事案について、再犯防止及び改善更生の実効性を高めるため、刑の期間の一部は刑務所での処遇により、残りの期間は、社会内での処遇によることを目指すための制度です。

たとえば、依存性のある違法薬物の使用の罪を犯した者については、刑務所のように違法薬物を入手できない環境ではなく、むしろ違法薬物を入手できる環境である実社会において更生のための処遇を施すことにより、再犯防止及び改善更生の実効性は高まるとの理解を前提として、実刑相当でも、一部の刑の執行を猶予して社会内での処遇に移行させることを可能にしたのです。

(3) 執行猶予の要件

①刑の全部の執行猶予の要件

刑の全部の執行猶予の要件は、以下のア~ウです。

ア.3年以下の懲役・禁錮又は50万円以下の罰金を言い渡す場合であること
イ.情状に酌量すべきものがあること
ウ.前に禁錮刑以上の刑に処せられたことのないこと又は前に禁錮刑以上の刑に処せられたことがある場合でも、その執行終了日・免除日から5年以内に禁錮刑以上の刑に処せられていないこと

これを初度の執行猶予といいます。このように呼ぶのは、以下の再度の執行猶予と区別するためです。

すなわち、前に禁錮以上の刑に処せられた者でも、その刑の全部について執行猶予の付されたものについては、以下のア~ウの要件を満たすことにより、執行猶予を得ることができます。

ア.1年以下の懲役・禁錮を言い渡す場合であること
イ.情状に特に酌量すべきものがあること
ウ.前回の執行猶予判決において保護観察に付され、その期間内に更に罪を犯したものでないこと

なお、この再度の執行猶予は、執行猶予期間中に罪を犯している場合に再度執行猶予を付す制度であるため、認められることは稀です。

②刑の一部の執行猶予の要件

刑の一部の執行猶予の要件は、以下のア~ウです。

ア.前に禁錮刑に処せられて、その執行終了日・免除日から5年を経過していないこと(いわゆる累犯者ではないこと)
イ.3年以下の懲役を言い渡す場合であること
ウ.刑の一部の執行を猶予すべき必要性と相当性のあること

なお、違法薬物の単純所持と使用に関する罪については、上記①の累犯者ではないことの要件は不要とされています。

これは、違法薬物の使用等に関する罪を犯した者については刑の一部の執行猶予を認めるべき典型であるところ、この罪を犯した者については違法薬物に対する依存性故に常習性の認められる場合が多く、累犯者ではないことを要件にした場合、刑の一部の執行猶予を適用すべき者に適用できなくなるためです。

ただし、このように要件を緩和している以上、薬物事犯について刑の一部の執行猶予を付す場合には、必ず保護観察に付すことになっています。

(4) 執行猶予の効果

①刑の全部の執行猶予の効果

懲役1年・その刑の全部につき執行猶予3年の判決を言い渡された者は、ただちに刑務所に行く必要はなく、社会に戻り、3年間、罪を犯すことなく生活すれば、懲役1年の刑の言渡しの効力は消滅することになります。

②刑の一部の執行猶予の効果

懲役2年・その刑の一部である懲役4月につき執行猶予2年との判決を言い渡された者については、まず刑の執行を猶予されない1年8ヶ月は刑務所に行くことになります。

しかし、残りの4ヶ月は、刑の執行を2年間猶予されるため、社会復帰した上、その後、2年間、罪を犯さなければ、懲役4ヶ月の刑の言渡しの効力は消滅することになります。

③執行猶予のメリット

このように、執行猶予は、①刑の全部の執行猶予の場合には、即時に社会復帰できること、②刑の一部の執行猶予の場合には、通常より早期に社会復帰できることに一番のメリットがあります。

(5) 執行猶予の実情

①執行猶予の割合

2016年度の死刑・懲役・禁錮に処せられた者のうち、その約62.5%である3万2000人弱は、刑の全部・一部執行猶予を得ています。なお、このうち、刑の全部の執行猶予を得た者は、全体の約60%の3万人強となります。

つまり、実際に死刑・懲役・禁錮刑の言い渡された者の半数を超える者は、その刑の執行を猶予されているのです。

②執行猶予を得るためのポイント

執行猶予を得るためのポイントは、①そもそも執行猶予を付すことのできる場合であることの確認、②執行猶予を付すことの必要性と相当性について有利になる事情を裁判官に伝えることです。

詳述すれば、執行猶予は、要するに、犯罪者の更生について、刑務所における矯正ではなく、社会内での自力更生に委ねるものである以上、社会内での自力更生を期待でき、かつ、その機会を付与してもよいと判断される必要があるのです。

そして、その判断は諸事情を考慮して行われるところ、主として、犯した犯罪の内容、被害弁償・示談の成否、反省の態度、更生環境、前科・前歴の有無などを考慮しますから、たとえば、弁護人を通じて被害者に謝罪の意思を伝えて示談の交渉を行うことは、執行猶予を得るための1つのポイントになるのです。

3.まとめ

刑事事件を起こしてしまい、起訴されて有罪判決を下されてしまう場合でも、執行猶予を得ることにより、直ちに刑務所に行くことを免れ、社会内での自力更生の機会を与えられる余地があります。

もっとも、事案により、そもそも執行猶予を得られないものがあり、また、実際に執行猶予を得るには、刑事裁判の実務に関する知識・運用を踏まえ、適切に裁判官を説得する必要がありますから、早めに刑事事件に強い泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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