刑事弁護 [公開日]2018年1月18日[更新日]2021年2月24日

禁錮・懲役・執行猶予とは?各判決の意味を解説

新聞・テレビ等の各種メディアの刑事裁判に関する報道において、「禁錮・懲役○年・執行猶予○年の判決」との言葉に触れることがあります。

聞き慣れた言葉ですが、「禁錮と懲役の違いは何なのか」「執行猶予にはどのような意味合いがあるのか」などの詳細をご存知ない方も多いのではないでしょうか。

今回は、「禁錮」「懲役」、そして「執行猶予」について、それぞれどのような処分なのかを解説します。

1.禁錮刑・懲役刑とは

まず、「禁錮」「懲役」について解説します。
禁錮・懲役は「刑務所に服役すること」だと漠然とお考えの方が多いと思いますが、実際にはどのような処罰なのでしょうか?

(1) 禁錮刑・懲役刑の違い

「禁錮刑」は、刑事施設に拘置する刑罰です。
「懲役刑」は、禁錮同様に刑事施設に拘置されますが、その上で所定の労働に従事させる刑のことをいいます。

懲役刑と禁錮刑は、共に自由を剥奪する刑であることから「自由刑」と呼ばれていますが、所定の労働に従事させるか否かという点において異なります。

刑法では、同じ刑期であれば、労働義務が科せられる懲役刑の方がより重い刑と扱われますが、無期禁錮刑は有期懲役より重く、有期禁錮の長期が有期懲役の長期の二倍を超えるときは禁錮刑の方が重いとされています(刑法第10条1項、第9条)。

もっとも、禁錮刑のように何もすることなく刑期の満了を待つことは、労働に従事する懲役刑より精神的苦痛の大きいものです。
よって、禁錮刑に処せられた者でも、本人の希望により労働に従事することが大部分です。

ちなみに、どちらの刑もただ身体を拘束し・労働させる苦しみを与えるだけの意味を持つ刑ではありません。自由刑では、刑事施設での生活を行いながら更正をするための教育や、出所後の生活のための訓練等も行います。

刑務所での生活については、以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

刑務所の中の生活。家族・友人はどんな暮らしをしているの?

(2) 禁錮刑・懲役刑のある犯罪

罰金刑と比べても、懲役刑・禁錮刑は、身体拘束がある点で被告人にとって厳しい処分です。

禁錮刑・懲役刑のある犯罪は刑法上多数あります。その中でも、①自由刑については禁錮刑のみ科す犯罪、②自由刑については懲役刑のみ科す犯罪、③禁錮刑又は懲役刑を科すことのできる犯罪に大別されます。

  • 自由刑については禁錮刑のみ科すことのできる犯罪:政治犯の類型であり、典型は、刑法第2章の内乱に関する罪
  • 自由刑については懲役刑のみ科すことのできる犯罪:殺人罪、傷害罪、強盗罪、窃盗罪など
  • 禁錮刑又は懲役刑の科すことのできる犯罪:公務執行妨害罪、名誉毀損罪など

2.執行猶予について

(1) 執行猶予の意味

執行猶予」とは、その名の通り刑の執行を猶予することを意味します。裁判所の判決の言い渡しの際に、宣告刑と共に執行猶予を付す旨が宣言されます。

執行猶予には、刑の「全部の執行猶予」と「一部の執行猶予」があります。
(それぞれの内容は(2)で解説します。)

執行猶予の要件は以下の通りです。

全部の執行猶予

【最初の執行猶予が認められるための要件(25条1項)】

①次の(a)(b)いずれかの者であること。
(a)前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
(b)前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
※「禁錮以上の刑」とは、死刑、懲役刑、禁錮刑のことです。

②3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金の言渡しを受ける場合であること(したがって、拘留・科料の執行猶予は認められません)。

③相当な情状があること(犯罪行為の情状だけでなく、その後の示談成立等の状況も総合し、社会内での自主的な更正が期待できる事情を指します)。

実刑判決を受けて刑務所に服役して、出所後5年以内に禁固以上の犯罪を犯せば執行猶予は付かず、実刑となります。同様に執行猶予判決を受けて執行猶予期間が明けても、5年以内に禁固以上の犯罪を犯せば執行猶予は付かず実刑となります。

【再度の執行猶予が認められる要件(25条2項)】

前に禁錮以上の刑につきその執行を猶予され、または猶予中の者が、さらに罪を犯した場合に執行猶予を認めるためには、下記のとおり厳しい条件を満たす必要があります。

①1年以下の懲役・禁錮が言い渡された場合であること(したがって、罰金・拘留・科料の再度の執行猶予は認められません)。

②情状が特に酌量すべきものがあること。

③刑の執行猶予の言渡しの際に保護観察に付されながら、その保護観察の期間内にさらに罪を犯した場合でないこと(ただし、保護観察の期間内であっても保護観察の仮解除を受けたときは、それが取り消されるまでの間は保護観察に付されなかったものとみなされます)。

保護観察付き執行猶予を受けて、その観察中に禁固以上の犯罪を犯せば実刑となります。

刑の一部の執行猶予が認められるための要件(27条の2)

①次の(a)(b)(c)いずれかの者であること。
(a)前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
(b)前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
(c)前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日またはその執行の免除を得た日か5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

② 3 年以下の懲役または禁錮の言渡しを受ける場合であること。

③犯情の軽重、犯人の境遇その他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために、刑の一部の執行猶予が必要かつ相当であること。

(2) 執行猶予の効果

刑の全部の執行猶予の効果

例えば、判決主文が「被告人を懲役2年に処する。この裁判確定の日から3年間その刑の執行を猶予する」との判決を言い渡された者は、ただちに刑務所に行く必要はありません

社会に戻り、執行猶予の3年間、罪を犯すことなく生活すれば、懲役2年の刑の言渡しの効力は消滅することになります(刑法27条)。

なお、刑の全部の執行猶予の期間は、裁判確定の日から 1年以上、5年以下の範囲で裁判官の裁量で決められます。

刑の一部の執行猶予の効果

例えば、判決主文が「被告人を懲役2年6月に処する。その刑の一部である懲役6月の執行を3年間猶予する」との判決を言い渡された者については、この判決が確定したら、まず刑の執行を猶予されない2年間は刑務所に行くことになります。

しかし、残りの6ヶ月は刑の執行を3年間猶予されるため、社会復帰した後、3年間罪を犯して刑の一部の執行猶予の言渡しを取り消されることがなければ、懲役2年6月との刑は、懲役2年の刑期に減軽され、2年の刑が終了した時点で、その執行が終わったものとして取り扱われます(刑法27条の7)。

なお、刑の一部の執行猶予の期間も、1年以上、5年以下の範囲で裁判官の裁量で決められます。

この他、執行猶予の詳しい解説は以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]

執行猶予とは?執行猶予付き判決後の生活と影響~前科、仕事、旅行

3.執行猶予を得るためのポイント

禁錮刑・懲役刑となると実際に刑事施設へ収容されてしまうため、被疑者(被告人)としては何とかして執行猶予付きの判決を得たいものです。

執行猶予を得るためのポイントは、執行猶予を付すことの必要性と相当性について、有利になる事情を裁判官に伝えることです。

すなわち、裁判官に当該事件の被告人について「刑務所における矯正ではなく、社会内での自力更生を期待でき、かつ、その機会を付与してもよい」と判断される必要があるのです。

この判断は諸事情を考慮して行われます(主として、犯した犯罪の内容、被害弁償・示談の成否、反省の態度、更生環境、前科・前歴の有無など)。

従って、たとえば弁護人を通じて被害者に謝罪の意思を伝えて示談の交渉を行い示談を成立させること・反省文や意見書を裁判官に提出することは、執行猶予を得るための大きなポイントになります。

4.まとめ

刑事事件を起こしてしまい、起訴されて有罪判決を下されてしまう場合でも、執行猶予を得ることにより、直ちに刑務所に行くことを免れ、社会内での自力更生の機会を与えられる余地があります。

もっとも、事案によりそもそも執行猶予を得られないものがあり、また、実際に執行猶予を得るには、刑事裁判の実務に関する知識・運用を踏まえ、適切に裁判官を説得する必要があります。
刑事事件で逮捕され、起訴をされてしまいそうな方は、どうぞ早めに刑事事件に強い泉総合法律事務所の弁護士にご相談ください。

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