刑事訴訟の調書判決とは?刑事裁判も弁護士にお任せください。
裁判の手続きの簡略化のために、民事・刑事どちらに関しても「調書判決」というものがあります。
これはどのような手続きなのでしょうか?以下で解説致します。
1.民事裁判と刑事裁判の調書判決
(1) 調書判決とは
調書判決とは、裁判官による判決書の作成に代えて、裁判所書記官に、主文その他の定められた事項を、民事訴訟においては判決言渡期日の口頭弁論調書に、刑事訴訟においては判決宣告の日の公判調書にそれぞれ記載させることを言います。
口頭弁論調書とは、民事訴訟の口頭弁論の期日に法廷に立ち会った裁判所書記官が作成する、法廷でのやりとりを記録した書面です。裁判所書記官が署名押印し、裁判官が認印することになっています。
公判調書とは、裁判所書記官が作成する刑事訴訟の公判期日における審理における重要事項(裁判所の規則に定められています)を記録した書面です。
この判決言い渡しの日の口頭弁論調書もしくは、判決宣告の日の公判調書のことを「調書判決」と呼ぶこともあります。
(2) 民事訴訟の原則と例外
そもそも、民事訴訟法第252条は、「判決の言い渡しは、判決書の原本に基づいてする」と定めています。
さらに、民事訴訟法第253条第1項では、「主文、事実、理由、口頭弁論終結の日、当事者及び法定代理人、裁判所」を判決書に記載しなければいけないと定めています。
しかし、裁判の件数は非常に多く、そのすべてで判決書を作成すると、裁判官の負担が重く、判決の言い渡しまでに時間もかかってしまいます。
そこで、民事訴訟においては、民事訴訟法254条によって、例外として、下記の場合に原告の請求を認容するときには、調書判決ができると定められています。
- 被告が口頭弁論において原告の主張した事実を争わず、その他何らの防御の方法をも提出しない場合
- 被告が公示送達による呼出しを受けたにもかかわらず口頭弁論の期日に出頭しない場合(被告の提出した準備書面が口頭弁論において陳述されたものとみなされた場合を除く)
調書判決の場合には、裁判所は、裁判所書記官が作成する口頭弁論調書に当事者及び法定代理人、主文、請求並びに理由の要旨を記載させます。
(3) 刑事訴訟の場合
刑事訴訟では、刑事訴訟規則第53条本文に「裁判をするときには、裁判書を作らなければならない」と定められています。
「裁判」というのは、「判決」「決定」「命令」の総称です。そこで、判決をするときには、判決書を作成しなければならないということになります。
ただし、最高裁判所昭和25年11月17日判決では、「判決書は、判決宣告の際に必ずしも作成されていることを要しない」と判断されています。
つまり、判決を宣告した後に、宣告した内容を文書にしてもよいということです(もっとも、上記判決では、「もとより判決は、その宣告するところと判決書に記載するところと異なるところがないように、判決宣告の際に判決書の作成せられていることが望ましい」とも述べられています)。
そして、刑事訴訟規則219条では、地方裁判所又は簡易裁判所においては、上訴の申立てがない場合には、調書判決ができることになっています(=高等裁判所や最高裁判所は調書判決はできないということです)。
ただし、上訴の有無にかかわらず、判決宣告の日から14日以内でかつ判決の確定前に判決書の謄本の請求があると、判決書が作成されます。
2.刑事裁判の調書判決の内容
(1) 刑事裁判の判決の宣告の内容
刑事裁判の判決で宣告される内容は、下記のようなものです。
①有罪判決
- 刑の言渡(第333条1項)
- 執行猶予を付する場合には、執行猶予の言渡(保護観察を付する場合にはその言渡も)(第333条2項)
- 刑の免除の場合には、その言渡(第334条)
- 理由(第44条1項)
- 罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用(第335条1項)
- 法律上犯罪の成立を妨げる理由又は軽の加重減免の理由となる事実が主張されたときは、これに対する判断(第335条2項)
②無罪判決
- 無罪の言渡(第336条)
- 理由(第44条1項)
(2) 調書判決の内容
刑事訴訟法第219条では、宣告した内容のうち、下記について、判決宣告の日の公判調書の末尾に記載しなければいけないことになっています。
- 判決主文
- 罪となるべき事実の要旨
- 適用した罰条
さらに、上記には定められていませんが、量刑の理由まで記載されることもあります。
なお、この調書判決は、有罪判決の場合に利用されることが想定されていますので、無罪判決の場合には判決書が作成されます。
3.正規の判決書が欲しい場合
刑事訴訟法第46条では、「被告人その他の訴訟関係人は、自己の費用で、裁判書又は裁判を記載した調書の謄本又は抄本を請求することができる」と定められています。
もっとも、刑事訴訟規則第219条により、正規の判決書が欲しい場合は、上訴しない場合には、判決の宣告の翌日から14日以内に、判決書の謄本の請求をする必要があります。
判決書の謄本の請求がないまま判決が確定すれば調書判決(裁判を記載した調書)になります。
一方、上訴した場合もしくは、上訴された場合には、正規の判決書が作成されていますから、14日をすぎても、判決書の謄本請求をすることができます。
判決謄本の請求費用は、刑事訴訟法施行法第10条によって、用紙1枚につき60円と定められています。判決書の分量が、2枚であれば120円、10枚であれば600円ということです。
謄写費用は、金額分の収入印紙を裁判所に納めることによって支払います。
4.まとめ
刑事事件を起こしてしまい、起訴されれば日本での有罪率は99%と言われています。起訴・前科を避けるために、お早めに弁護士にご相談ください。
泉総合法律事務所は、刑事事件の弁護に精通した弁護士が多数在籍しており、刑事裁判の弁護経験も大変豊富です。起訴され裁判となってしまった方でも、どうぞご相談・ご依頼ください。