轢き逃げ(ひき逃げ)、当て逃げはどんな犯罪?刑罰・罰金は?

交通事故

轢き逃げ、当て逃げはどんな犯罪?

1.「轢き逃げ(ひき逃げ)」、「当て逃げ」とは?

交通事故が発生した際に、「轢き逃げ」、「当て逃げ」という言葉が使われることがあります。

「轢き逃げ(ひき逃げ)」とは、一般的には、自動車や二輪車で歩行者を轢いてしまい、そのまま逃げる行為を意味し、また「当て逃げ」とは、一般的に、自動車を運転していて人以外の物に衝突して壊してしまい、そのまま逃げる行為を意味します。
しかし、法律の条文には、「轢き逃げ」、「当て逃げ」という言葉は使われていません。

「轢き逃げ」、「当て逃げ」を起こした場合、どのような犯罪が成立し、どの程度の刑罰、罰金が科せられるのでしょうか。示談の必要性とともに解説します。

2.「轢き逃げ(ひき逃げ)」の場合の刑罰・罰金

まず、運転中に不注意で歩行者を轢いてしまったり、他の車に衝突する等によって、人身事故を引き起こしてしまったりした行為については、過失運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律5条)が成立します。

次に、人身事故を起こしてしまったにもかかわらず、被害者の救護行為や事故車の移動、ハザードランプの点灯等の道路上の危険防止措置等を行わずに現場から逃走してしまった行為については、措置義務違反の罪が成立します(道路交通法72条1項前段、同法117条2項)。

加重による重い処罰

そして、刑法上は、過失運転致死傷罪と措置義務違反は併合罪(刑法45条)とされ、刑が加重されますので、通常の過失運転致死傷罪に轢き逃げが加わることによって、より重い刑で処罰されることになります。

轢き逃げの刑罰

過失運転致死傷罪:7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金
措置義務違反:10年以下の懲役又は100万円以下の罰金

「轢き逃げ(過失運転致死傷罪+措置義務違反)」の刑罰について、2個以上の刑を科す場合、刑の合計が重い罪の刑の1.5倍を超えるときは、重い罪の刑の1.5倍が上限とされますので(刑法47条)、刑の上限は、懲役17年ではなく、最も重い罪の刑である懲役10年を1.5倍した懲役15年となります。

いずれにしても、「轢き逃げ」が加わることで、当初より倍以上も重い刑が科されることになります。

飲酒運転

また、人身事故を起こした後に飲酒運転の発覚を免れる行為については、12年以下の懲役となっていますので(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律4条)、飲酒運転に「轢き逃げ」行為が加わると、懲役12年が1.5倍され、より重い刑(懲役18年)が科されることになります。

なお、刑の重さを具体的に決める際には、運転者の過失の程度、被害者の怪我の重大さ、被害者の人数、任意保険加入の有無、逃亡後の状況などの事情が考慮されています。

軽微な事故であったり、被害者の怪我が軽症であったり、任意保険に加入していて損害賠償が全額行われる等の場合には、罰金刑で終わることもありますが、飲酒運転や無免許運転等の犯行態様が悪質で、被害者が複数であったり、死亡したり、重傷を負ってしまったりした場合などでは、前科がなくても実刑とされるケースがあります。

3.「当て逃げ」の場合の刑罰・罰金

「当て逃げ」も「轢き逃げ」と同様に法律上の用語ではありません。「当て逃げ」によってどのような犯罪が成立するでしょうか。

他人の物を破壊する行為を損壊した場合には、器物損壊罪(刑法261条)が成立します。そこで、「当て逃げ」について、器物損壊罪の成否が問題となりますが、器物損壊罪は、わざと他人の物を壊した行為を対象としているため、「当て逃げ」のように、運転中の不注意(過失)が原因で物を壊した場合には成立しません(民事上の賠償責任は発生します)。

しかし、物損事故を起こしてしまったにもかかわらず、警察への通報や道路上の危険防止措置を怠って逃走した点については、措置義務違反(道路交通法72条1項前段、同117条の5)が成立し、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金が科されることになります。

したがって、「轢き逃げ」と同様に、「当て逃げ」の場合も、通常の物損事故と比較すると重く処罰されるといえます。

4.特に轢き逃げでは被害者との示談の必要性が高い

「轢き逃げ」、「当て逃げ」を起こしてしまった場合、被害者との間で示談が成立していれば、刑の重さを判断する際に有利な事情と扱われます。

特に「轢き逃げ」による重大事故の場合、示談の重要性は一層高まりますが、治療が長期化する等の事情により、刑事手続が終了するまでに示談を成立させることが難しいケースもあります。また、加害者が、保険会社に被害者対応を全て任せてしまい、直接の謝罪等を行わなかったことで、被害者側の処罰感情が悪化してしまうこともあります。

このような場合の対応として、被害者に誠意を示すために、被害者に直接謝罪やお見舞いを行ったり、任意保険の支払とは別に見舞金等を支払ったりすることは、刑の重さを判断する際に有利に扱われますし、被害者から嘆願書を取り付けたりすることができれば、より有利な事情として扱われます。

示談金・慰謝料の相場

轢き逃げの示談金・慰謝料の相場は一概には言えず、計量と同様に過失の程度や被害者の怪我の重大さ、被害者の人数、飲酒運転やスピード違反をしていたかどうかなどで決められます。

なお、保険会社との契約では、保険会社の承諾なく、加害者が被害者と示談を成立させることは禁じられています。しかし、保険会社は民事上の交渉しか行いませんので、刑事手続のために、被害者から嘆願書を取り付けることは通常は行われません。

5.交通事故の加害者になってしまったら泉総合法律事務所にご相談ください

保険会社に示談交渉を任せるだけではなく、加害者自身で弁護人を選任して被害者対応を行うことが、刑事責任を軽くするために必要とされる場合もありますので、このような場合は経験豊富な弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士法人泉総合法律事務所は交通事故(人身事故)の刑事弁護にも力を入れており、弁護依頼も多数受けておりますので、人身事故を起こした際には是非とも当所に刑事弁護をご依頼ください。

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