性犯罪 [公開日]2020年3月18日[更新日]2021年3月19日

「合意の上」で性行為に及んだのに、訴えられたケースの対処法

相手方に合意があると思って性行為に及んだところ、後になって「無理矢理に性行為を強いられた」と通報され、警察官に逮捕されたうえ、起訴されてしまい、刑事裁判の被告人になるケースがあります。

「合意していたのに、どうして自分が犯罪の加害者になってしまったのか…」と、困惑するでしょう。

もちろん、そのままでは実刑判決を受け、刑務所に服役しなくてはならず、その後の人生を棒に振ります。早急な対策が必要であり、困惑などしている時間はありません。

ここでは、合意の上で性行為に及んだが後に訴えられてしまった場合の正しい対処法について解説します。

1.性行為に合意がないことで成立する犯罪

まず、相手との合意がなく性的な行為が行われた場合に、成立する可能性のある犯罪を確認しましょう。

(1) 強制性交等罪

刑法177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

相手が13歳以上の場合、相手との合意、すなわち相手の同意があれば、強制性交等罪は成立しません。強制性交等罪は被害者の性的な自由を侵害する犯罪だからです

逆に、判断能力が不十分な13歳未満の場合は、仮に同意があったとしても、法的に有効な同意と評価することはできないので、同意の有無を問わず強制性交等罪となります。

しかし、相手が13歳以上の場合における強制性交等罪は、同意がないというだけで性行為を処罰するわけではなく、同意がない性行為のうち、暴行・脅迫が用いられた場合に限定して処罰するものです。決して、不同意の性行為というだけで、これを犯罪としているものではありません。

現行法が、暴行・脅迫を要件とするのは、対象行為を「意思に反する性行為であることが明らかな場合」に限定して、処罰範囲を明確化するためです。そのため、「相手の抵抗を著しく困難とする程度の暴行・脅迫」がなければ強制性交等罪は成立しないと理解されています。

なお、相手が13歳未満の場合は、前述のとおり、たとえ同意があっても強制性交等罪が成立し、暴行・脅迫も不要です。つまり13歳未満の相手と性行為を行うこと、それ自体が犯罪とされているのです。

(2) 準強制性交等罪

刑法178条2項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

準強制性交等罪は、人を心神喪失又は抗拒不能にさせ、若しくはそれを利用して性交等罪を行う場合に適用されます。暴行・脅迫を用いなくとも、相手の抵抗が困難な状態を利用して性行為を行えば、強制性交等罪と同様に処罰されるのです。

この場合の心神喪失とは、①泥酔・薬物・失神などによる意識喪失、②高度の精神的な障害等で、自己の性的自由が侵害される認識を欠く状態を指します。

例えば、精神疾患で幼児程度の知能しかない被害者との性行為は、たとえ同意があったとしても、心神喪失状態に乗じたものとして、準強制性交等罪が成立します(参考裁判例:東京高裁昭和51年12月13日判決・東京高等裁判所判決時報(刑事)27巻12号165頁)。

抗拒不能とは、加害者による暴行・脅迫以外の場合で、著しく抵抗が困難と認められる状態を言います。

これには、①物理的な抵抗困難(例えば、加害者以外の者によって手足を縛られた被害者)だけでなく、②心理的な抵抗困難があります。

心理的な抵抗困難とは、次のような例です。

(ⅰ)宗教家が信者である少女に対し、「指示に従わないと地獄に落ちて永遠に苦しむことになる」との説教を行い、少女の畏怖に乗じて性行為をした(京都地裁平成18年2月21日判決・判例タイムズ1229号344頁)
(ⅱ)深夜、被害者が眠気と暗さから、加害者のことを夫と誤信していることに乗じて性行為をした(仙台高裁昭和32年4月18日判決・高等裁判所刑事判例集10巻6号491頁)
(ⅲ)医師が「治療のために性行為が必要」と被害者に誤信させて性行為をした(名古屋地裁昭和55年7月28日判決・判例時報1007号140頁)

これらの場合には、たとえ相手の同意があっても、有効な同意とは評価できませんから、準強制性交等罪が成立します。

(3) 強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪

刑法176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

刑法178条1項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。

性交等に至らなくとも、13歳以上の者に対し暴行・脅迫を用い、あるいは心神喪失・抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした場合には、強制わいせつ罪、若しくは準強制わいせつ罪が成立します。13歳未満の者に対するわいせつ行為は手段や同意の有無を問わず、強制わいせつ罪が成立します。

わいせつな行為とは、被害者の性的羞恥心を害する行為を言います。例えば、相手方の同意なしでキスをしたり、被害者の胸や臀部に直接触れたり、抱きついたりする行為がこれにあたります。

 

なお、以上の他にも、被害者の同意があっても性的な行為が犯罪となる場合として、次のものがあります。いずれも被害者が18歳未満の場合を対象とします。

  • 監護者性交等罪・監護者強制わいせつ罪(刑法179条)
  • 青少年保護育成条例違反の淫行罪(各自治体の条例に規定)
  • 児童福祉法違反の淫行罪(同法34条1項6号)
  • 児童買春等処罰法違反の児童買春罪(同法4条)

2.裁判になった場合はどうすればいい?

かつては、強制性交等罪及び強制わいせつ罪等の性犯罪は、被害者の告訴が無ければ起訴することができない親告罪でした。しかし、2017年の刑法改正により、これらの犯罪は告訴を起訴の条件としない非親告罪となりました。

もっとも、性犯罪の起訴・不起訴の判断にあたっては、被害者の意思を尊重する運用がなされていますし、被害者の協力を抜きに公判を維持することは困難ですから、実際上は、起訴は告訴を得た上で行われています。

もし、「被害者は同意をしていなかった」として、強制性交等罪などの罪で起訴された場合はどうすれば良いのでしょうか?

(1) 被害者の合意や故意の有無を争う

被害者が13歳以上の場合、被害者の同意があると強制性交等罪は成立しません。また、被害者の同意がなくとも、同意があったと誤信した場合は故意がないため、犯罪が成立しません。

被害者との合意も、被告人の誤信も、いずれも内心の問題ですから、通常、これを直接に裏付ける客観的な証拠は存在しません。

それゆえ、両当事者の年齢、両当事者の人間関係、過去の性行為経験、性行為に至った経緯、性行為の場所・時・態様、性行為後の被害者の対応、被害が発覚した経緯などの間接的な事実から、合意の有無と被疑者の認識内容を推認・証明していくことになります。

したがって、起訴されてしまったら、被害者による合意の存在、あるいは被告人による合意の誤信を裏付ける間接事実をどれだけ主張・立証することができるかが勝負となります。

刑事裁判における犯罪事実の立証責任は検察官にあり、被告人は無罪を得るために犯罪事実の不存在を立証する責任はありません。しかし、合意の存在や誤信を推認する間接事実の存在は、被告人側から主張し、その証拠を提出できなけば、検察官の主張を弾劾することはできません。この意味で、被告人側も事実上の立証責任を負担しているのです。

性行為は密室で行われるなど、目撃者がいないことが通常なので、具体的な事情を知っているのは当事者だけです。被告人としては、弁護人ができるだけ多くの間接事実を把握して戦えるよう、前後の状況を詳細に報告することが大切です。

具体例①被告人、被害者が恋人関係(カップルである)にある場合

恋人関係にあることをもって、ただちに性行為に合意していたとは言えません。

性的自由の保護とは、人がいつ・どこで・誰と・どのように性行為を行うかについて、その具体的場面における、その人の、その都度の決定を尊重することです。
したがって、恋人や夫婦であるから、「事前に包括的な合意があった」と評価するべきではありません。

恋人や夫婦であったことは、合意を推認させる重要な間接事実のひとつではありますが、決定的なものではないのです。

裁判例でも、夫にも旧強姦罪が成立することを認めたものがあります(東京高裁平成19年9月26日判決・判例タイムズ1268号345頁)。

具体例②ラブホテルに行くことに同意していた場合

ラブホテルに同行したからと言って、常に性行為に同意していたとは言えません。ラブホテルに行くことの合意があったかではなく、あくまでも、性行為に合意があったか否かだけが問題なのです。

ラブホテルに同行した事実も、合意を推認させる重要な間接事実のひとつですが、決定的なものではありません。

同行するに至った経緯、ホテル内でのやりとり、抵抗の有無、ホテルを退出する際の行動など、諸事情を考慮して判断されることになります。

具体例③被害者が抵抗しなかった場合

よく言われる、「抵抗ないのは合意があるから」というのも明白な誤りです。恐怖心やパニックで物理的な抵抗ができない場合があるからです。

抵抗しなかったという事実も、被害者の合意や被告人の誤信を推認する間接事実のひとつに過ぎないのです。

(2) 被害者と示談をして量刑を軽くしてもらう

強制性交等は法定刑が懲役刑のみです(罰金刑がありません)。そのため、有罪判決が出されると、執行猶予がつかない限り、刑務所に入ることになります。

真実、相手が同意していたと確信しているなら、あくまでも無罪判決を求めて闘うべきと言えます。その決心をされるなら、あなたの冤罪を晴らすために、弁護士は全力でサポートします。

もっとも、「冤罪と闘え」と言うことは簡単ですが、実際に裁判で争うとなると、短くとも数年にわたって国家権力と闘うことになります。

時間、労力、費用のコストは並大抵ではありません。その裁判を闘う間、保釈が認められず、ずっと勾留されたままという危険性もあります。保釈が認められたとしても、職場や学校に直ちに復帰できるとは限りません。

また、性行為の当時は同意していると判断していたとしても、今となっては、「自分勝手な判断だったのでは…」と自信のないケースもあるでしょう。起訴されてしまえば、無罪判決を勝ち取れる可能性は大きくはありません。

よって、落としどころを見つけて対処するという選択肢も考えるべきです。

この選択肢を視野にいれた場合に、もっとも賢明な対処は、起訴される前に、早々に弁護士を選任し、被害者との示談を成立させ、告訴を取り下げてもらうことです。

前述のように、性犯罪は親告罪ではなくなりましたが、被害者の意向は尊重されるため、示談成立で告訴が取り下げられれば、起訴されることはありません。

既に逮捕・勾留されている場合にも、早期に示談が成立すれば、勾留延長されないなど、早期の身柄解放も期待できます。

また、万一、示談成立が間に合わず、起訴されてしまった場合でも、その後に示談が成立すれば、裁判官に量刑上有利な事情として考慮してもらえます。

性犯罪の被害者は、加害者に対して、怒り、恐怖、嫌悪を強く感じているので、加害者本人やその家族・知人などと接触することを嫌いますし、これらの者が被害者側に接触しようとする行為は、御礼参りや証人威迫行為と評価されて、かえって加害者に不利になる危険性が高いものです。

したがって、示談交渉は、やはり刑事弁護のプロである弁護士に依頼するべきです。

3.まとめ

相手方に合意があると思った場合でも、後に合意がなかったと言われトラブルになることがあります。
そんな場合は、すぐに弁護士に相談してください。

泉総合法律事務所には、強制性交等罪、準強制性交等罪、強制わいせつ罪などの性犯罪に関する解決実績が豊富にあります。
実際に「相手が同意したものと思い込んでいたが、被害届を提出されてしまった」という方の弁護も経験があり、無事に被害者との示談を成立させ・不起訴となりました。

お悩みの方は、ぜひ一度、泉総合法律事務所の無料相談をご利用ください。

刑事事件コラム一覧に戻る