性犯罪 [公開日]2020年3月18日

「合意の上」で性行為に及んだのに、訴えられたケースの対処法

相手方に合意があると思い性行為に及んだが、後に無理矢理性行為を強いられたと通報され、逮捕ひいては裁判になるケースが多々あります。当事者は「あの時合意していたのにどうして…」と思い、困惑するのではないでしょうか。

ここでは、合意の上で性行為に及んだが後に訴えられてしまった場合の正しい対処法について解説します。

1.性行為に合意がないことで成立する犯罪

性行為に関する犯罪には、①合意があっても犯罪となるもの、②合意があれば犯罪とならないものがあります。

①合意があっても犯罪となるものは、次のとおりです。

  • 13歳未満の被害者に対する強制性交等罪(刑法177条)
  • 13歳未満の被害者に対する準強制性交等罪 (刑法178条2項)
  • 13歳未満の被害者に対する強制わいせつ罪 (刑法176条)
  • 13歳未満の被害者に対する準強制わいせつ罪 (刑法178条1項)
  • 18歳未満の被害者に対する監護者性交等罪(刑法179条2項)
  • 18歳未満の被害者に対する監護者わいせつ罪(刑法179条1項)
  • 18歳未満の被害者に対する児童福祉法違反(同法34条1項6号、60条1項)
  • 18歳未満の被害者に対する児童買春罪(児童買春処罰法4条、2条2項)
  • 18歳未満の被害者に対する青少年保護育成条例違反(例:東京都青少年の健全な育成に関する条例18条の6、24条の3)

②合意があれば犯罪とならないものは、次のとおりです。

  • 13歳以上の被害者に対する強制性交等罪(刑法177条)
  • 13歳以上の被害者に対する準強制性交等罪 (刑法178条2項)
  • 13歳以上の被害者に対する強制わいせつ罪 (刑法176条)
  • 13歳以上の被害者に対する準強制わいせつ罪 (刑法178条1項)

このように、13歳以上の者に対する強制性交等罪、準強制性交等罪、強制わいせつ罪、準強制わいせつ罪は、相手との合意があれば成立しません。

もっとも、相手が合意していると自分が思っていても、実は合意していなかった!と言われた場合、犯罪が成立し得る可能性があります。

(1) 強制性交等罪

刑法177条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。13歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

強制性交等罪は、暴行・脅迫を用いて性交等を行った場合に成立します。

暴行・脅迫は、相手の反抗を著しく困難にする強度のものが必要です。例えば、相手を殴ったり、ナイフ等の凶器を用いて「抵抗したら殺すぞ」と脅すような行為がこれにあたります。

性交等には肛門性交、口腔性交を含みます。

改正前の刑法では、「性交等」ではなく「姦淫」という言葉が使われていました。
姦淫は「男性器を女性器に挿入する」ことを意味したので、被害者は女性のみでした。しかし、「性交等」にはこのような限定はないので、被害者が男性になることもありえます。

被害者が13歳以上の場合は、暴行・脅迫を用いて性交等をした場合に強制性交等罪が成立します。言い換えると、性交等をするのに暴行・脅迫を用いたと評価されない場合は強制性交等罪は成立しません。

一方、被害者が13歳未満の場合は、暴行・脅迫を用いたことが要件となっていません。そのため、この場合は性交等をしただけで強制性交等罪が成立することがあります。

(2) 準強制性交等罪

刑法178条2項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

準強制性交等罪は、人を心神喪失又は抗拒不能にさせ、若しくはそれを利用して性交等罪を行う場合に適用されます。

心神喪失とは、精神的な障害等で性交等の行為に対する判断能力を失った状態を指します。例えば、酒に酔って泥酔した状態の者、又は、睡眠薬を飲ませて眠っている者と性交等をする場合がこれにあたります。

抗拒不能とは、心神喪失以外の場合で、抵抗が困難と認められる状態を言います。医師が施術と称して性交等をする場合がこれにあたります。

(3) 強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪

刑法176条
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

刑法178条1項
人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。

性交等に至らなくとも、暴行・脅迫を用い、あるいは心神喪失・抗拒不能に乗じてわいせつな行為をした場合には、強制わいせつ罪、若しくは準強制わいせつ罪が成立します。

わいせつな行為とは、被害者の性的羞恥心を害する行為を言います。例えば、キスをしたり、被害者の胸や臀部に直接触れたりする行為がこれにあたります。

2.裁判になった場合はどうすればいいの?

強制性交等罪及び強制わいせつ罪等の犯罪は、2017年の刑法改正により非親告罪となりました。そのため、被害者が被疑者の処罰を求める意思表示(告訴)を捜査機関にしなくとも、検察官が起訴することが可能です。

もし、「同意をしていなかった」として、強制性交等の罪で起訴された場合はどうすれば良いのでしょうか?

(1) 被害者の合意の有無を争う

被害者が13歳以上の場合、被害者の同意があると強制性交等罪は成立しません。また、被害者の同意がなくとも、同意があったと誤信した場合は故意がないため、犯罪が成立しません。

被害者との合意も、被告人の誤信も、いずれも内心の問題ですから、通常、これを明確に裏付ける客観的な証拠は存在しません。

それゆえ、両当事者の年齢、両当事者の人間関係、過去の性行為経験、性行為に至った経緯、性行為の場所・時・態様、性行為後の被害者の対応、被害が発覚した経緯などの間接的な事実から、合意の有無と被疑者の認識内容を推認することになります。

したがって、起訴されてしまったら、被害者による合意の存在、あるいは被告人による合意の誤信を裏付ける間接事実をどれだけ提示することができるかが勝負となります。

性行為は密室で行われるので、具体的な事情を知っているのは当事者だけです。被告人としては、弁護人ができるだけ多くの間接事実を把握して戦えるよう、前後の状況を詳細に報告することが大切です。

【具体例】

①被告人、被害者が恋人関係にある場合

恋人関係にあるから性行為について合意しているとはなりません。具体的な行為の時点で被害者が合意しているかが問題で、例え恋人同士でも被害者が拒絶の意思表示や抵抗をした場合には強制性交等罪が成立することがあります。

もっとも、恋人同士であり、かつ、抵抗等がなかった場合には、たとえ真実は被害者が合意していなかったとしても、合意があると被告人が誤信した推認されやすいでしょう。

②ラブホテルに行くことに同意していた場合

ラブホテルに行ったからと言って、常に性行為等に同意しているとはなりません。ラブホテルに行くことの合意があったかではなく、あくまでも、性行為等に合意があったか否かが重要なのです。

したがって、ラブホテルに同行していても、被害者が拒絶の意思を示したり、抵抗したりした事実があるなら、やはり合意を欠いたものと推認されます。

逆に、そのような事実がないならば、被害者の年齢等の事情にもよりますが、ラブホテルに同行したという事実は、被害者の合意があったと推認する事情となりますし、仮に、真実は被害者が合意していなかったとしても、被告人が合意を誤信したものと推認する事情になります。

③被害者が抵抗しなかった場合

よく言われる、抵抗ないのは合意があるからというのも明白な誤りです。恐怖心やパニックで抵抗ができない場合があるからです。

抵抗しなかったという事実も、被害者の合意や被告人の誤信を推認する間接事実のひとつに過ぎないのです。

(2) 被害者と示談をして量刑を軽くしてもらう

強制性交等は法定刑が懲役刑のみです(罰金刑がありません)。そのため、有罪判決が出されると、執行猶予がつかない限り、刑務所に入ることになります。

これを避けるためには、起訴後であっても、被害者と示談をすることが重要です。執行猶予が付くか否かも含めた量刑判断は、裁判官が様々な事情を踏まえて決するのですが、被害者と示談が成立しているという事実は、示談金(慰謝料)の支払により被害が回復され、被害者の処罰感情が減少ないし失われたものとして、被告人に有利な事情として考慮されるからです。

もっとも、性犯罪においては、被害者は被疑者と会う事を拒絶することが多いので、被疑者自身やその家族、友人などで示談を成立させるのは困難です。

起訴後は弁護人がその任務にあたりますが、起訴されることを防ぐためにも、捜査段階から弁護士を依頼して示談交渉を開始するべきでしょう。

3.まとめ

相手方に合意があると思った場合でも、後に合意がなかったと言われトラブルになることがあります。
そんな場合は、すぐに弁護士に相談してください。

泉総合法律事務所には、強制性交等罪、準強制性交等罪、強制わいせつ罪などの性犯罪に関する解決実績が豊富にあります。
実際に「相手が同意したものと思い込んでいたが、被害届を提出されてしまった」という方の弁護も経験があり、無事に被害者との示談を成立させ・不起訴となりました。

お悩みの方は、ぜひ一度、泉総合法律事務所の無料相談をご利用ください。

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