盗撮 [公開日]2018年2月27日[更新日]2021年7月13日

盗撮ハンターに脅迫・恐喝されたら

「盗撮ハンター」(盗撮狩り・盗撮犯狩り)という言葉はご存知でしょうか?

これは、盗撮の目撃者が、盗撮犯に対し「警察に行きたくなければ金を払え」などと脅したり、「被害者への示談金だ」と騙したりして、高額の金銭を巻き上げる犯罪行為を言います。

今回は、「盗撮ハンター」被害の事案を紹介し、実際に盗撮ハンターに遭遇したらどうするべきかを解説します。

1.盗撮ハンターの被害事例

(1) 盗撮ハンターの手口

つい出来心で女性を盗撮したところ、その行為を近くにいた第三者に目撃され、犯罪行為だと咎められてしまう場合があります。

通常、目撃者は、盗撮犯の身柄を確保し、110番通報をして盗撮犯を警察官に引き渡したり、駅なら駅員、デパートなどの店舗なら警備員に引き渡したりするでしょう。

ところが、盗撮ハンターは、盗撮犯を警察、駅員、警備員などに引き渡すことはしません。
彼らの目的は、盗撮犯人を処罰することではなく、盗撮犯の弱みを握って、脅したり騙したりして、違法に金銭を支払わせることにあるからです。

盗撮ハンターは「警察に行きたくなければ金銭を出せ」などとその場で要求してきます。「場所を変えよう」と、喫茶店、ファミレス、あるは人気のない場所に連れ込まれて金銭を要求される場合もあります。

彼らは、多くの場合「被害者への示談金、慰謝料」という名目で金銭を要求します。あたかも本当に被害者に渡す金銭であるかのように装っているだけというケースもあれば、実際に被害女性が彼らの一味であるケースもあります。

盗撮犯は、警察沙汰となることが怖くなり、言われるままに金銭の支払いに応じてしまいます。手持ちの金銭がないときには、盗撮ハンターが銀行ATMまで同行して預金を下ろさせたり、カードでキャッシングをさせたり、自宅までついてきたりするケースもあります。

また、ほとんどの場合、免許証などの身分証明書、キャッシュカード、クレジットカードなどを提示することを要求され、その画像をスマホで撮影されてしまいますので、本名も住所も把握されてしまいます。当然、電話番号も教えるよう要求されます。

このため、言われるままに金銭を支払い開放されたと思っても、しばらくしてから追加の金銭を要求されるケースもあります。
いったん弱みを握られた者は、「金づる」として、いつまでも「ゆすり・たかり」の被害に遭うのです。

(2) 盗撮ハンターの行為は恐喝罪・詐欺罪に当たる

このような盗撮ハンターの行為は、それ自体が犯罪行為です。

恐喝罪

まず、「金銭を支払わなければ警察へ突き出すぞ」と脅すことは、恐喝罪に該当します。

刑法249条 恐喝罪
第1項 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する(以下略)

「恐喝」とは、財物を交付させる手段としての暴行・脅迫のことを言います。「脅迫」とは、人を畏怖させる害悪を告知することです。

つまり、要求に応じないと害悪を受けると怖がらせて、金銭を交付させること恐喝罪です。

この「害悪」それ自体は、違法な行為であることを要しません。「犯罪行為を警察に通報する」という行為は適法な行為ですが、通報される相手は不利益を受ける以上、相手にとって「害悪」であることに変わりはないからです。

もっとも、それでは、例えば、盗撮の被害者が「示談金を支払わないなら、被害届を出す」と言う行為も恐喝に該当するの?という疑問があると思います。

実は、これも怖がらせている以上、恐喝罪の「害悪の告知」に該当します。ただ、盗撮の被害者は盗撮犯に対して慰謝料を請求する権利を有していますから、被害届を出さないことを条件に示談金を請求する行為も、それが社会的に相当な範囲であれば、正当な権利行使であって違法な行為とは言えません。

これを明らかにしたのが次の判例です。

最高裁昭和30年10月14日判決
「他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり且つその方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度を超えない限り、何等違法の問題を生じないけれども、右の範囲程度を逸脱するときは違法となり、恐喝罪の成立することがある」

社会的に相当な範囲か否かは、その被害内容、要求する示談金の額、交渉経過、告知の内容や方法などの具体的な状況を考慮して判断します。例えば、事案に比してあまりに過大な示談金を執拗に要求する行為は、社会的な相当性を欠く違法行為として恐喝罪が成立する可能性があります。

詐欺罪

次に「被害者に渡すから、示談金を支払え」と騙すことは、詐欺罪に該当します。

刑法246条 詐欺罪
第1項 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する(以下略)

ここに「人を欺いて」とは、他人を誤信させる行為を意味し、欺罔行為と呼ばれています。

実際は被害者に示談金を渡すつもりがないのに、あたかも被害者への示談金であるかのように装い、盗撮犯を誤信させて金銭を要求することは、欺罔行為に該当します。

2.盗撮ハンターへの対応方法

盗撮ハンターの餌食となることを回避することは簡単です。その場で110番をすれば良いのです。
詐欺または恐喝に遭っていると伝えて、警官に来てもらいましょう。

脅迫や詐欺の言葉を録音していなければ、警察官が来ても盗撮ハンターたちを逮捕することはできません。
しかし、警官が来れば、もはやその場で恐喝行為・詐欺行為を続けることはできませんから、盗撮ハンターたちは通常去って行きます。

住所を知られてしまった場合、後日家まで押しかけてきたら、その場でまた110番通報しましょう。彼らはお金が欲しいだけですから、来る度に110番通報する人間とわかれば、面倒くさくなって来なくなります。

さて、このように盗撮ハンターから逃れることは簡単ですが、最大の問題は、盗撮犯である本人が、自ら警察に110番をする勇気がないという点です。

確かに、盗撮行為は都道府県が制定する迷惑防止条例違反となります。
しかし、その法定刑は、例えば東京都の場合、「盗撮行為は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金、常習犯の場合2年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。

これは、性犯罪の中では決して重罪とまでは言えず、また、衝動的で計画性もない・初犯であるなどの事情があれば、悪くても罰金で終わり、正式裁判を免れる公算は高いと言えます。

しかも、盗撮ハンターを回避するためとはいえ、警察に発覚していない盗撮事件を自ら申告する行為は「自首」に該当し、盗撮犯に有利な事情として考慮されることが期待でき、場合によっては不起訴の可能性も出てきます。

したがって、盗撮ハンターに出逢った際は、事後であっても勇気をもって警察に通報することが最善の選択と言えます。

【盗撮ハンターが居座る場合】
被害者の女性も盗撮ハンターの一味という場合は、盗撮ハンターが立ち去らず、目撃者として警察の捜査に協力しようとする場合があります。盗撮犯として立件させたうえで、盗撮犯から被害者の女性に示談金を支払わせ、そこから利益を得ようとするのです。
このパターンの場合、後から被害者が要求してくる示談金の金額が法外に高額なので、被害者も共犯者であることは容易に推察できます。
要求金額が高額すぎる場合は、示談交渉の経過を記録し報告書にまとめて検察官に提出します。示談が成立しないのは被害者側に非があることを明らかとするためです。そのうえで妥当な相場金額を法務局に供託するか、贖罪寄付することで反省の意思を明らかにします。
このような方法で検察官の不起訴処分を引き出すには、弁護士による弁護活動なしには実際には困難です。
ですから、盗撮行為を行い、盗撮ハンターに遭遇してしまったら、勇気をもって警察に通報すると共に、できるだけ早く、盗撮犯としての自分を守ってくれる弁護士を依頼することが大切です。

3.盗撮ハンター・恐喝でお悩みの方はご相談ください。

確かに、盗撮を目撃した相手方の要求に従えば、その場では警察沙汰にならないで済むかもしれません。
逆に、相手方の要求を無視した場合には、相手方がどういう対応をとるかわからず恐怖を感じるのは当然のことでしょう。

しかし、一度盗撮ハンターに金銭を払ってしまうと、後日更なる金銭要求をしてくることも多く、下手をすれば一生食いものにされます。

泉総合法律事務所は、多数の盗撮事件の刑事弁護に取り組んでいる関係で、このような恐喝事件の相談や依頼を受けることもあります。

盗撮ハンターからの恐喝でお悩みの方も、泉総合法律事務所の無料相談をぜひご利用ください。

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