盗撮事件における示談の位置づけと示談金・慰謝料の相場について

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盗撮事件における示談の位置づけと示談金・慰謝料の相場について

強制わいせつ事件や盗撮事件のように、特定の被害者がいる犯罪においては、被害者との示談ができているかどうかが刑事処罰に大きな影響を与えます。

そこで、今回は盗撮事件における被害者との示談について解説していきます。

1.盗撮事件の示談の位置づけ

盗撮とは、公共の場所(具体的には電車内、駅構内、商業施設内などの建物内、路上など)で女性をひそかに撮影する行為です。多くの場合女性の下半身をひそかに撮影することが対象となりますが、全身をひそかに撮影する行為も盗撮にあたり、刑事罰が科されます。

盗撮事件では、多くの場合、各都道府県の迷惑防止条例違反に該当することになります。

東京都は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という条例です。神奈川県は、「神奈川県迷惑行為防止条例」、千葉県は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という条例、埼玉県は、「埼玉県迷惑行為防止条例」という名称となっています。

刑事処罰が軽くなる可能性

盗撮事件の場合、個人の被害者がいる犯罪ですから、検察官が決める事件の処分や、裁判所が出す判決の内容(盗撮で正式裁判になることは稀ですが)に関し、被害者との示談の成否が重要な意味を持ちます。

つまり、被害者と示談することによって、盗撮事件の刑事処罰が軽くなる可能性が高いということです。

2.示談交渉の流れ

被害者との示談ですが、被疑者(盗撮を行った者)は被害者の連絡先を知らないのが通常ですから、弁護士に刑事弁護を依頼することが不可欠です。

弁護士は検察官を通じて被害者の了解のもとに被害者の連絡先を知ることができ(中には被害者が連絡先を教えてくれないことも稀ですがあります)、弁護士は被害者に連絡して示談交渉をして示談を取り付けることになります。盗撮の場合、被害者が20歳以上の成人であればほとんど示談していただけます。

前科・前歴の有無及びその数、盗撮の態様なども検察官の処分や裁判所の判決に影響を与えますので一概には言えませんが、盗撮のように罪名が迷惑防止条例違反のケースで、被疑者に前科・前歴などが特になければ、弁護士が盗撮の被害者と示談ができた場合、検察官の処分段階において初犯であれば通常不起訴処分となります。

【参考】弁護士が語る!盗撮の実態と逮捕される前に知っておきたいこと

3.示談を拒否された、示談できなかった場合

逆に、被害者が示談に応じないなどの理由で示談ができなかった場合には、初犯であっても、罰金刑になるのが通常です。

迷惑防止条例の盗撮に関する規制は各都道府県によって同一ではありませんが、東京、神奈川、千葉、埼玉の場合、法定刑は「6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金」とされており、初犯であっても、10万円~30万円程度の罰金刑を科されることが多いといえます。この場合には略式起訴といって正式裁判は開かれず罰金を納付するだけとなります。

罰金刑となると前科がつく

そして、罰金刑となると前科がつくことになります。前科自体は他人が知ることはできませんが、前科があることで次に刑事事件を起こせば逮捕の可能性は高くなると考えてください。また、何らかの形で前科が会社に発覚すれば、就業規則に従って厳しい懲戒処分を受ける可能性があります。

罰金だからといって甘く考えないことが大切です。

示談をするにも示談金が必要になってきますが、同じお金を払うのであれば、罰金刑で前科がついてお金を払うより、被害者にしっかりと反省の意を示し、謝罪文とともに示談金を支払って、不起訴処分を獲得するほうがメリットは大きいといえます。

【参考】罰金でも前科です!
【参考】示談できない、示談を拒否された場合の対処法は?弁護士に相談を!

4.示談金・慰謝料の金額の相場はいくら?

刑事事件における示談では「被害者に許してもらう」ということが大事になってきますが、弁護士が被疑者に代わって単に謝罪をすれば許してもらえるわけではありません。被疑者は、被害者に対して精神的苦痛を与えてしまっていますので、当然、被害者に対し、損害賠償として精神的苦痛を与えたことによる慰謝料等を支払わなければなりません。

また、示談には、被疑者を許し刑事処罰を望まないとの文言(宥恕(ゆうじょ)文言といいます)を織り込んでもらうことで不起訴処分にしてもらう意味がありますので、その対価にあたる金額を民事の損害賠償(慰謝料など)に加えて示談金を支払うことになります。

では、ここで支払うべき金額は実際にいくらくらいになるのでしょうか。

盗撮事件の示談金

示談は相手があることですので一概には言えませんが、正確な金額はいくらかと聞かれれば被害者が許していただいた金額、被害者が納得した金額という言い方になると思います。これまでの経験上、盗撮事件でしたら20万円~40万円といったところで示談がまとまるケースが多いように思っています。もちろん、被害者の被害感情が強かったり、被害に遭ったことによって発生した支出等があったりすれば、慰謝料の金額も増える傾向にあります。

また、盗撮事件では、被害者が未成年であることが時折あります。その場合、未成年者は、法律上の定めで、未成年者自身では示談を締結することができませんので、弁護士は親権者である両親と示談交渉をすることになります。

両親としては、娘を盗撮するなんてけしからんとの怒りが激しいのが通常ですので、弁護士が懇切丁寧に示談を粘り強くお願いしても示談に応じていただけないことも少なからずあります。

両親が示談に応じていただける場合でも、成年の被害女性の盗撮よりも、示談金額が高くなる傾向があります。

5.示談書の意味

弁護士が被害者との示談をまとめる際には、「示談書」を作成します。

この示談書にどのような意味があるかというと、まずは刑事事件の処分を決める検察官や裁判官に対して、被害者に盗撮事件について許してもらい、被疑者の刑事処罰を望まないとの意思表示を含む内容の合意が成立したことを示す意味があります。

また、民事上の損害賠償金を支払い、既にその支払義務が消滅したということも表します。すなわち、先にも述べたように、盗撮事件を起こした加害者は、被害者に対して精神的苦痛に対する慰謝料等の損害賠償義務を負っています。この損害賠償を既に行ったということを示談書で証明し、これで支払は終了した、という条項を示談書の中に盛り込みます。

これを「清算条項」といいますが、これを記載することによって、被害者から示談後、さらに損害賠償請求をされることが防げるのです。

6.性犯罪の示談交渉なら泉総合法律事務所へ

ここまでお話してきたことは、盗撮事件の示談と慰謝料についての一般論です。個々のケースでは、それぞれのケースに合わせた適切な対応が必要になってきます。

示談交渉でお悩みの方、盗撮事件で逮捕されてしまったという方は、示談経験、刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所へご相談、ご依頼ください。

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