迷惑防止条例違反の盗撮事件における示談方法と示談金の相場
盗撮で逮捕・検挙されてしまった場合、そのまま放っておくと罰金刑になり、前科がついてしまう可能性が高いです。
前科がつくと、その後の人生に大きな影響を与えるリスクがあります。盗撮で逮捕されたら、仮にすぐに釈放されたとしても、前科を回避するための弁護活動を受ける必要があります。
盗撮事件だけでなく、痴漢や強制わいせつ事件のように、特定の被害者がいる犯罪においては、被害者側との間で問題が解決しているかどうか、つまり示談が成立しているかどうかが刑事処罰に大きな影響を与えます。
今回は、盗撮事件に焦点を当て、被害者との示談について解説していきます。
1.迷惑防止条例違反の盗撮とは
盗撮とは、他人を密かに撮影する行為です。盗撮を行うと、各都道府県が独自に制定する迷惑防止条例違反となります。
多くの迷惑防止条例は、内容は微妙に違えど、禁止している行為はほとんど同じです。
例えば、公共の場所や公共の乗物(具体的には電車内、駅構内、商業施設内などの建物内、路上など)での撮影行為が禁止されています。
また、東京都のように、公共の場所・公共の乗物でなくとも、住居、便所、浴場、更衣室なども禁止場所となっている自治体もあります。
カメラなど撮影機器を差し向けたり、室内に設置したりする行為も禁止対象とする自治体もあります。

[参考記事]
盗撮に関する東京都迷惑防止条例の改正で何が変わったのか?
ちなみに、人の住居、浴場、更衣場、便所などでのぞきをする行為には、軽犯罪法違反(1日以上30日未満の拘留または1,000円以上10,000円未満の科料)が適用されます。

[参考記事]
のぞきは何罪?刑罰は?
2.示談交渉の流れ
盗撮事件では、被害者との示談の成否が、事件の処分内容に関して非常に重要な意味を持ちます。
つまり、被害者と示談することによって、盗撮事件の刑事処罰が軽くなる可能性が高いということです。
そのため、被害者の間で示談が成立しているかどうかは非常に重要です。

[参考記事]
刑事事件における示談の意義、タイミング、費用などを解説
では、盗撮の示談交渉はどのような流れで進むのでしょうか。
(1) 弁護士に依頼する
「被害者と示談をするならば、直接謝罪をした方が誠意が伝わるのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
盗撮事件の加害者は、基本的に被害者と面識がありません。示談交渉を行うためには、捜査機関を通じ相手の連絡先を早期に確認する必要があります。
しかし、被害者の連絡先が加害者本人に開示されることは、被害者保護の観点から行われません。
ということは、加害者本人は被疑者と示談交渉ができないということになります。
被害者の連絡先は、加害者が刑事弁護を依頼した弁護士限りで(被害者が同意を示した場合のみ)開示されることが通常です。
したがって、盗撮事件において被害者と示談交渉を行うためには、弁護士に刑事弁護を依頼することが不可欠なのです。
(2) 弁護士が示談交渉を行う
検察官を通じて被害者の了解のもとに被害者の連絡先を得た弁護士は、被害者に連絡して示談交渉を行うことになります。
なお、被害者が未成年の場合は、被害者の両親が示談の相手方になります。
(3) 示談書を作成して検察官に提出
弁護士が被害者との示談をまとめる際には「示談書」を作成します。
示談成立の証拠として作成した示談書を検察官に提出すれば、検察官はこれを被疑者に有利な事情として考慮して、起訴するか否かの判断を下します。
盗撮事件を起こした加害者は、被害者に対して精神的苦痛に対する慰謝料等の損害賠償義務を負っていますが、この損害賠償を既に行ったということを示談書で証明し、これで支払は終了した、という条項を示談書の中に盛り込みます。
これを「清算条項」といいますが、これを記載することによって処分について有利な事情になるだけでなく、被害者から示談後に追加の損害賠償請求をされることが防げるのです。
また、示談書に「宥恕文言(宥恕(ゆうじょ)とは「許す」の意味で、「寛大な処分を求めます」「処罰は望みません」などの記載です)」を記載してもらうことができれば、被害者に盗撮事件について許してもらい、被疑者の刑事処罰を望まないとの意思表示を含む内容の合意が成立したことを示す意味もあります。
3.被害者に示談を拒否された場合
迷惑防止条例違反の盗撮のケースで、被疑者に前科・前歴などが特になければ、盗撮の被害者と示談ができた場合、通常は不起訴処分となります。
不起訴処分となれば、罰金・前科はつきません。
(もっとも、前科・前歴の有無や、盗撮の態様なども検察官の処分・裁判所の判決に影響を与えますので、一概に「示談すれば必ず不起訴になる」とは言えません。)
しかし、被害者に連絡先の開示をしてもらえなかったり、示談を拒否されてしまったりした場合はどうなるのでしょうか。
性犯罪の場合、このようなケースは多数あります。
迷惑行為防止条例違反の盗撮や痴漢の場合、示談不成立となる可能性は低いですが、仮に示談ができなかった場合には初犯であっても罰金刑になるのが通常です。
罰金刑の場合には「略式起訴」といって、正式裁判は開かれず、罰金を納付するだけで事件が終了となります。

[参考記事]
略式起訴・略式裁判で知っておくべきこと|不起訴との違い
しかし、罰金刑であっても前科はつきます。罰金だからといって甘く考えないことが大切です。
示談できない・示談が成立しない場合の対処法については、以下のコラムをご覧ください。

[参考記事]
示談できない、示談不成立、示談を拒否された場合の対処法を解説
4.示談金・慰謝料の相場
刑事事件における示談では「被害者に許してもらう」ということが大事になってきますが、弁護士が被疑者に代わって単に謝罪をすれば許してもらえるわけではありません。
被疑者は被害者に対し、損害賠償として精神的苦痛を与えたことによる慰謝料等を支払わなければなりません。
また、戦術の宥恕文言を被害者から引き出したいなら、被害者が納得する金額を支払う必要があるでしょう。
(1) 盗撮事件の示談金の相場
示談金額は一概には言えません。正確な金額はいくらかと聞かれれば「被害者が納得した金額」という言い方になります。
これまでの泉総合法律事務所の弁護士の経験では、盗撮事件は20万円~40万円で示談がまとまるケースが多いと感じています。
もちろん、被害者の被害感情が強かったり、犯行態様が悪質であったり、被害に遭ったことによって支出(引っ越しを余儀なくされるなど)したりといった事情があれば、慰謝料の金額も高額になる傾向にあります。
(2) 被害者が未成年の場合
盗撮事件では、被害者が高校生などの未成年の場合、弁護士は親権者である両親と示談交渉をすることになります。
両親としては「娘を盗撮するなんてけしからん」と怒りが激しいのが通常ですので、弁護士が懇切丁寧に示談を粘り強くお願いしても、示談に応じていただけないことが少なからずあります。
両親が示談に応じていただける場合でも、成年の被害女性の盗撮の示談よりも、示談金額が高くなる傾向があります。
【参考】被害者が未成年の場合でも、示談交渉はできますか?(よくある質問)
5.示談交渉なら泉総合法律事務所へ
ここまでお話してきたことは、盗撮事件の示談と慰謝料についての一般論です。個々のケースでは、それぞれのケースに合わせた適切な対応が必要になってきます。
泉総合法律事務所では、どの弁護士も、不起訴・より軽い刑事処分に向けて全力で取り組んでおり、示談や不起訴とした実績が多くあります。
示談交渉でお悩みの方、盗撮事件で逮捕されてしまったという方や、又はその家族の方々は、示談経験、刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所へご相談・ご依頼ください。

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