盗撮 [公開日]2018年2月15日[更新日]2021年1月14日

何故盗撮する?盗撮する人の心理・治療法について

「盗撮」は、犯罪行為の中でも特に常習性が高い類型として知られており、再犯率も非常に高くなっています。

もし盗撮行為をし、捜査機関によって刑事立件されてしまった場合には、ご自身に病的な盗撮癖がある可能性を認識したうえで、速やかに心療内科の医師の診察を受けることが大切です。

この記事では、盗撮犯の再犯率、心理、治療法などについて解説します。

1.盗撮について問題となる犯罪

盗撮を規制するのは、主に各都道府県が制定している「迷惑行為防止条例」です。

たとえば東京都迷惑防止条例(略称)5条1項2号では、以下のように広範に盗撮を禁止しています。

次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。

この規定に違反して盗撮行為をした場合、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処されます(同条例8条2項1項)。

また、盗撮をする目的で他人の家の敷地に侵入した場合には、上記に加えて刑法上の「住居侵入罪」(刑法130条)が成立し、「3年以下の懲役または10万円以下の罰金」に処されます。

[参考記事]

盗撮の定義とは?カメラを向けた、設置しただけ…どこからが犯罪か

2.盗撮犯の再犯率について

盗撮犯の再犯率については、平成27年(2015年)版の犯罪白書で特集されています。
(参考:「平成27年版 犯罪白書」(法務省))

性犯罪者の類型別再犯率を示したグラフによると、盗撮型の性犯罪者の再犯率は、先行する性犯罪についての裁判確定時点から5年間で、実に36.4%にのぼります。
このうち性犯罪の再犯に絞っても、再犯率は28.6%です。

他の性犯罪類型と比較しても、盗撮型の再犯率は、痴漢型と並んできわめて高いことが分かります。

さらに、性犯罪について受けた刑事処分の種類別に各類型の性犯罪者を細分化し、その後の再犯率を示したグラフによると、盗撮型の場合、出所受刑者の再犯率がもっとも高く、単純執行猶予者の再犯率は比較的低くなっていることが分かります。
(参考:平成27年版 犯罪白書 第6編第4章第4節2)

盗撮により実刑判決を受ける性犯罪者は、犯罪態様が悪質であったり、何度も性犯罪を繰り返していたりするなど、犯罪性向がかなり進んでいる場合が多いです。

このような性犯罪者は、後述する「窃視症」の疑いが強く、その影響で性犯罪を繰り返してしまう可能性が高いと考えられます。

3.盗撮する人の心理・動機

盗撮の動機は、他人の下着や身体が見たいという一時的な衝動から、常習性の高い深刻なものまでさまざまです。

盗撮の動機は、大まかに以下のパターンに分類されます。

(1) 性的な衝動

もっともわかりやすいのは、単純に他人の性的な姿態に興味がある、興奮するといった衝動に駆られて盗撮を行うパターンです。

このパターンは、盗撮にのめりこんでいる期間が比較的浅い性犯罪者によく見られます。

(2) スリルを味わいたい

盗撮の犯罪性向が進展すると、単純に性的な興味によって盗撮を行うばかりでなく、盗撮行為そのものから生じるスリルを味わうことに目的が転換する場合があります。

万引きなどの窃盗にも同じことが言えますが、犯罪行為から得られる結果ではなく、犯罪行為の過程に目的がすり替わってしまった場合、犯罪性向がかなり深刻な状態に至っていると認識すべきでしょう。

(3) 盗撮が習慣化・病理化してしまっている

さらに盗撮の犯罪性向が深刻化した場合、もはや何のためにしているのかわからないのに、習慣的に盗撮をしてしまうようになります。

この段階に至っては、後述する「窃視症」の疑いが強いため、速やかに心療内科の医師の診断を受けることをお勧めいたします。

4.盗撮を繰り返す「盗撮癖」は病気?

初めは魔が差す形で盗撮に手を染めてしまったとしても、盗撮行為にのめりこむに連れて、犯罪性向が病的と判断されるようになるケースがあります。

(1) 窃視症の疑い

盗撮に関して問題となる病気は、「窃視症(せっししょう)」と呼ばれる心の病です(「窃視障害(せっししょうがい)」とも呼ばれます)。

窃視症とは、自分が他人から観察されているとは思いもよらない人が衣服を脱ぐ・裸でいる・性行為をするなどの姿を見ることによって、病的な性的興奮を感じる状態をいいます。

窃視症の人は、観察対象と直接話したり、性的な接触を持ったりすることは基本的に求めない反面、隠れた場所からこっそり「覗く」という行為に興奮を覚えます。

普通の人であれば、心の中で覗き行為に対する関心を多少抱いていたとしても、実際にそれを行動に移すことはしません。

しかし、窃視症の人の場合、覗き行為に対する衝動が非常に強く、一種の依存症的な状態に陥っています。
そのため、性的な衝動を理性で抑え込むことができず、盗撮をはじめとする覗き行為に繰り返し及んでしまうのです。

(2) 窃視症の診断基準

以下の要件をいずれも満たす場合には、窃視症と診断されます。

①警戒していない人の裸、衣服を脱ぐ行為または性行為を見ることに関する、強烈な性的空想、衝動または行動が、少なくとも6か月以上反復していること
②性的衝動を実際に行動に移しているか、またはその性的衝動や空想のために、著しい苦痛または対人関係上の困難が生じていること

5.窃視症の治療方法

窃視症は病的な状態であるため、窃視症を原因として盗撮を繰り返していると思われる場合には、一刻も早く心療内科の医師の診断を受け、治療を行うことが大切です。

窃視症の治療法としては、主に以下のものが考えられます。

(1) 薬物療法

窃視症は、投薬による治療を行うことが一般的です。

窃視症の原因がストレスによる場合も多いため、抗うつ薬の一種である「SSRI」を服用して、ストレスを緩和することで性衝動を抑え込むことを試みます。

また、SSRIの服用の効果が現れず、窃視症が重度であると判断される場合には、男性ホルモンであるテストステロンの血中濃度を低下させて、性衝動を直接抑え込む薬が処方されるケースもあります(リュープロレリン、酢酸メドロキシプロゲステロンなど)。

効き目の強い薬ほど副作用も強いため、医師と相談しながら、どの薬を服用するか決定しましょう。

(2) カウンセリング

心理カウンセラー・心療内科医・精神科医などによるカウンセリングも、窃視症の治療法としては一般的に用いられています。

盗撮を繰り返してしまう自分の行動に悩んでいるということを、専門家に相談して意見を聞くだけでも、気分が楽になって症状が改善することがあります。

なお、カウンセリングを通じて精神療法による窃視症の完治を目指す場合、「認知行動療法」という方法が取られることがあります。

認知行動療法は、カウンセラーとの問答を通じて、窃視症患者の性に関する認知のゆがみを正していく治療法です。

窃視症患者は、たとえば短いスカートを履いている女性を見て「身体を見られたいと思っている」という間違った認知を抱いていることがあります。

このような間違った認知に対して、カウンセラーが間違いを諭したり、必要に応じて間違った行動に対するペナルティを設定したりして、認知のゆがみを矯正していきます。

薬物療法と並行して認知行動療法を行うことも有効ですので、詳しくは心療内科の医師に相談してみましょう。

6.盗撮で逮捕されてしまったら弁護士に相談を

盗撮癖を持っている方は、ご自身の病的な盗撮性向について、実際に事件を起こして逮捕されるまで気がつかないというケースが多々あります。

逮捕をきっかけにして、今後盗撮は一切しないと決意し、治療を通じて更生を目指すことは非常に大切です。

しかし、実際に逮捕された事件について重い刑事処分を受けてしまうと、社会復帰が遅くなり、その間に溜めたストレスを原因として、再び性犯罪に及んでしまうというケースが少なくありません。

もし盗撮で逮捕されてしまった場合には、その事件について重い刑事処分を回避するため、一刻も早く弁護士にご相談ください。

弁護士は、被害者との示談や反省文作成のサポートなどを通じて、依頼者に対して寛大な処分が行われるよう、弁護活動に尽力いたします。

その結果として、検察官や裁判官に反省その他の良い情状が伝われば、不起訴処分や執行猶予付き判決などが得られる可能性が高まるでしょう。

当事務所では、盗撮を繰り返してしまい、これから更生を目指したいという方を全力でサポートいたします。
盗撮で逮捕された場合には、すぐに刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所の弁護士までご相談ください。

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