盗撮 [公開日]2018年8月23日[更新日]2023年1月13日

盗撮で職場を解雇される?解雇されないために知っておくべきこと

盗撮は、軽犯罪法違反や各都道府県の迷惑防止条例違反、住居侵入罪となる可能性があります。

もし盗撮で逮捕された場合、起訴され有罪となるのではないかと不安に思うでしょう。
それと同時に「懲戒免職になってしまうかも」「解雇されて再就職もできなくなるのでは」とお考えになるのではないでしょうか。

このような心配をしている方は、一刻も早く刑事弁護経験豊富な弁護士に相談してください。

早期にご相談いただければ、会社に知られてしまうことを回避し、不利益も最小限にできる可能性があります。

本記事では、盗撮で会社を解雇されないために知っておくべきことを解説いたします。
なお、盗撮について詳しくは、こちらのページをご覧ください。→盗撮とは

1.会社に盗撮が発覚する可能性

まず、警察・検察は、勤務先に無関係な事件を勤務先に連絡しません。

職場の女子更衣室などに侵入してカメラを設置したり、盗撮した画像を職場のパソコンに保存してあったりといった、犯罪の証拠が職場に存在する場合はともかく、そうでない場合は犯罪を捜査するために職場に連絡する意味がないからです。

しかし、逮捕・勾留されたことにより長期にわたり無断で欠勤すると、心配になった勤務先が警察や家族に連絡をすることがあります。その結果、勤務先に事情が知れてしまうこともあり得るでしょう。

勤務先から連絡がなくとも1~2日以上の欠勤になれば出勤時に欠勤の理由を聞かれて発覚することもあります。

また、被疑者の勤務先が公務員や有名企業である事案では、マスコミにとって話題性があると判断された場合、警察の発表した情報や取材を元にテレビやネットニュースなどで盗撮の事実が会社に知られてしまうことがあります。

残念ですが、こうして勤務先に犯行や逮捕の事実が知られてしまうことは少なからずあります。

2.盗撮で解雇されるケース

上記のような理由で職場に盗撮がバレてしまった場合、解雇まで発展するかは、勤務先の就業規則の規定内容如何の他「前科がついたかどうか」が大きな分岐点になります。

具体的には、「起訴されて前科がついたか」「示談等で不起訴に終わり、前科がつかなかったか」が重要なポイントです。

(1) 民間企業の場合

懲戒解雇を含めて、およそ懲戒処分は企業の秩序維持を目的とするので、会社の金を横領するなどして会社に損害を与えた場合は格別として、業務と無関係な私生活上の非行行為は、たとえ起訴されて前科がついても、懲戒解雇を行うことはできないことが原則です。

ところが、一般の民間企業では、就業規則で「会社の名誉、体面、信用を毀損したとき」「不名誉な行為をして会社の体面を汚したとき」「企業秩序を著しく乱したとき」を懲戒解雇事由と定めていることがほとんどであり、私生活上の犯罪行為はこれらに該当するとして、懲戒解雇を通告されるケースが多いのです(この場合、退職金の一部又は全部の不支給も伴うことが通常です)。

しかし、いち従業員に過ぎない者の私生活上の非行は、その者を排除しなくてはならないほどに企業の利益を害したとまでは言えないことが通常です。

そこで最高裁判所の判例でも、

「不名誉な行為が会社の体面を著しく汚した」と言うためには、その行為が会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならない(※最判昭和49年3月15日

として、私生活上の非行行為で懲戒解雇できる場合は、非常に厳しく限定されているのです。

ましてや、示談が成立するなどして起訴もされなかった場合や、報道されることもなく事件そのものの存在を知る人がごく限られるような場合にはなおさら企業の利益が害されたとは言えません。

したがって、会社が懲戒解雇をしたとしても、それは無効な解雇と評価できる可能性が大いにあるでしょう。

もっとも、ひとたび解雇されてしまうと、労働者が懲戒解雇処分は無効であるとして会社と争うのは非常に大変です。このような場合には労働問題に強い弁護士に相談してみて下さい。

ですから、たとえ法的に無効な解雇であろうとも、会社から解雇通告されないようにすること自体が大切です。

そのためには、起訴されて有罪判決を受けることは避けなくてはならず、早めに刑事弁護経験豊富な弁護士に相談して弁護を依頼し、不起訴を勝ち取って解雇されるのを未然に防止するべきです。

(2) 公務員の場合

公務員の場合は、民間企業とは事情が異なります。

①国家公務員の場合

まず、盗撮行為で起訴され有罪判決が出され、禁錮以上の刑罰が確定した場合は、たとえ執行猶予がついたときでも国家公務員法(38条)が定める欠格事由に該当することになり、当然に失職します(同76条)。

また、盗撮行為が発覚し、不起訴に終わった場合や罰金刑で済んだ場合でも、失職はしませんが、停職または減給の懲戒処分を受けます(人事院「懲戒処分の指針」による)。

②地方公務員の場合

地方公務員も国家公務員と同様に、禁錮以上の刑に処せられると、執行猶予刑であっても地方公務員法(16条)が定める欠格事由に該当することになり、当然に失職します(同28条)。
また、盗撮行為が発覚し、不起訴に終わった場合や罰金刑で済んだ場合でも、懲戒処分の対象となります(同29条)。

処分の具体的な内容は各自治体が定めることになります。たとえば東京都では、盗撮行為は免職または停職とされています(東京都「懲戒処分の指針」による)。

このように、公務員の場合は、民間企業よりも厳しい対応が予定されていると言えます。

公務員の信用失墜行為は、公務に対する国民の信頼を失わせ、その円滑な遂行を阻害するからです。

ここでしっかり押さえてほしいのは、民間企業と異なり、公務員の場合は「刑に処せられたこと」が法的にも重要な分岐点となっているということです。

前述のとおり、民間企業の場合は、有罪判決が確定したか否かは解雇の有効無効を直接に左右する要素ではありません。不起訴の場合よりも、起訴されて有罪となった場合のほうが、解雇通告をされてしまう事実上の危険が大きいに過ぎません。しかし、公務員の場合は、有罪判決の確定は直ちに失職を意味します。

公務員の場合は、職場を失いたくない、今の職場で働きたいと考えるならば、「刑に処せられること」つまり「前科がつくこと」はなんとしても避けねばなりません。

3.盗撮で解雇されないためにやるべきこと

では、盗撮で解雇されるリスクを減らす、つまり前科を免れるためには被疑者は何をするべきなのでしょうか。

(1) 呼び出しには誠実に応じ、逮捕・勾留を避ける

逮捕後の勾留を含む身体拘束は最大23日間です。これだけ長期の欠勤で会社に盗撮の事実を隠すことは困難です。

長期の勾留を避けるため、住居、家族、勤務先を警察に明らかにするなどして、逃亡や証拠隠滅のおそれがないと判断してもらい、逮捕・勾留を避けたり、早期に釈放したりしてもらう必要があります。

また、弁護士と共に自首・出頭することも一つの手段です。
弁護士が事前に警察にコンタクトをとり、日時などを調整し、被疑者の身元などを明らかにする資料を揃えるなどしたうえで、被疑者と同伴することで、逃亡や証拠隠滅のおそれはないと認定され、逮捕を回避できる見込みが高まると考えられます。

しかし、逮捕・勾留を免れても、その後警察や検察からの呼び出しに応じなかったり、仕事の都合などを言い訳にして出頭日を伸ばしてもらうことが重なったりなどすると、捜査に非協力的と判断されて逮捕されてしまう可能性もあります。

したがって、素直に罪を認めるのであれば、その後の呼び出しにも誠実に応じなくてはなりません。

(2) 早期に示談を成立させる

盗撮が事実であるなら、被害者との示談を早く成立させることが、刑事事件において被疑者のなすべき最も大切で重要な行為です。

[参考記事]

刑事事件の示談の意義・効果、流れ、タイミング、費用などを解説

盗撮事件では、早期に示談が成立すれば、その後逮捕される可能性はほとんどありません。身体拘束が伴わないので、勤務先に発覚する可能性もなくなるでしょう。

また、仮に勤務先に事件が発覚しても、不起訴となれば懲戒される可能性は低くなります。
被害者との示談が成立している場合、盗撮のケースでは不起訴処分としてもらえる可能性が高いです。

もっとも、盗撮行為の示談をするには、弁護士の力が必要不可欠です。

示談をしようと考えても、面識のない被害者の連絡先を当然警察は被害者のプライバシー保護から教えてくれません。
仮に被害者の住所や氏名を知っていても、被疑者本人が連絡をすると被害者は拒否をするものです。「ストーカーされている」「脅迫されている」として更なる問題に発展してしまう可能性もあるでしょう。

しかし、弁護士が警察や検察に被害者の連絡先の開示をお願いをすることで、被疑者本人には絶対に教えないことを条件に、被害者の了解を得たうえで、弁護士にだけ被害者の連絡先を教えてくれます。

連絡さえつけば、弁護士はただちに示談交渉にとりかかることができます。
交渉さえスタートすれば、盗撮事件は示談が成功する確率が比較的高い事件と言えます。

[参考記事]

迷惑防止条例違反の盗撮事件における示談方法と示談金の相場

4.まとめ

つい魔が差したとはいえ、盗撮行為は犯罪です。しっかりと反省を行うべきでしょう。

しかし、心から後悔・反省している方が、職場を解雇されて仕事を失い、これまで積み重ねてきた努力を無にしてしまうことは望ましくないでしょう。
ご家族やご自身の将来のためにも、キャリアは確保しなくてはなりません。

盗撮行為を犯してしまい、大いに後悔・反省している、将来を不安に思っているという方は、諦めずに刑事弁護経験豊富な泉総合法律事務所に相談することをご検討ください。

刑事事件コラム一覧に戻る